18話
そうして、2人の出番まで間もなくとなっていた。
「っくそ!」
空高が近くの木に拳を叩きつける。
「…ここまでですか」
治喜は落ち込んで、目線を下げた。
この意気消沈の様のように、満足いくできにはならなかった。
「…なあ、今日って、中止にはできないのか?」
今までの練習を見てきて、慣れない体の割にはそれなりの出来にはなったと思う。
でも、ステージに出るにはまだ一歩及ばない。
何より、そのことが本人たちがよく分かっていた。
その悔しさがよく現れていた。
「最後に重大な発表があるって、告知しているんだ。今そのことに対して、期待が高まっているから、難しいと思う。それに、うちの稼ぎ頭のハル先輩とアキ先輩が出てないから、アイドルとまではいかないけど、彼らのことじゃないかって、SNSではもう予想されているんだ」
英人も顔をしかめる。
入れ替わる前から、彼らの練習を英人は見守ってきた。
どんどん上達していき、いきなり2人でやることを発表しなくちゃいけない不安はあったものの、成功するんじゃないかと期待していた。
入れ替わりなんて、予想もできない事態が起こるなんて。
前から信じてもいなかったが、神様なんていないと思った。
「ごめんなさい、西山さん。あなたのダンサーとしての名声を落としてしまって」
「俺こそ。東川だって努力してきたのに、こんなものかと思われちまう」
それでも時間はやってくる。
今回は凝った衣装ではなく、出演者スタッフ観客統一のライブティーシャツに着替えた。
汗かいたままではいかないので、シャワーを浴びる。
ステージ近くのテントに向かった。
「みなさん、ここまでお付き合いありがとうございます」
司会の声が聞こえる。
「さて、皆様お待たせの重大なお知らせです」
ステージが暗くなる。
治喜と空高はステージに上がる。
「我がネクストプロダクションは、nanaという伝説のアイドルを輩出して以来、男性アイドルは所属していませんでした。しかし、今日から伝説は塗り替えられます」
司会のやけにハードルの高い文句に、千蔭たちの不安は高まる。
観客たちも、ざわめき始めた。
「本日初お披露目です!お願いします。halとakiです!」
治喜と空高が背中合わせで決めポーズをしている。
治喜の姿の空高は、ハットを被っていた。
観客の声援は、最高潮に盛り上がっていた。
治喜も空高もネクストプロダクション所属のはずなのに、プログラムに名前が載っていないので、残念がっていた。
来ない選択肢もあったのに、もしかしたらと期待してやってきた。
その期待以上のことが起こったのだ。




