37話
「何で増えてんだよ」
事務所の社長室に聖夜と群里を連れてきたときの第一声がそれだった。
「千蔭がとんとん拍子にうちに入ることに決まったのは聞いたけど…」
「社長。別に2人はグループに入りたい訳ではないよ」
「あ、そうなの?」
「北見聖夜。役者志望で~す」
何ためらいもなく、自分ではない名前を名乗る群里に驚いて、二度見する。
「えっと、…南浦群里です」
「あの子役の!?」
「…は、はい。そうだよ~」
「北見。社長は知らないから、無理しないでも。南浦は隠すつもりなさそうだし」
「そうでもない。社長は子役のときの南浦に会ったことあるんだ」
「そうなんだ。覚えてないや」
社長に聞こえないように小声でこそこそと話す。
「…俺、ボクは事務所内でバイトできたらなと思って」
「あ、無理しないで。大人になれば、性格も変わるだろうし」
「は、はい」
「でも、南浦くん勿体ないな。また、芸能活動するつもりはないの?」
「えっと…」
聖夜自身は、芸能活動をしたことはないので、戸惑っていた。
「やっぱり、この2人も君たちのアイドルグループに入れよう。3人より5人の方が見映えよさそうだし」
「「え…」」
いきなり、そんなこと言われたので、あっけにとられていた。
「違うタイプのルックスだし、いけるいける」
「まあ、アイドルから役者業もできるし。いいかもね」
「できるかは分かりませんが。稼ぐことができるなら、頑張ってみようかと」
本人たちもやる気はあるようだった。
「…マジでころころ変わるな」
「地蔵堂さんがアイドルやれるなら、どんなことも見逃さないんでしょうね」
「治喜さんや空高さんはいいの?」
「社長が言うなら、止められませんよ」
「一人よりは、たくさんの人で踊るほうが楽しいだろうし」
この2人も人が増えることには否定的ではない。
「それにちょうどよさそうだしな」
「何がですか?あんたはいつも気まぐれで人を振り回すんだから」
「こっちの話だよ、英人」
語尾にハートマークがついていそうな、笑顔で声をかける。
「そういう君たちにお仕事です」
机から資料を取り出す。
「今回は5人体制じゃなくて、3人でやってもらうんだけど」
「これって、二週間後のアイドルフェスで…っすか」
「そうそう。欠員が出たから、君たちにどうかって。北見くんと南浦くんは未経験だから、様子見ってことで」
「君たちじゃなくて、いい加減グループ名考えてやんなよ。フェス出るなら、ないと面倒だろうし」
「君たちにぴったりなの考えているから、待っていてよ」
手をカメラの形にし、6人を収めていた。




