表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

2話 平凡な少女と狂ったストーカーの女の子

 平凡な女子高生の正城縁(まさきゆかり)藤澤美結梨(ふじさわみゆり)という後輩の女子高生に告白される。しかし、正城縁は自身の事を知り尽くしているという藤澤美結梨に恐怖し、告白を断ってしまう。




 美結梨は訳が分からなくなり、焦るような表情になった。


「え……? せ、先輩! どういう事ですか!? どうしてごめんなさいなんて……」

「……あたしは……藤澤さんの告白を受け入れられないんだ」

「な、ななな何言ってるんですか!? 私! 先輩と付き合うために先輩の事知り尽くしたんですよ!? 先輩と幸せになるために頑張ったんですよ!?」

「……いくら好きだとしても! 関わった事無いのに知り尽くされてるのって怖いよ……」

「そんなの付き合っちゃえば怖くなくなります!! だから付き合って下さい!!」

「そ、それでも……」

「お願いですから! 付き合って下さい!! 付き合って下さいよぉ!!」


 泣きながら必死で訴えてくる美結梨。しかし、縁は意思を変えるつもりは無く、


「ごめんなさい! 藤澤さんとは付き合えない!」


とはっきり言った。それを聞いた美結梨はショックで目から光が消えて虚ろな目になってしまった。一方の縁は美結梨の告白をはっきりと断ったが、その心苦しさからまた泣きそうになっていた。

 経験したことの無い程の強い心苦しさに耐えられなくなった縁は、一刻も早くその場から立ち去ろうと公園の出入口に向かって走った。しかし、すぐに右腕を美結梨に掴まれ、


「先輩……どこに行くんですか?」


と恐ろしい様子で言われた。縁は美結梨に掴まれている右腕に力を入れて引っ張ったが、美結梨の力は縁よりもずっと強いため、全く動けなかった。


「ねぇ……どこに行くんですか?」

「離して……!」

「答えてくれるまで離しませんよ?」

「……か、帰るんだよ」


 縁はそう言うと、美結梨は縁の右腕を強く握りしめた。


「痛い! 離してよ!」

「先輩をゴミのように扱う奴らの所になんて帰しません!」

「ゴミ……。いや、たとえゴミと思われてても! あたしは家に――」

「ダメです!! 絶対に帰しません!!」

「離して! 離してぇ!」


 縁は自身の右腕を全力で引っ張るが、美結梨の力には全く敵わなかった。その時、美結梨は虚ろな目をしたまま笑みを浮かべた。


「先輩。私の家で一緒に住んでください」

「……え? 藤澤さんと……?」

「はい! 勿論良いですよね!? もうゴミのように扱われる事は無くなりますよ?」

「だ、ダメだ……。他人の家に勝手に住むなんて……」

「勝手じゃないですよ? 私が住んでくださいって言ったんだから大丈夫です! それで……住んでくれますよね? さっきの告白みたいに断ったりしませんよね?」


 美結梨は可愛らしく小首を傾げたが、目が虚ろな目なので縁は完全に怯えていた。それでも縁は意思を変えず、


「ごめん! それもできません!」


とはっきり言った。すると、美結梨は縁の右腕を手放した。その直後、縁に抱きついた。


「アハハ……先輩って頑固なんですね。そこは知りませんでした。先輩は自己判断が苦手な人だって思ってましたから……」

「…………」

「だから……私も頑固になりますね!」

「……え?」

「先輩は今日から私と付き合って、私と一緒に住むんです! これは決定事項です!」

「……は!?」


 それを聞いた縁は美結梨を強く押して美結梨から離れた。


「決定事項って……。それじゃあさっきの告白は……!?」

「頑固な先輩がいけないんですよ? 私の告白を受け入れて、私と一緒に住むことも受け入れてくれたら無理矢理決めたりしませんでした!」

「そんなの……受け入れても受け入れなくても変わらないじゃん……」

「そんな事は無いですよ? 受け入れてくれてたら私と先輩は両思いになれてました。でも今は私の片思いです。だから先輩には私を大好きになってもらいますね! そのために先輩には私の事を知り尽くしてもらいます! これも決定事項ですからね!」

「そんなの嫌だ! あたしは藤澤さんとは――」

「美結梨って呼んでくださいね? 私も縁って呼びますから!」


 縁は本能的に逃げなきゃいけないと感じ、美結梨に腕などを掴まれていないうちに全速力で走った。しかし、


「縁~逃げちゃダメだよ~!」


と言いながら笑顔で走る美結梨にすぐ追い付かれ、右手を握られた。美結梨は縁とは先輩後輩の関係ではなく恋人の関係だと認識して喋り方が変化した。


「縁は私の家知らないよね? 案内するね!」


 縁の右手を強く握って歩き出す美結梨。縁は自身の右手を引っ張ったが、縁の力では美結梨には全く敵わないので抗っても意味は無かった。




 9分程で2人は美結梨の家に着いた。縁の家より大きめの高そうな家だ。


「さぁ縁! ここがこれから縁の暮らす家だよ! 入ろ!」

「やっぱりダ――」

「ダメじゃないよ! 早く入って!」


 縁は右手を引っ張られて美結梨の家に連れ込まれた。そして、すぐに美結梨の部屋に案内された。


「この部屋は今日から私と縁が共に愛を育む部屋だよ! これからいっぱい愛し合おうね! ゆ・か・り!」


 美結梨の目はいつの間にか虚ろな目ではなくなっていた。その代わり、目に小さなハートができていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