猫と謎生物
”ここ、地球じゃ無いよね…つまり、異世界転移?ちょっと落ち着いて考えよう。中途半端で起きたから、眠さもげんかい。寝る前にまず安全確保しとかないとか。”
ふと下をみると、研究棟の玄関に白と黒の毛玉が見えた。
”ジルコン!ウラン!おまえたちも飛ばされたのね”
急いで屋上から降りて玄関へ走ったマイは二匹の猫をなでながらほっとした表情をした。
”んー、空間線量の影響は猫も受けるよね…危ない野生動物も居るかもだし。誰もいないから建物に入れても良いよね。確か事務室にカリカリの買い置きあったよね。”
白猫のジルコンと黒猫のウランは研究所に居着いたノラネコで職員や学生に餌を貰っていた。二匹とも人懐っこい猫で皆の癒やしとはなっていたものの、流石に建物には入れてもらえなかったのだ。
”ほら、ジルコン、ウランカリカリだよ。”
建物に入れてもらった二匹はマイの前に黒い物を置いて、ニャーと一声鳴いてからカリカリを食べ始めた。
”あら、獲物をくれたの?巻き貝かなあ?これも地球では見たことが無いから、異世界生物かしら?死んでるのかなあ?”
指でつついていると触手が伸びてきたので、指をとっさに引っ込めた。
”いくら鋭い牙でも堅い殻は壊せないよね。取り敢えず後で調べてみよう。んー、取り敢えずこのコーヒーの空きビンに入れておこう。”
”さて、仲間も出来たし、取り合えず少し休むかあ。何が出るか分からないから炉室区画で寝よう。ジルコン、ウランおいで”
3時間程仮眠を取り頭がスッキリとしたマイは、ジルコンを抱えながら今後のことを考え始めた。
’先ず大前提は生き残ること、衣食住よね。衣は持っているものと職員学生のロッカーを漁るか。食は食べ物と飲み水。各研究室の冷蔵庫と確か災害用備蓄の食料と水が100人x1週分ある筈だから2年は保つかな。飲料水はタンクの水から消費すればもう少し保つか。
住は…炉室を使えば戦術核くらいの攻撃は耐えられる筈、いくら異世界でもそんな化け物は居ないよね。問題は電気、ディーゼル発電は安全だけど実験設備まで賄うと1週間、明かりとパソコン位なら1ヶ月くらいしか持たないな。化石燃料は車にも使うし、色々調べたいから…原発動かすか。燃料は30年持つしね。’
’放射線とか謎生物とか気になるけど、現代の地球では無いことは確定的なので…異世界転移だよ異世界!可能性は2つ!
1.謎ファンタジー世界の神様や人間に召喚されたRPG的世界。
2.何らかの謎物理で別の星または別の時間に飛ばされた。
1だったら、チート能力でウハウハ展開の筈。でも、私って死んだのかしら?神様の白い部屋に行った記憶もないし。でも‥’
”ステータスオープン”
”ウォーターボール”
突然、訳の分からないことを叫ぶマイに驚いたのか、ジルコンは膝からおりて部屋の隅に行ってしまった。ウランは少し顔を上げてマイをチラリと見たがクワァと欠伸をしてまた眠る体制のようだ。
”ジルコン、ウラン脅かしてごめん。ヤッパリRPG的世界ではないみたい。2のせんかなあ。そうすると2年後の生存が厳しいなあ。異星の動植物が消化可能な化学組成だといいんだけど”
”まだ、1の線が完全に否定された訳でもないし、取り合えず監視カメラを駆使して情報収集だな。と、その前にアシスタントAIの愛ちゃんを起こしとくか。”
諸々のことで忙しくて後回しにしていた制御用AIサーバー通称愛ちゃんに火を入れて、命令を告げた。
”愛ちゃん、なるべく早く原子炉起動したいから明日までに不具合チェックと作業ドローン起こしといて。後監視カメラの半分を敷地外に向けて動物らしきものの監視と行動パターンと写真の収集よろしく。出来たら3Dモデルも作っておいて。残りは空に向けて昼夜の時間、時差をとるのと同時に見える範囲で全天球マップを作って。”
”ハイ ワカりました ゼンテンキュウマップ は ツイカで なにか カイセキ シマスカ?”
”地球から観測された星のデータと比較して、もし可能なら地球からの距離と地球の方角、この惑星、星系の基本情報を推定して"
"ソノホカにはナニカ?”
”原発起動後にサンプルの調査をしたいので放射線系の分析機器と生物、化学分析機器を使えるようにしておいて”
愛ちゃんに指示を出し終わって、食事の準備でもと簡易キッチンに向かうと、ジルコンが謎生物の入った瓶を攻撃しているのが目に入った。
”ジルコン、いくら謎生物でも苛めたら可哀想よ、それに水がこぼれそうよ”
”??水??”
そう、ジルコンから取り上げた空だった筈の瓶には中程まで透明な液体が入っていたのだった。
*ジルコンは軽水炉の被覆管、ウランは燃料ですね。院生はアホなので名付けセンスは無いのです。
*マイは抜けてるので、愛ちゃんに期待ですね。口調は多分直します。
*マイは非力なので、色んなことをしてくれるドローン追加です。昔のSFでは飛ばなくてもドローンナノです。