58話
翌日、テスト範囲が発表された。
勉強会の場所をどこにするかということで、英人が勉強会をすることを社長に話したところ、うちでやったらどうかということで、社長と英人が暮らす家に行くことになった。
「なかなかに大きいんだな」
千蔭はマンションを見上げる。
オートロック付きの10階建てのマンション。
英人はオートロックを開け、エレベーターに向かう。
エレベーターに入ると、最上階に上がっていく。
「最上階って、本当にお金持ちなんだね」
「まあ、あの人腐っても社長だからね」
鍵を開けて、ドアを開く。
「中も広いですね」
「2人じゃ、余計に広いんだよ。シオン恋人の影も見えないんだよな」
「まあ、それより大事な奴がいるからな」
「過保護すぎるんだよ、シオンは」
全員かばんを置いて、席につく。
ダイニングに2,3年生。
リビングに1年生が床に直接座っている。
「エルー。ここはこの英単語だよ」
「なるほど。ありがとう、グリ」
1年生はまだほのぼのした空気が流れている。
「まあ、まだ1年生のうちはちゃんと勉強していれば、理解はできるよな。範囲はそれほど広くないし」
「もう俺数学が分からないんだよ。英人は頭いいよな」
「…まあ、予習はしていたからね」
千蔭が文句を言いながらも、英人が教えながらひたすら解いていく。
「だから、この問題はこれだと言っているでしょう!何でこうなるんですか!」
「うっせぇ!分からねえんだから、仕方ねえだろ!」
「ちょっとは覚える努力してくださいよ!歴史は暗記科目なんですから!」
3年組は早くも喧嘩腰になっている。
「私の学力まで持っていくのにどれだけかかるのやら」
はあ、とため息をつく。
「ひとまず赤点取らなければ、今回はいいのかもしれないですけど」
「ハルちゃん先輩って大学目指しているんだよね」
「まあ、ある程度学力高めのところだと芸能人として箔がつきますし」
「治喜先輩って、頭良いのに芸能人だけを目指しているんですね」
「正確にはモデルとしての仕事ですね。これからはアイドルとしても頑張りますが、モデルとしての仕事が私にとっては大事ですから。だから、大学はともかくとして、成績が落ちて、モデルの仕事ができなくなることは避けたいんですよ」
「まあ、それは分かるけどよ」
「アキ先輩は今まで補講でダンスできなかったことある?」
「…ある。仕事じゃなくて、コンテスト。中学のとき」
「その悔しさ自分のものじゃないのに、ハル先輩に負わしちゃダメでしょ」
「ああ」
「エイトちゃん。ボクがチカゲちゃんの面倒みるから、エイトちゃんはアキちゃん先輩手伝ってあげて」
「いや、さすがに1年生のお前が…」
「俳優の仕事無くなってから、勉強にのめり込んで、1年生分やりきっちゃった…」
「悪かった…」
千蔭は1年生のいるリビングに移動した。




