45話
うずくまる千蔭に英人が近寄ってくる。
「…大丈夫か?」
「ああ…」
千蔭は英人の手を取り、立ち上がる。
「悪い。その見ていたんだけど…」
「いいって。あんな修羅場に入りこめないだろ」
どこかあきらめたような顔になる。
2人は自動販売機に行き、それぞれ飲み物を買った。
壁にもたれかかり、たそがれている。
「年月って、人を変えるんだな」
「そんな極端に変わる人ばかりじゃ、ないと思うけど」
「入れ替わったばかりの頃は、確かに自分じゃなくなってショックは受けたけど、自分の体に価値があるなんて、考えたことなかったけどなあ」
「そんなこと考えないよ、なかなか」
ごくごく飲み干す。
「2人でアイドルになるって、約束したんだ」
「そんな仲良かったんだな」
「入れ替わった後もそのままにしていても大丈夫だと、信用していたからな」
昔のことを思い出して、控えめに笑う。
「俺、今の人気アイドルの体になっても、振る舞えないと思う。でも、今の俺が天野千蔭だとも思えない。どうしたらいいか分からない」
千蔭と英人は共有スペースに戻る。
「おかえり」
「ずいぶん時間かかりましたね」
共有スペースには、治喜と空高がいた。
「エルとグリは?」
「外に食いもの買いに行った」
「あの2人は、今日は出ませんからね」
「お気楽だなあ」
「リハーサルには戻ってくると言ってましたよ」
治喜と空高は、座りながら手だけのフリをしていた。
「…千蔭も戻ってきたし、3人で合わせようぜ」
「あまり広がらないなら、みなさんもやっていますしね」
治喜の言う通り、リハーサルがまだのグループはフリを合わせていた。
「というか、他の人がいるんだから、それぞれの真似くらいしてくださいよ」
「自分たちの練習に夢中で他の会話なんて聞いてませんよ」
そうして、英人に見守られ、練習を始める。
最初から、入れ替わった体で練習をしていたので、自分の体との違いを思い知った。
また元に戻ったら、不都合だろうが、そんなこと知ったことでない、と徹底的に叩き込んだ。
「いい感じだな。今日のパフォーマンスも大丈夫そうだな」
「まあ、油断はできないけどな」
治喜と空高は、顔を見合わせる。
千蔭の笑顔に陰りを感じた。
「どうした?」
「いや…」
「何でもないです…」
「そう?じゃ、またやろうぜ。先輩たち、ちょっとまだ緊張しているみたいだし。前回の失敗気にしているのか知らないけどさ」
確かに、千蔭の言われた通りだった。
でも、それ以上に千蔭が落ち込んでいることが気になっていた。




