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第8話 乳児の身体

 そう言えば、僕が『リーフ』として生まれてから、どのくらい経ったのだろう?


 何度か眠ったが、まだ時間の感覚はよくわからない。今の状況には慣れてきたように思うが、油断するとすぐに眠気に襲われるので、実はもう何日か経っているのかもしれない。


 だが――。


 どうやら本当に『転生』しているようだ。

 これだけの新奇の感覚に溢れた夢というものを僕は知らないし、僕が眠っている間も両親は甲斐甲斐しく僕の世話をしているようだ。


 父親はルドラ。生まれたときの会話を聞く限りでは、どうやら軍人らしい。

 母親のナタルは、どういう職業なのかはわからない。なにかと僕に構ってくれるところを見ると、今は僕の世話をするのが仕事のようだ。


「これからずっと大事に育てて行かなければならないね」

「娘とはいえ、一人の命を預かっているんですもの。責任重大よ」


 いつの間にか寝入ってしまっていたのか、また時間が飛んでいる。夜になっていたはずの窓の外が明るくなっているのがわかった。


 欠伸に任せて身体を伸ばしてみようとするが、手足がちぐはぐに動く。反射といわれる反応なのかもしれないが、それにしても身体が思うように動かせないのにはまだ慣れない。それでも、黒石病で失われたグラスの身体よりは、これから動くであろう希望が感じられるのが救いだ。


「リーフ、おはよう。今朝は早起きなのね」


 どこからか母の声が聞こえて来た。耳はまあまあ聞こえるが目はまだあまり見えない。良い匂いがするところを見ると、キッチンにいるのだろうと思った。


 それにしても、寝るか食べるかしかすることがないのは、さすがに暇だ。せめてこの世界がどういう場所でどういう時代なのかわかれば助かるのだが……。


 木で組まれたらしい家の天井を見上げる。丈夫そうな太い木は、恐らく(はり)だろう。この家は平屋なのだろうか、一階建てなのだろうか。自分の家だというのに、家のことさえわからない。


 寝返りどころか、自力で首を動かすのも難しい。頭が重すぎるのか、首が弱すぎるのかわからないが、誰かに抱き上げられていなければ、外界の刺激もかなり限られる。


「あー、あーう」


 溜息を吐いたつもりが、赤ん坊のあの舌っ足らずな音が口から漏れた。


「おやおや。退屈させてしまったかな、リーフ」


 父が気づいて近づいてくる。逞しい腕に抱き上げられると、視界が高くなり、部屋の様子がぼんやりと見えるようになった。部屋が明るいせいか、目が少し発達してきたせいか、あるいはその両方か。


「あっう」


 せっかくなので、父に移動を促してみる。こんな赤ん坊の話を聞いてくれるとは思わなかったが、物は試しだ。


「おお、あっちに行きたいのか、リーフ?」


 どうして通じるのかわからないが、父は僕を抱いたまま窓の方へと移動しはじめた。柵つきのベッドから離れたのは、沐浴の時以外では初めてだろう。明るい時間に部屋を見渡せるというこの状況は、僕にとってかなり新鮮だった。


「あう、あっ」


 窓の外を大きな人型の影のようなものが過っていく。大きさからして、人間ではなさそうだったが、街中に機兵のような戦闘用のロボットがいるとは思えなかった。


「大変、ゴミの日だったわ。ルドラ、お願い」

「ああ、急がないと」


 母が何かに気づいたように声を上げ、反応した父が僕をベッドに戻す。


「今、従機が通っていったと思ったんだよ」


 従機(じゅうき)……?


 あの機兵のようなものは従機だったらしい。グラス=ディメリアが生きた時代――特に人魔大戦の時代では、機兵とともに魔族と戦う巨大な人型の兵機だったが、両親の会話から推測するに、この時代の従機はどうやらゴミを回収する役割を担うもののようだ。


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