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第百ニ話

 俺達を含めた仮装競争出走者が仮装したまま応援席に戻った事で、一年生と二年生の応援席にはカオスな光景が生み出されていた。


初めに走った警官と泥棒はまだ可愛い方で、落ち武者と忍者や新郎新婦と新婦を奪いに来た男、十二単衣とその裾持ちなど、京大の卒業式か?と言いたくなる。


 しかし、式の最中に「俺と逃げてくれ!」と花嫁を奪って逃げる男と阻止しようとする新郎なんて中学生のイベントで演って良いのか?


 十二単衣の方も、着て走ったのはゴリゴリの厳つい男子だぞ。十二単衣は重いから女子では走れなかった可能性はあるが、誰か止めなかったのか?


 200メートルハードル走が終わり、信玄餅食い競争が始まった。これは前世であった飴食い競争の飴が信玄餅になった物だ。


 他にもパン食い競争は萩の月食い競争になっている。歴史変動の影響だと思うが、何がどう影響したらこうなるのだろう。


 幾つか突っ込みたいポイントはあったものの、事故もなく午前中の競技は終了した。生徒達は持参したお弁当を広げて食べ始める。


「滝本君のお弁当、大きいね。いつもそんなに食べるの?」


「違うよ。今日はクラスメートと食べなさいって多めに作ってくれたんだ。味見する?」


 レイさんに答えてお弁当を差し出す。大きめの箱には美味しそうなおかずがタップリと入っている。肉類は俺が取ってきたダンジョン産なのは言うまでもない。


「いいの?じゃあ遠慮なく・・・美味しい!何この唐揚げの美味しさは!」


「えっ、そんなに美味しいの?滝本君、私も貰って良いかな?」


「ああ、勿論。チサさんも食べてみて」


 レイさんと逆の隣に座っていたチサさんにもお弁当箱を差し出す。母さん特製夫婦鶏の唐揚げの味、とくと堪能してほしい。


「ありがとう、いただきます・・・って、美味しい!」


 二人共母さんの味を気に入ってくれたようで、嬉しい。俺も唐揚げを摘んで口に放り込む。冷たくなってしまっているが、それでも次が欲しくなる美味しさだ。


「これ、揚げ方も凄いけどお肉も特別じゃない?」


「おっ、分かってくれる!これは夫婦鶏を揚げた物なんだ」


 違いがわかるレイさんに喜々として答えるとレイさんとチサさん、それに聞こえていたらしい周囲の人の声が止まった。


「えっ、夫婦鶏って十九階層のモンスターよね?」


「超高級食材・・・本当に食べて良かったの?」


 鶏肉の正体を知って恐縮するレイさんとチサさん。俺から勧めたのだから良いに決まっているのだが。


「買った訳じゃなく自分で取ってきた食材だから気にしないで。原価はタダだから」


「そうは言っても、売ったら結構な値段になる代物よ?」


 チサさんの反論に、レイさんと周囲の生徒も同感だと言わんばかりに首を縦に振っている。


「俺はソロだからね。パーティーメンバーの人数で割らなくて良いから独り占め出来るんだよ」


「普通はソロで十九階層まて行ってレアドロップを集める狩りは出来ないからね?」


 オークや突撃牛には攻撃力重視の武器が、火鷹やコボルドには手数重視の武器が必要になる。だからパーティーを組むのだが、武器を負荷なく複数持ち込める俺だけの特権だ。


「神様から貰ったスキルの恩恵だよ。戦闘系スキルじゃないけど、スキルは使いようだからね」


 その後もオークの一口カツやオーク肉と突撃牛のハンバーグに驚かれつつお弁当を完食した。レイさんとチサさんは羨望の目で見られていたから、後で吊し上げを食らうかもしれないな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 信玄餅ってわらび餅みたいなのにきな粉塗して黒蜜かけて食べるやつだよね? 食べ物競争できるの? 違ってたらごめん
[一言] 優君は本心から「神様から貰った」と言ったのでしょうけれど、他のクラスメイトは多分冗談とか詩的表現と思ってるでしょうね
[良い点] あっ、なるほど。 考えてみたら、彼女達は戦闘スキル持ちでクラスカーストトップですもんね。食事の時に滝本くんと話せてお裾分けを貰えるのは彼女達だけの特権って事か。 こういう序列がはっきりして…
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