9話
最悪な形で秘密がバレてしまった。
「こんなときでもなきゃ、お互いに近況なんて話さねえよなあ。この人ら仲悪いし」
「おい、どうすんだよこの状況」
どうしたもんかと、英人は頭を抱えて、嘆く。
千蔭と英人は小声で話すものの、衝撃の事実に驚いた治喜と空高は聞こえていない。
「…もしかして、週末の事務所主催のライブか?」
「ええ。確かに、メンバーは当日発表すると聞いていましたが…」
「「よりによって、この人ですか/こいつかよ!?」」
お互いに指さして、驚いていた。
学校でも事務所でもさんざん喧嘩しているところを見せ、お互いに苦手や合わないことを公言している間柄なので、無理もない。
事務所で関わりがある英人や、話すのが初めての千蔭でさえ、無理があると思われてきたのだ。
「なんで社長もこの2人を組ませようと思ったんだろうなあ…」
英人も遠い目をしてしまう。
「そういや、お前らも知っていたみたいだったよな」
空高が秘密を隠されたことに怒って、詰め寄ってくる。
「まあ、マネージャー任されたから」
「知っている間柄の地蔵堂さんがマネージャーやってくれるのは助かりますけど」
「俺の内心で隠すのきつかったから、あわよくば千蔭も巻き込めないかなあって…」
「そんなこと企んでいたのかよ…」
顔を引き攣らせる。
入れ替わりという想定外のことが起きたものの、英人の企み通り、巻き込まれているのだから。
「よし。社長に直談判しようぜ。こいつと組むのは無理だって」
「要望が通るかは分からないけど、直談判は止めないよ。でも、それで?」
「それって?」
「…今、私たちは入れ替わったという問題解決のために、話し合っていたじゃないですか」
「あ…」
問題がまだ戻ってきて、どうすればいいのか分からないという、沈黙が流れた。
「え、その、社長さんに話すのか?」
「…いや、社長は信じないでしょ。入れ替わったなんて、荒唐無稽な話」
「そもそも話したとして、どうなるんですか?週末の発表は中止?そのまま、アイドルデビューの話も流れる?」
治喜は矢継ぎ早に問いかける。
「私は嫌です。確かに、モデルとアイドルなんて今までとは違う仕事ですが、さらに名前を売るチャンスなんですから」
「俺も。今までダンス一本だったけど、歌もトレーニングするようになって、楽しいって、思えるようになったってのに」
「…なんだ。2人ともアイドルをしたいって、気持ちは一緒なんだね」
治喜と空高が真剣な表情で語っているのを見て、英人が安堵して、笑いかけた。
「確かに2人が仲悪いのは知っているけど、でも2人とも自分の仕事に一生懸命なのは一緒。俺もちゃんとマネージャーとしてサポートするからさ、お互いのこと知ってみない?」




