13話
音楽が流れ始めると同時に、ダンスも始めていく。
やはり、2人は週末に向けて、仕上げてきたようだった。
今日合わすのが、初めてだということで、立ち位置が被ったりしているが。
しかし、どんどん進んでいくにつれて、何か違和感を感じるのか、顔をしかめていく。
特に、空高は顕著だった。
ときどき、ん?と首をかしげて、だんだん遅れていく。
治喜も先走って、ずれたときに、あっ、と失敗を自覚し、気まずそうだった。
一回音楽が止まる。
「先輩たち、どうしたんですか?様子おかしかったですけど」
英人が尋ねる。
千蔭もそれを感じていた。
デビューはまだなものの、もうすぐお披露目なので、詰めていけば、間もなく完成しそうな出来栄えではあった。
でも、どこか戸惑っているような。
踊ることに集中できていないような、楽しいと感じていないような。
そんな印象を受けていた。
「なんか違う気がして」
「違う?」
「自分の体なのに、自分の体じゃない。入れ替わっているから、当たり前なんだが。でも、体が気持ちに追いついていかなくて…」
空高は不安を感じているようだった。
この場に人がいなければ、泣いてしまいたくなるような。
そんな恐怖を感じていた。
「西山さんほどじゃないんですが分かります。私の場合は体が先に行って、気持ちが追いつかないんですよね」
治喜は苦笑する。
「多分、この西山さんの体に今まで積み重ねてきた経験がつまっていると思うんです。そんなプロの体をアマチュアな私がいきなり操縦なんてなかなかできないです。西山さんも私の体だと、西山さんほどダンスをするのに慣れていないので、ぎこちなくなるんじゃないですかね?悔しいですが、ダンスの実力はまだまだ西山さんには敵わないので」
「ハル先輩も初めたばかりの割にはいい方だと…」
「だから、それは西山さんの体だから…」
「そんなに卑下することもないと思います」
暗くなりつつある空気を変えるように、千蔭は言った。
「体にも積み重ねてきたものはあると思いますけど、今まで頑張ってきた心にだって、積み重ねてきたものはあると思います。あんたら自身を否定しないで」
「天野…」
「天野さん…」
千蔭は普段声を上げるタイプではないので、視線が集まるほど驚かれていた。
「それでも、今まで通りに踊れないのは、きついんだよな」
「だったら、今までのように慣れるまで練習すれば、いいんじゃないっすか?」
「東川の体で慣れちまっても、また俺の体に戻ったとき踊れなくなったら困るけどな」
ようやく軽口を叩けるようになった。




