15話
「よっと」
幼い光は、両手を地面に一瞬つけ、後ろに跳ねて、くるっと1回転した。
「すごい、光くん!バク転できるんだね!」
パチパチと感嘆の拍手を贈り、千蔭はあこがれから目をキラキラと輝かせていた。
小学生な彼らのいつもの帰り道の土手。
下方には、草むらが広がっている。
放課後や休みの日には、ここで遊ぶのが日課だった。
普段はインドア派な千蔭に合わせて、光も好きなゲームをすることが多いのだが、光はアウトドア派で外で遊びたい盛りなので、天気がいい日には、千蔭を外に引っ張っていく。
「アイドルやるなら、これくらいできた方がいいじゃん」
「光くんって、イヤイヤながらも、アイドルに必要な技術の収集は早いよね」
「やるんだったら、中途半端なことはしたくねえの。せっかく遊ぶの我慢して、練習時間に当てているんだから、無駄なことしたくねえじゃん」
効率を重視しているだけだと言うが、それでもサボらないで真面目に取り組むのが光のいいところだなと、温かい目で見守っていた。
「千蔭も一緒にアイドルやるんだから、覚えて損はねえと思うけど」
「まだ、言ってる。だから、僕にはアイドルなんて無理だって」
「ほら、教えてやるから」
「光くん、話全然聞いてない」
千蔭は内心涙目だった。
「怖いからいいよ。去年の体育の授業でもできなかったし」
「俺が支えてやるよ。今年も授業でやるんだろうし、できたらかっこいいぜ」
千蔭は両手を地面につけ、ブリッジの姿勢になる。
「ほら、蹴ろう!」
ぴょんと、足を蹴って跳ぶが、回転せずに地面に戻る。
背中を支えていた光も巻き込んで、背中を地面に強打した。
「痛っ…」
「おい、大丈夫か?」
「あ、ごめん!手潰れてない?」
光は手をぶらぶら揺らす。
「ねんざとか骨折とかはしてないから、平気」
「よかった」
千蔭はほっと一息ついた。
「でも、千蔭って、並ぶときは俺より前だから、軽いと思ってたんだけど」
「僕らの身長なんて、数センチ程度の微々たるものだし。なんなら成長期はまだこれからだから、伸びるし」
自分はチビだと言われたようなものだから、むきになって、まくしたてる。
「多分僕らに体重の差なんて、ほとんどないから、同い年の2人で支え合うのは難しいと思うよ」
「確かに、コーチも大人だからな」
子供たちだけでやることがどれだけ危険か2人は納得した。
「コーチ、呼んだら教えてくれるかな」
「いいよ。今日はお休みなんだから」
「でも、平日だと他の生徒に教えているから、忙しいし」
「だから、そこまでしなくていいって。バク転できない大人なんて、世の中にはたくさんいるんだから」
「でもさ…」
光は溜めて、言った。
「いざというとき、ビシッと決められたら、俺たち最高にかっこいいアイドルになれるじゃん!」




