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俺様の作ったゲームが全力で俺様を殺しにやって来る件。  作者: まんどう
STAGE 0 チュートリアルを始めます
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STAGE 0-5 好奇心は俺様をも殺す

デフォルトのままでは、スキルにはディレイやら硬直やらが存在している。

カスタマイズ性を持たせるため、この部分をどうにかするための更なるスキルや装備、そして道具が存在する。

自由すぎるカスタマイズは偏りと崩壊を生んだので、俺様はそれに固執する事無くさっさと諦めた。


余談だが、その時に作ったテストモデルゲームは、こっそり俺様の目の届かない場所でマニアどもの間でプレイされ続けている。

……金取ればよかったかなぁ? まぁ過去の遺物なぞ、いつか完璧に調整したゲームで塗りつぶしてくれる。


あのクソ犯罪者共のお陰で中断されはしたものの、ゲームの設定がリアルではどういう風に反映されるのかが大いに興味が有る。

採取は採取で興味があるが、本当は戦闘を見てみたかったんだよな。

最終的には俺様は自分で何から何までやらないといけない訳だし? 今のうちに思い出すべきを思い出さないとな。


もう一つ気になるといえばコンボの存在だ。

正確にはコンボのように繋ぎ易いスキルの発動順ってだけだが、割と簡単なものは最初から公開している。

厳密に言うと、システム的に用意されたコンボではないため、色んな種類のコンボが存在している。

最初から公開しているものは通常コンボと呼ばれ、殆どのスキルが持つディレイのリレーとなる。

次に加速コンボというのがあり、これはスキルを使う事によって一部のスキルのディレイが短縮されるというもの。

試行錯誤しなければ気付かないため、中級プレイヤーはこれの発見に時間を割いているはずだ。

ま、これもやってみれば分かるために攻略サイトなどでは比較的お目にかかりやすい情報だ。

大事なのは最後に挙げる裏コンボの存在だ。

裏コンボは、普通にコンボをつなげているようで、実は攻撃の一部がチャージされ続け、特定のスキルをきっかけに全開放される必殺技のようなものだ。

っつか、特定のスキルってのがそもそも必殺技の位置付けなんだがな。


ま、あんまり頭使って思い出し難い事を思い出そうとするのも好い加減にして置かないとな。

色々疲れちまう……。



………

……



「……で? こいつ等どうする」


次の日、又しても救護室の特別清潔に保たれたベッドの上で目を覚ました俺様は、ボコられて縛り付けられた犯罪者二人及びニルドルと対面していた。


「……あ? 突き出す以外の選択肢でもあんのか?」


「ひょまっっ!?」「お、おたひゅけぇ!?」


「……うるせえよ? 人殺そうとしてた奴が自分の命だけはとか虫の良い事抜かしてんじゃねえよ。

 潔く死ねよ? 殺される覚悟もなく他人は殺して良いだとか、どんだけ自分勝手なこと言ってんだ、あ゛あ゛?」


「「………………」」


うなだれる二人を不憫そうに見つめるニルドル。

どうもニルドルが殺されかけていた俺様の事を助けてくれたらしい。

……ニルドルの評価を数段階上げておこう。

Dランク任務、一つ取り下げても良いな。


「こいつ等の処遇は俺に任せてもらえんか?」


ニルドルが珍しく熊らしからぬ困ったような表情で俺様に問いかけてくる。

……むぅ、元はと言えば持ち場を離れたニルドルに非があるわけで、俺様はその嘆願を聞いてやる義理は無い。

……あ、そう考えるとDランク任務の取り下げはやっぱ無しだな。

だがこのままだと、このクソ共を衛兵に突き出すのをニルドルは渋り続けるだろう。

うーん……あ、良い事思いついた。


ニヤリと笑う俺様に気付いた3人が訝しげに見つめてくる。


「そういやあよぉ? 何で俺様はお前等犯罪者に絡まれてたんだっけか?」


そう聞いてやると顔を見合わせる二人組。

俺のニヤケ顔からどんな不利な言葉や質問が飛んでくるかと構えていたに違いない。

フフフ、今からちゃあんと恐怖のどん底に陥れてやるからな。


「確かこうだったよな? お前ニニンちゃんに何色目使ってんだ? ってよ」


途端にニルドルの視線がギュロンヌ!!とばかりに犯罪者共に注がれる。

これに泡を喰らったのは犯罪者共だ。


「ままま、まっひぇ! ひょんなほほいっへねぇ!」


「ほほほ、ほはいでふ!」


「おいおい、嘘はいけないぞ? 毎日お風呂タイムが楽しみになってきたとか、ニニンは俺の嫁ーとか言ってたろうが」


「ふっ! ふひゃへんは! いっへねえひょ!」


「はひはにほれのひょめひゃは、おふほはいふは……はっ」


ニルドルの視線は既に凶器と化した! 犯罪者共は震え上がっている!


