40話
「そもそも何で先輩たちは入れ替わったんだ?」
聖夜が問いかける。
「小5の終わりに、土手を転がったんだよ。そのとき、千蔭が引っ越す話を聞いて泣いていたから、視界もぼやけてたし、泣き疲れたのもあったんだと思う」
「それからずっと戻ってないってこと?」
「一応やれるだけのことはやったからな。何度も土手を転がり落ちたし、春休みを使って図書館も通い詰めた。でも、間に合わなくて、千蔭の体になった俺は引っ越すことになったってこと」
話しっぱなしで疲れたのか、背をうんと伸ばした。
「だから、デビューしたのは今前島光になっている千蔭だから。俺には関係ないの。俺の話は終わりにして、練習しよう」
夜の中走る車の中。
運転席に男性一人、助手席にはいない。
二列目と三列目にそれぞれ高校生ほどの年齢の男子が2人ずつ座っていた。
「そういえば、みんなはもう見た?」
三列目の左側でスマホをいじる男子が声をかける。
「何ですか、灯さん?」
二列目の左側の男子が後ろを振り返った。
「ネクストプロダクションで新しいアイドルグループできたんだって」
「ネクストプロダクションって、nanaさんのところか」
灯の隣の男子が問う。
「火皇っちはnanaが本当に好きだなあ。そうだよ、ほら」
運転席にいる男性以外の視線が集まる。
日曜日に行われた千蔭たちのライブ映像。
「へえ、nanaのカバー…」
「そっちに注目すんなって」
「この2人って、モデルのhalさんとダンサーのakiさんですよね。2人もアイドルになるんですね」
「ねえ、びっくりだよね、照っち。この2人の仲の悪さ有名なのにやっていけるのかな?」
「この真ん中の黒い人は?僕は見たことがないのだが」
「俺もないよ。新人かな。2人のお守り大変そう」
心配な言葉を出すものの、顔のにやけは隠しきれず、口角が上がっている。
「そういや、このグループも今度のフェスに出るらしいぞ」
運転席の男性が後ろのEternalに声をかける。
「さすがうちから独立した事務所情報早ーい。まだ、ネットに流れてないのに」
「さっきから光っちは静かだけど、どうかしたの?」
「え、光さん、もしかして具合悪いんですか?すいません、気づかなくて」
話の輪に入らず、スマホを見続けていた光は視線を顔に移す。
そして、切り替えて、満面に笑みを浮かべた。
「僕は大丈夫!今度その新しい子たちに会えるの楽しみだね!」
「その様子だと心配なさそうだな」
それから、また話を続けるが、光は窓に顔を向けた。
「まだ、未練あるのかよ、光の奴」
そう小声でつぶやいた言葉は誰にも聞かれなかった。




