表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/665

第百五話

 体育祭も終わり、秋の気配も深まってきた日曜日。俺は朝からバスに乗っている。目的地は小江戸川越。そこそこ有名な観光地だ。


 家族には大宮のダンジョンに行くと嘘をついている。地元のダンジョンに行かない理由は新たな武器の下見をしたいからだと言っておいた。


 駅前が始発で利用客も多くないバスは余裕で座る事が出来た。街路樹が色づく道を順調にバスは進んでいった。


 片側二車線だった道が狭くなり、市の境を流れる川にかかる橋を渡る。前世では陸軍飛行学校があった場所だが、この世界には戦闘機は存在しない。


 人類が戦う相手がモンスターである以上、銃砲が効かないので役に立たないのだ。輸送機や旅客機は日本では運用されている。


 しかし、日本以外では火鷹や夫婦鶏などの飛行モンスターにより落とされる為使用されていない。国内のモンスターを駆逐でき、領海を海軍が厳重に監視し飛行モンスターの侵入を阻止しているから運用できるのだ。


 川を渡り、田園風景の中を走ったバスは川越の市街に到着する。俺は終点の川越駅まで乗らずに途中の本川越駅で下車した。


 よく観光地として紹介される場所に行くには、国鉄の川越駅より西武鉄道の本川越駅の方が近いのだ。(この世界では国鉄は民営化していません)


 観光地と逆の西口に降り、南西に向かう。人通りのない細い路地を見つけ、監視カメラの類が無い事を確認した。


 監視カメラも無く誰の目もない事を何度も確認して俺は女性体と妖体化を起動した。同時に一瞬だけ迷い家を発動し持っていたリュックを放り込む。


「さて、気は進まぬが行かねばのぅ」


 フサフサの尻尾を揺らし、狐巫女となった俺は駅へと戻る。当然、その姿は居合わせた人の目に留まり周囲はざわめいていく。


「おい、あれ・・・」


「ああ、前に話題になった狐巫女さんだよな?」


 皆が俺に注目し、スマホを向けられ動画に撮られている。今日態々と地元を離れて玉藻になった目的はそれである。


 別に自己顕示欲を満たしたいという訳では無い。獣人でも普段は人と同じ生活をしている。なので当然の事ながらダンジョン以外でも目撃されている。


 しかし、玉藻はダンジョンでの目撃例しかない。それは不自然な事であり、どんな憶測を生むのか予測できず不測の事態を生むかもしれない。


 なので今日、川越の街で姿を見せる事により玉藻はこの姿で生活しているとアピールする。そうすれば俺と結び付けられる可能性は格段に減るという訳だ。


「すいません、この前話題になった狐獣人の方ですか?」


「話題になったかどうかは知らぬが、妾以外に狐獣人は見たことも聞いた事も無いのぅ」


 近くの女子校のロゴが入ったジャージを着る女子高生に話しかけられた。日曜日だけど部活動で登校してきたのだろうか。


「もし良かったらですけど、一緒に写真を撮ってもらえませんか?」


「妾は芸能人でも有名人でも無いが良いのか?それでも良いなら写真くらい構わぬが」


「本当ですか!是非お願いします!」


 と、軽い気持ちで写真撮影に応じたのが間違いだった。周囲に居た人が次々と写真撮影をせがんできた為時間を食ってしまった。


「では、妾はそろそろ行くでな」


 希望者と一通り撮影し終えたタイミングで人の輪から抜け出し、間髪入れずに走り去る。次からは写真は断るようにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 非実在の可能性があった玉藻が実在確定したか [一言] 時代設定の背景感服しました
[一言] 玉藻の姿で外を歩くのは良い解決策ではないような? 組織的な調査が行われれば玉藻が実際には川越周辺には住んでいないことは分かってしまいますし 早いとこ軍とのコネを作り上げて、軍に情報隠蔽しても…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