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最新型営業

作者: 田中シラス

初投稿です。温かい目でご覧下さい。

「ふむ、これは一体何でしょうか?」

「こちらは来年の20xx年に発売を予定している小型5DX劇場装置です。小型のホログラフィックシステムにより、自宅でお手軽に5DX映画を鑑賞することができます。」

最近よく聞くホログラフィックか。機械嫌いの俺には3Dメガネでお腹いっぱいだ。白い髭を擦りながら店員の話を聞いていると、部下の貝野がブロンドヘアをなびかせて駆け寄ってきた。

「安藤さん、早く次の営業先に行かないと。」

「まあまあ、そう焦るな。焦ると老けるぞ。常に心に余裕を持っておけ。人生の先輩からのアドバイスだ。ところでお前、いつ髪色変えたんだ?」

「変えてません。ノルマを越えてないから焦るんですよ!それに人生の先輩?一年早く生まれただけじゃないですか。」

(確かこいつの髪色は黒だったはずだが…。)

そんなことを思案していると、カツンと頭を叩かれた。貝野が睨み付けている。上司の頭を叩くとは、気の強い女は嫌いじゃない。

「最近はホログラムを活用したリモート営業まで登場して、ただでさえ競争が激しいんですから。直接営業先まで足を運ぶなんて、今時私達だけですよ。」

全く、こいつは俺を説教するようにプログラムされているのか。見た目は若いのにしっかりした奴だ。ぶーぶーと文句を言う貝野に穏やかな口調で諭す。

「リモートの方が契約本数は多いかも知れんが、長続きするお客様はできない。営業というのは昔から心と心の交流が重要なんだよ。ホログラムだか何だか知らんが、そんな機械に頼る営業は俺は好かんな。」

俺の考えに納得してくれたのか、俺の機械嫌いに諦めたのか、貝野はそれ以上は追求してこない。

「分かりました。でも、少しは私の気持ちも考えてください。あなたの下について以来、脚のパーツを取り替える頻度が多くなったんですから。前の定期検査も関節の潤滑油が漏れていて引っ掛かりました。とんだ出費ですよ。」

貝野は嫌味ったらしくセラミック製の脚をコンコンと叩いてアピールする。

「分かったよ。埋め合わせに前欲しがってた新型のメモリ奢ってやる。耳に嵌めるアクセサリ型のやつだ。」

「本当ですか!?じゃあ許します。あれ可愛いんですよ~。」

ピコピコと首元のLEDを点灯させて喜ぶ貝野。現金なやつだ。

「あっ、それと。」

貝野は何かを思い出したかのように声を出す。そして目元を指差し、にやりと笑ってこう続ける。

「安藤さん、『眼』買い換えた方がいいですよ。」

そう言われて色覚ユニットを手動調整してみる。すると貝野のブロンドヘアはみるみる内に見慣れた黒髪に戻っていく。はあ、また故障か。これだから機械は嫌なんだ。俺は内蔵ネットワークシステムで電子バンクにアクセスし、心許ない貯金残高を確認してため息をついた。

最新の機械に頼ってばかりじゃ駄目だという本人がアンドロイド、という矛盾を描きました。


最近『デトロイト』をプレイしたから思い付いたんだろうなぁ。

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