「……そうか、俺の考え違いだったか。

 感謝する……忌むべき未来を摘み取ってくれた事を……」


そう言って犯罪者共の喉元をがっちり掴んだニルドルは、そのまま衛兵の駐屯所に引き摺っていったのだった。

ザマァ……ひっひ♪



………

……



次の日、朝食を食べていると


「食べ終わりましたら、ギルドの受付までお越し下さいね」


とニニンに言われたので、ちゃっちゃと食べてカウンターに急ぐ。


「あ、いらっしゃいカルマさん。

 お仕事の方、受けてくださる方が見つかりましたよ」


そう言ってニニンが指した冒険者達は……少年少女の二人組だった。

言い忘れたが、俺様はカルマと名乗ってる。

親しくも無い相手に本名の“かまる”と呼ばれたくは無いからな。

名付けられ損ねた名前の方を名乗っている。


「ちなみにニニン、どれの依頼の方だ?」


「えっと……EとDの二種類ですね」


「この子達はD任務受けても大丈夫って判断がなされてるんだな?」


「おい! 幾ら依頼人でも失礼だぞ! 丸っこいの!」


「ちょ、ちょっと……」


「出来るなら構わないが、目の前で死なれても助けられない……って言うか、俺様の護衛も含めての依頼だからな。

 その時々で加算に値すると思えば加算もしてやる、有難い依頼者様だぞ。

 心配に思って何が悪い」


「ぐぬぬ……」


「まぁまぁ……カルマさん、この二人はベルンとアイル、兄妹お二人のパーティで、Dランクなり立てですが実力は保障しますよ」


「ふむ、ニニンがそういうなら構わんか。

 受けるよな? 受けるんだろ? ではよろしく頼む」


「なんなんだこの偉そうな丸いのは!」


「依頼者様だ、ちっこいの」


「誰がちっこいのだ!」


「ちょ、落ち着きなよぉ……」


まぁ出会いからしてろくでもないが人間関係を買うための依頼ではないからな。

知識の摺り合わせが目的だ。



………

……



この二人が並行処理として選んだEランクの仕事は採取任務。

主に薬草の材料等を採取する仕事だ。


この二人、ベルンとアイルはDランク冒険者らしいが、今回は採取任務であって討伐は無い。

コンボの確認は最悪別の日となる。


「……で、これがそのまま切り傷等に使える薬草ですね。

 勿論精製した方が効果は高いですが」


「ほうほう……」


「……ちっ」


今俺様は回復魔法使いのアイルに色々教わりながら知識の摺り合わせを行っている。

やはり現物を見ると、どういう設定でどういう裏話があって、さらにはどういう裏技があるか、なんて事まで思い出せる。

これはやはり俺様の説が正しいということだ、うん。


「……で、これが解毒作用を持つ薬草で、先程の薬草と合わせると、」


「おい! アイル!」


「えっ? あっ! ……御免なさい、これは秘密でした」


「そうなのか?」


「はい」「そうなんだよ! 深く突っ込んでくるんじゃねえよ!」


ふむ、秘匿事項と言うか、自分に有利な話を他に拡散させないって奴か。

分からんでは無い……分からんでは無いが、


「解毒の草と切り傷の草、1:2の割合で混ぜて精製すれば初級ポーション+が出来る、そういう話か?」


「なんっ!?」「ええっ!?」


「更に言えば解毒2:切り傷5の割合で混ぜて精製すれば初級ポーション++も出来るが?」


「はぁっ!?」「うそっ!?」


嘘を言ってどうする? この程度なんて事無い知識だろうが?


「何だこいつ……」「私が一生懸命中級ポーションを作ろうと研究してきたのって……」


「中級ポーションはこの近辺で採れるものから作り出せはしないだろう?」


「それでも挑みたいんです!」


「何故?」


「……友達が死んだ時、助けられなかったから」「…………」


二人の共通の友人か……ふむ。


「先程ちらっと見かけた化膿止めの薬草、分かるか?」


「えっ? ……あ、はい」


俺様が指し示す薬草を見てうなずくアイル。


「化膿止め2:解毒3:切り傷5で混ぜて精製すれば初級ポーション+++が出来る。

 回復量としては中級ポーションに迫るだろう」


「本当ですか!?」「マジかよ!」


俺様は肩をすくめて、おどけながら言う。


「今回良い感じで採取出来ているんだ。

 俺様のレシピを試すだけ試してもただだし罰も当たらんだろう?」


「「…………」」


二人は何か考え込んでいたが、アイルはやがてうなずきを返した。

ま、俺様にとってはどうでも良い知識だしな。


「あ、そろそろお昼ですし、とりあえずここで食事にしますね!」


「ほぉ、アイルは料理が出来るのか」


「料理はおれがすんだよ」


「…………」


うむ、優しい俺様は何も言わないで置いてやる。


「ああ、さっきの化膿止めの薬草とってくれ」


「うん? こんなものが喰えるのか?」


「おう、それを少し足すと良いアクセントになるんだ」


多少は打ち解けたのか、ベルンが俺の手から化膿止めの薬草を受け取り、ちぎって鍋に放り込む。

ふむ……あれは喰えるのか。

何気に別の株を見つけた俺様は、深く考えずに口に放り込む。


「はむ……(もむもむ)……! あ……あああ……んぎゃああああああ!!!」


「何だ!? ……っておっさん! これ喰ったのか!?」


ぎゃあああああああ! 辛っ……辛ああああああああああい!!!


「どうしたの!?」


「このおっさん、化膿止めを生でかじったんだ。

 何だって生でかじろうとしたんだ……?」


え? 食べ物ですよね!? あとその水下さい!

アイルから水が汲まれた壷を掠め取ると、一気にあおる!


「あっ……! だめえええええええええええ!!」


……駄目? 駄目って何……ぎゃああああああああああああああああ!!!


「その草は熱で不活性化するんだよ! 何でそんな事しらねえんだ!」


……いやいやいや……知りませんて、ゲームの事以外は……。

冷たい水を飲み干した俺は、喉に大量の針が刺さったような痛みで悶絶し続けるのだった。

ほんの好奇心だったのに……がくっ。


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