壱 月光の困惑
(……………………?
……………ここ、は?)
豪華な部屋にある天蓋付きの大きなベッドの上、そこに横たわっていた5歳ほどの少女が目を開けた。
少女の横たわるベッドの傍にいたメイドが急いで部屋を出ていくのを少女は認識していたが、少女は部屋を不思議そうに、初めて来た見知らぬ場所のように見渡していた。そこは5年間少女が過ごしてきた自室だというのに。
少女は考える。自分の部屋は和室であり、このような西洋風では無かった。自分の身体はここまで小さくなかった、と。
(これは……どういう事だ………?)
その時、急いで部屋を出ていったメイドがある人物を連れてきた。
その人物が少女に話しかけた。
「意識が戻ったそうだな、ルニエレクス」
少女は何かを考える間も無く答えていた。
「はい、お父様」
(お父様?俺は父上をお父様とは呼ばないし、両親とも日本人だからこの外人は親族でもないはずだが……
それに、俺の名前は忍足 月影だ。しかも銃で撃たれて死んだ瞬間の記憶もある。……どうなっているんだ?)
少女…月影は頭の中で困惑しながらも、表面的には無表情で淡々とその人物…父親の問いに答えていた。そして父親が退室し暫くの時間が経った後、月影はこの一連の出来事の答えを導きだした。
それは、月影自身が転生したという事だ。冷静になり落ち着いてみれば、自分の中に5年分の記憶がある。
それに……何故か、とてもしっくり来るのだ。月影は長年の仕事で培った自分の勘を信じる事にした。