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俺様の作ったゲームが全力で俺様を殺しにやって来る件。  作者: まんどう
STAGE 0 チュートリアルを始めます
4/17

STAGE 0-4 どうしてこう頭の悪そうな連中ってのは……

スキルの実装についてどうするか……。

オールフリーに拡張性を持たせる事自体は悪くないし、俺様も自分がプレイするなら楽しめると思う。

しかしこれがやってみると以外に厄介な事に気付く。

試しに小さなゲームを2時間程でちゃちゃっと試作してみたのだ。

フフフ……俺様ってば優秀~。

ゲームは対戦形式の、つまり闘技場のような物をスタンドアロン版で作り、テストプレイヤーにそれぞれ思い思いに育ててもらった。

勝つ毎にスキルポイントが追加され、色々なステータスをいじる事が出来る。

例えば最初から用意されているスキルを伸ばす事も出来るし、発動までのターン数を短くする、なんて事も思いのままだ。

そしてこのスタンドアロン版で出てくる敵は、常に自分自身。

そうしておけば自分でスキルを育てていける分、何が弱点かを見極めつつ育てられるからな。

弱点を無くしてオールラウンダーにするもよし、スキルをとことん育てて極めるもよし、正に自分だけのキャラクターを育て上げれるわけだ。

一応ステージ毎にセーブされているため、成長の度合いを振り返る事もできる様になっている。


で、何が厄介だったかというと、強さの偏りだ。

育て方によっては他を寄せ付けないほどの強さを発揮した。

中でも極限溜めというスキルと回避ステータスに極振りしたキャラが光っていた。

ターン毎に火力が蓄積されていき、敵の攻撃は延々と避ける、というものだった。

……否定する気も無いが、正直見てるほうはつまらない。

相手を倒しきる火力に達するまで避けるだけなのだから。


その形になるにはポイントが大量に必要なように修正して再度やらせてみたものの、当たらなければ何とやらを超える事は出来なかった。

で、3度目の修正になると、そもそも最初から回避や溜めのスキルに振るべきじゃないレベルとなり、そのスキル廃止の案まで出た。

上限を設けては? と言う意見もあったが、じゃあそもそも自分の好きなように作るというコンセプトを無視してるよな、って事でオールフリー計画はぽしゃった。

まぁ、企画段階で潰れてしまうのは仕方が無い……ほ、ほんとだからねっ!?



………

……



「…………」「「…………」」


ちょっと前に見た光景と寸分違わぬ光景が目の前に展開されていた。

俺様は何度この医療用の特別清潔に保たれたベッドの上で目を覚まさなければならんのだ?

こうなってるのは、俺様が裏設定を知ってるせいでニニン愛用のぬいぐるみの名前を知っていたからなんだが。

それを俺様は機転を利かせて“俺様の故郷ではそういう名前を犬猫に付ける”と咄嗟に口にした。

そのため誤解で ――って訳でもないが―― 又してもギルドマスターでもあるニニンの父ニルドルが、俺様を殺しかけたわけだ。


「はぁ~~~……」


俺様のため息にビクッと体を震わせるニニンと、土下座の姿勢のまま微動だにしないニルドル。

まぁ? 俺様の迂闊な発言が元だから? 仕方ないんだけどなぁ!?

とまぁ、流石に2度も殺されかけたとなると、いくら温厚な俺様でも怒りが滲み出る訳よ!?

……どこかで何処の誰とも知らない奴が大仰に驚くムカつくシーンが夢想されるが……気のせいだな、気のせい。


「あ、あのあのあの……」


ニニンは何とか言葉を紡ごうとするものの、何と言っていいか分からず迷っている。

俺様はむっつりとしたまま口を開こうとしない。

……いや怒ってるのは確かなんだけど、落とし所が分からなくてな。

何故かは分からんが、俺様が作ったはずのこの世界について、どうしても細部……って言うか色々思い出せないでいる。

そのため、何を求めれば落とし前になるのか、何をどうしたものかと悩んでいるのが実情だ。

考えろ考えろ……思い出せ思い出せ……ここがゲームの世界だと現実を飲み込んだ後、何を一番最初に思い出した?

この村ラヴァッシュは狩人に教えられて思い出したが……そうだ、自力で思い出したのはあのクソ牛だ!

思い出したきっかけは何だ!? ……この目で見たから? そう……なのか? だとすれば……。


「……ニニン」


「ひゃいっっ!」「…………」


ニルドルから僅かな殺気が漏れるが、土下座の姿勢で動く気配は無い。

俺様も余計な事を考えていないからだろう。


「ギルドへの依頼ってのはどれ位で出来るんだ?」


「へ? あ、ええと……最低ランクであるEを例にとりますと、依頼自体は銀貨11枚となってます」


「詳しい内訳は?」


「う……余り部外者に公開出来るようなお話ではないのですが……」


「冒険者が依頼主から直接依頼を受ける事もあるのだろうが?

 ならばれてると思って間違いないから安心して口を滑らせろ」


ニニンがニルドルの方を伺うと、土下座の姿勢のままうなずいてみせる。


「はぁ……わかりました。

 銀貨11枚の内、1枚がギルドに、10枚が冒険者さんに支払われます。

 この割合はギルドの支部によっても変わりますが、概ね一律です。

 基本、11で割り切れる額にしてもらい、端数をギルドが受け取る形ですね。

 依頼主さんからの追加報酬がある場合は、そのまま冒険者さんに手渡されます」


ピンはねは無い……と、ふむ。

最低ランクで1100円位ってのはお使いとか採取か?


