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第124話 授業開始

 初日は入学式とホームルームだけで終わり、翌日からは本格的な授業が始まった。


 午前中の一限目と二限目はそれぞれ軍事訓練と魔法学で、午後の三、四、五限目は基礎教養の座学という時間割になっている。


 軍事訓練の担当は、担任でもあるタヌタヌ先生によるもので、支給された体操服に着替えてグラウンドに集合することになった。


 体操服のサイズがあるか不安だったが、小人族サイズが割り当てられているようだ。僕もホムも丁度良いサイズが用意されていた。


「マスター」

「ん?」


 グラウンドに出て視線を感じたように思ったが、ロメオがこちらを見ていたようだ。ホムが警戒心を露わにしたが、気にするほどでもない。


「多分、僕のことを気にしているんだろう。とある事情としか言わなかったからね」


 ロメオは小人族だが、人間でありながら僕は彼よりも小柄だ。小人族であるロメオはそれなりの苦労をしているだろうし、僕のことを気にかけてくれているのだろう。


「病気のこと、言わなくていいの?」

「珍しい症例だし、病名を言ったところでわからないだろうからね。それに、病気ってことで変に心配されたくない」


 問いかけに首を(すく)めると、アルフェも納得した様子で頷いた。


「……それもそうだね」


 頷きながら、アルフェが僕の身体をぎゅっと抱き締める。


「ワタシもリーフが病気って聞いたとき、リーフがいなくなっちゃうんじゃないかってすっごく心配だったもん」


 ああ、急にどうしたのかと思えば、当時のことを思い出させてしまったのか。あの時のアルフェの苦しそうな顔は、今思い出しても胸が痛む。


「その節は迷惑をかけたね、アルフェ」

「ううん。リーフのことで迷惑なんて思ったことないよ」


 謝罪の言葉を口にすると、アルフェは即座に首を横に振った。揺れる髪が頬に当たり、少しくすぐったい。


「全部ぜーんぶ、ワタシがリーフが大好きで考えたり思ったりしてることなんだもん」

「そっか」


 アルフェからそっと身体を離し、その顔を見上げる。ああ、あんなに小さかった赤ん坊は、もうこんなに大きくなってしまったんだな。


「うん」


 僕が全ての記憶を持ったままでいることを知らないアルフェは、嬉しそうに僕の手を取り、指を絡めて握ったり離したりを繰り返している。僕がここにいる、僕と手を繋いでいるという感触を確かめるのが好きなのは、変わらないな。


「……はははっ! ちんちくりんがそうやってると、ママとおててを繋いでるベイビーちゃんみたいだなぁ」


 アルフェの行動に頬を緩めていると、からかうような笑い声が背後から浴びせられた。


「…………」


 はあ、またヴァナベルか。僕のことを嫌っているようだが、いちいち突っかかってくるのが面倒だな。


「そんなことないもん! ママはリーフの方だもん!」

「マスターは精神的に成熟していらっしゃいます。軽口は慎むべきです」


 黙っている僕の代わりにアルフェとホムがヴァナベルに反論する。

「それがママって姿かよ!? ちんちくりんは背だけじゃなくて、なにもかもちんちくりんだな」


 ヴァナベルは懲りた様子もなく、これ見よがしに胸を張って大股で去って行った。どうやら胸囲のことをからかわれたようだが、少女のまま成長が止まっているのだから僕にはどうしようもない。


「……胸囲があることは、なんらかの優位性を示すのでしょうか?」


 挿絵(By みてみん)


「さあね。僕は興味がないけれど」


 あってもなくても僕には関係がない。


「アルフェはどんなリーフも大好きだよ」

「ありがとう、アルフェ」


 元々気にしていないつもりでも、アルフェがそう言って抱き締めてくれるだけで心が温まるのは、なぜなんだろうな。




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\カクヨムでも連載中/


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― 新着の感想 ―
[一言] この手の煽ってくるやつにこの対応は煽り返しになっちゃうよねぇ
[良い点] おおぉ、面積少なめの体操服ですね、ありがとうwww そしてアルフェさんとリーフさんがイチャついたら心が癒やされる気がします〜 ヴァナベルさんは少し空気を読まなかったけど、アルフェさん達は無…
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