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第60話 家族への貢献


 予定よりも少し遅くなったものの、僕の中学校入学に合わせて母も錬金術師としての仕事を再開した。腕の良い錬金術師という話は、今も健在らしく、仕事を再開したという報せを出した翌日には、依頼の品が殺到するに到った。


「……みんな、本当にリクエストが多いんだから」


 朝一番に届いた注文書を整理しながら呟く母の目許が、嬉しそうに綻んでいる。仕事を再開するというのは、母にとっても自分の時間を取り戻す良い機会だろう。


 生まれてから十二年間も僕という人間にかかりきりでいてくれたことが、僕にとっては驚異的だ。自分には到底真似出来ないたくさんの愛情を注がれたことに改めて感謝しながら、僕は食べ終わった食器を片付けていく。自分が食べた分はもちろん、目玉焼き用に置かれていた塩胡椒などの調味料も食器棚に戻す。


 注文書を一通り読み終えた母が、手を天井に向けて伸びをしている。真面目な母のことだから、皆の期待に応えようと無理をしないことを祈るばかりだ。


「……母上。洗い物は僕がやります」


 テーブルを拭き上げるために手布をかたく絞りながら、僕は母に声をかけた。


「ありがとう。助かるわ、リーフ」

「もう中学生になるのですから、このくらいは当然です。それと――」


 手伝いを申し出たいが、さすがに錬金術の手伝いはやり過ぎだろうな。ここは無難に、家のことをやるべきだろう。


「昼食はどうしますか、母上?」

「……そうね。冷蔵魔導器に買い置きがあるから、一度戻るわ」

「ありがとうございます。わかりました」


 素直に引き下がったものの、あの口ぶりだと、多分僕にお昼を作ってくれるつもりなんだろうな。母がアトリエに行ったら、昼食の計画を立ててみよう。買い置きがあるなら、ついでに夕食もなにか仕込んでおくといいかもしれない。


「リーフ」

「なんでしょう?」


 椅子から立ち上がった母がアトリエに向かうものだと思っていた僕は、不意に名前を呼ばれてぎくりとして振り向いた。


「何かいつもと違うことがあったら、我慢しないですぐに教えてね」

「僕は大丈夫ですよ、母上」

「……ええ。そうね……」


 取り繕うように笑ったように見えたのは、やっぱり僕の身体のことを心配しているようだ。体感的にはなんともないわけだし、新学期が始まればアルフェに浄眼で視てもらうこともできるだろう。こればかりは、時間をかけて言葉以外の方法で伝えていくしかないだろうな。


 それをどうすべきかは、まだなにも思いつかないのだけれど……。


 頭の片隅にでも置いておけば、そのうち良い案が浮かぶかもしれない。今すぐどうにかするのは無理なのだと、焦る気持ちを宥めながら、僕は冷蔵魔導器の扉を開け、中のものを確認する作業をはじめた。



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