「A~Dの基本報酬は?」


「Dで銀貨110枚、Cで金貨11枚、Bで金貨110枚、と大体10倍になってます」


え? 何それ雑だな? 俺様そんな適当な設定にしたっけか?

……システムの裏側なんてそんなもんかもしれないが、じゃあその間の額だった場合は追加報酬を貰ったって感じかね?

そう考えると上手く出来てるもんだな。


「Eは採取、Dからは討伐任務って所か?」


「概ねそういう感じですね」


「なら……EとDの依頼をそれぞれ3つただで出させろ。

 出来るか?」


「うっ……お父さん……?」


ギリギリギリと歯軋りが聞こえてきておっかねえが、今回は引かねえぞ。

銀貨363枚だから36万相当か? 命の値段にしちゃ安過ぎるだろ? 特に俺様の命となれば、な。

歯軋りが落ち着いてくるとニニンが恐る恐る聞いてきた。


「えっと依頼内容はどのようなものでしょうか?」


「任務観察だ」


「任務観察ですか?」


「そうだ、他の任務と掛け持ちを基本とする。

 Eの任務観察は、他のEランクの仕事の達成までを、俺様が観察出来るようにサポートする依頼だ」


「……意味あるんです?」


「めちゃめちゃあるだろう? 俺様は登録したてだぞ? 先達の手腕を見て覚えるのも学びの一環だろうが」


「はぁ……」


どうもぴんときていないようだが、そりゃそうだろう、適当にでっち上げた理由だからな。

こんな依頼を出す理由は勿論ある。

俺様は先ほどクソ牛の事は、自分の目で見て初めて思い出したと結論付けた。

なら他の事も見れば思い出すのでは無いか? と期待しているわけだ。

上手く行けばそれで良し、上手く行かなくても懐は痛まない。

それに普通に依頼をこなす所を見せるだけで倍の報酬が手に入るのだから、冒険者共に恩を売れるかもしれないしな。

誰だって楽して金儲けしたいだろう?


「で? どうすんだ?」


「うっ……はい、承りました。

 クエストボードに張り出しておきます」


よしよし偉いぞ、撫でて(ゾワッ)やらんでも良いか、いい年の娘がそんなんで喜びもせんだろうしな。

……はぁ、一々心臓に悪い熊だ。



………

……



次の日、俺様に割り当てられた部屋で普通に目を覚ます。

初日は牛、二日目は熊、そして三日目も熊に殺されかけて、ようやく四日目に死にかけずに起きられた。

やれやれだぜ……。

食堂に下りていくとニニンが朝食を用意してくれいたので、それを他の泊り客か冒険者だかと、席を並べずに食べる。

いや、知らん奴と合席とか無理だろ? 何? 嫌じゃない? 俺様は嫌だ。

断固断る。


朝食は普通に美味かった。

いや悪い意味じゃなくて、なんだろう……素材の旨みが強いんだろうな。

多分余り奇をてらわない方が美味いという事を知っているんだろう。



………

……



さて、本題だ。

俺様はギルド内に設置されたテーブルの一つに陣取る。

誰かが俺様の依頼を受けないとも限らないからな。


「おい、そこの潰れた白パン野郎」


「ぎゃっはっは! 上手い事言いやがる!」


幸先良く、さっさと手にとって貰えれば楽なんだがな……。


「おい聞いてるのか! そこの膨れ大根!」


「うほほほほ! これまた上手い例えだな!」


そう言えばニニンの姿が無いな……洗い物でもしてるのか? 熊の奴にやらせれば良いのに。


「てめえ無視すんじゃねえよ!」


「ぶあはははは! こいつ、耳も飾りなんじゃねえの!?」


「さっきから何を煩い漫才をしている? そんな詰まらん漫才では金などくれてやれんぞ」


「「…………」」


さっきまで一緒に爆笑していた男も一緒に剣呑な表情を浮かべ、俺様のことを睨みつけ始めた。

何だ? 一体。


「てめえ、なめた態度とりやがって」「おう、こいつ絞めるなら手を貸すぜ」


む? ギルド内で追い剥ぎだと? どんだけ治安が悪いんだ。


「おい! ニルドル! ギルド内で追い剥ぎを企む奴が居るってのはどういう事だ! 教育がなってないぞ!」


「えっ!? ギルマス!?」「うおっ! まじか!?」


ゴロツキ二人が振り返るもそこには誰も居ない。

当然ブラフで俺様はこの隙に脱出している。


「あんのやろっ!」「くあー! マジぶっ殺す!」


ヤバイヤバイ……あんな頭の悪い連中も普通に居るとはやってられん!

一時撤退の後、ニルドルにあること無いこと、無いこと無いこと吹き込みまくってやる!

だが……俺様では勝てんのも事実! だから逃げる! 俺様は逃げ出した!


「どーこーへー? 逃げようってんだ?」


しかし回り込まれてしまった! が、すかさず方向転換し……俺様は逃げ出した!


「そのぶよぶよな体で逃げれるとでも思ってんのかぁ? ああん!?」


しかし回り込まれてしまった! ちくしょーめ!


 ボグゥッッ!


「げほぉっっ!」


「散々手間かけさせやがって!」「馬鹿にしてくれた礼はしねえとなあぁ!」


 ドゴッ! ドボッ! ガスッ! ゴキャッ!


ぐう……ヤバイ……このままでは死ぃ……。


「おい、もう止めさそうぜ? ギルマスにばれたらやべえぜ?」


「そうだな……あばよ下膨れ……おめえの金は俺達が有効利用してやンよ!」


うう……もう意識が……ある意味……ありがたいかも知れんな……。

心残りは……最後に視界の端っこに薄っすら映るのが、凄い形相のあの熊って事だな……。


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