36話
「ていうか、北見くんの聖夜って名前いいよね!エルって、呼んでもいい?ボクが芸能活動するときの愛称にしていい?」
「あだ名で呼ぶのは構わないが、芸能活動?」
聖夜が首をかしげる。
「そういえば、南浦群里の名前って聞いたことあると思いましたが、有名子役のグリですか。こっちの見た目は面影ありませんね」
治喜は群里の見た目の聖夜に視線を移す。
「もうデカいだけのその図体からはおさらばだ!またかわいいボクに生まれ変わったんだから!」
パチンとウィンクを決める。
その様は、かわいい聖夜の顔とマッチしていた。
「もしかして、北見の体で芸能活動する気か?」
英人は、あり得ないとつぶやく。
「だって、ボクが望んでいたかわいい体になれたんだもん!それに、エルの可愛さを世間に伝えないなんて、大損だよ!?」
「自分の顔体をそう何回も可愛いと連呼されたら、むずがゆいものがあるのだが」
聖夜は照れくさそうに、頬をかく。
「その、俺も何かバイトさせてもらいたいのだが、構わないか?」
「いいよ。うちの親、放任主義だから、特に何も言われないと思うし」
「…グリも。俺、聖夜の心ではないとはいえ、グリの熱量で自分の本当にやりたいことなら、許されるかもしれないな」
当人同士で、どんどん話が進んでいく。
今回のように、入れ替わりの現場に何人も、部外者がいることの方がイレギュラーかもしれないが。
治喜と空高は自分たちとは違うスムーズさに唖然としていた。
「…お前ら、それでいいのかよ?自分じゃなくなるって、けっこう大変なことだぞ」
「まあ、すぐに元に戻れるって訳じゃないし。今、楽しんだ方がお得かなって。東川先輩と西山先輩、あと天野先輩。地蔵堂先輩は違うのかな。入れ替わっているんだよね」
「…やはり、気づきましたか」
「俺も分かったのかよ」
千蔭は、まさか自分の入れ替わりも気づかれるとは思ってなかった。
「話聞いていたら、分かりますよー。東川先輩と西山先輩は口調隠そうとしてないし」
「3人も入れ替わっていたのか。だから、俺たちのことも助けようとしてくれていたのか」
千蔭は聖夜の言葉に素直にうなずけなかった。
当人たちは、そんなのものともしないから。
「地蔵堂先輩と天野先輩が入れ替わっているのかなと思ったけど…」
「英人は関係ねえよ。俺の相手は、この高校にいねえし、数年も会ってねえから」
「じゃあ、入れ替わりは年単位を覚悟しないといけないってことだよね」
「…そうだけど」
千蔭は顔を引きつらせる。
「現実をつきつけんじゃねえよ」
空高と治喜は群里の言葉に落ち込んでしまった。




