35話
このまま、階段にいると他の人に迷惑がかかるので、空き教室に入る。
「北見聖夜くんの中にいるボク!南浦群里、愛称はグリだよ~」
「南浦群里くんの中にいるのは、北見聖夜だ」
改めて千蔭に事情の説明と、初めて会う英人に自己紹介をする。
「入れ替わりなんてこんな何度もあるもの…?」
「あってたまるか。あったら、この世界どれだけファンタジーだって話になる」
英人はげんなりし、千蔭は頭を抱える。
「何度もって、俺たち以外にもいるのか?」
「…まだ何も言ってない?」
「ひとまず専門家の千蔭呼ぶかって」
「専門家じゃないっす。専門家だったら、元に戻る方法とっくに分かっているはずだし」
「そもそも何でこんなことになったの?」
「た・ま・た・ま、西山さんと階段で一緒に降りていたら、ドタドタっと何かが落ちる音が聞こえてきまして」
「そんなに強調しなくても、ただの偶然ってのは分かるから」
「気になって戻ったら、この2人が倒れているのを見つけたんです」
「ただ落ちたんだろうなと思ったんだが、どうにも既視感あって。あれって、千蔭が俺たちが転げ落ちたときにも感じたことなんだろうな」
空高は遠い目をしている。
「私たちが来て、すぐに目が覚めたのですが、自分が目の前にいるだの、自分の体が違うだの。はい、予想通り入れ替わってましたとなったので、呼ばせていただきました。北見さんのこと、天野さんも知っていますしね。まさか、南浦さんも知っているとは思いませんでしたが」
「俺も今日会ったばかりの2人が入れ替わるなんて、想像してねえよ」
はあ、と大きなため息をついた。
「そういや、チカに聞いたけど、北見と南浦って、同じ1年生なんだよな。知り合い?」
「いや、違うクラスなので、話したのは今回が初めてだ。1年生ながら、背が高い人がいるのは知ってはいたんだが」
「かわいい子がいるって聞いて、仲良くなりたいなとは思ってたんだよね。それがボクの体になるとは思わなかったけど」
群里はその体らしく、可愛く目をキラキラ輝かせている。
「お前ら慌ててねえの?」
治喜と空高は天敵といっても過言ではないこともあり、入れ替わったばかりは元に戻ろうとやっきになっていた。
今もまだアイドルとしての仕事はあまりないので、空いている時間は資料探しに専念している。
「家族とか友人のこともあるし、慌てていない訳はないのだが…」
体が変わろうとも、聖夜は表情があまり出にくいようだ。
「でも、ボクも北見くんも望んでいた体になれたから、嬉しさの方が勝っている感じかな。北見くんは大きくなりたかったんだよね?」
こくんと、静かにうなずいた。




