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第4話 服従の呪い

シグルドの背景や能力の元ネタは、ゲーム『TESⅤ スカイリム』から。

具体的には、闇落ちしたドヴァーキンをイメージしています。

「あ……ア、ル……?」


 私は呆然と呼び掛ける。しかしアルバートが私の声に反応する事は無かった。アルが……死んだ?


「い……」


 嫌だ。嘘だ。あり得ない。こんなの現実じゃない。でもそこに横たわるアルの姿は紛れもなく現実で……



「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」



 私は再度絶叫した。力の限り叫んだ。まるであらん限りに叫べば、この目の前の悪夢が冷めてくれるのだと言わんばかりに。だが勿論この悪夢が醒めることはないのだ。



「あ、ああ……アル……アルーー!!」


「くくく……心地よい声だ。今どんな気分だ?」



 錯乱しかけた私の耳に、その男の耳障りな声が反響する。その声が……私に正気と、強烈な意思を喚起させた。



「……殺してやる。お前を……殺してやる……」



 私はユラリと立ち上がった。まだ身体は先程の衝撃の余波で悲鳴を上げていたが、そんな物はどうでも良かった。どうせもう生きるつもりはない。死ぬ前にせめてこの悪鬼に一矢報いて死んでやる。


(待ってて、アル……。今、私もそっちへ行くから)

「あああぁぁあぁぁぁぁっ!!」


 私は護身用の短剣を抜き放つと、奇声を上げながら目の前の男に向かって突進した。


「ふ……いいぞ。中々いい。……『合格』だ」


 その意味深な言葉の意味を考えるつもりはない。全てがどうでも良かった。今私の頭にあるのは、こいつの心臓に短剣を突き刺す事だけだ。




『རྱུ༌ཨུ༌ནོ༌ས༌ཁེ༌རྦི༌ ནུ༌ཁུ༌རྗུ༌ཨུ༌』




 シグルドが再び奇怪な言語で叫ぶ。それと同時に私の中を何らかの未知の力が突き抜けた。先程の衝撃波とは全く異なり、それは私に直接・・の被害は何ら与えなかった。だが……


「か……あ……?」


 後少しでシグルドの心臓に短剣が到達しようかという距離で、ピタリと私の腕が止まった。勿論私自身の意思ではない。何故か身体が動かないのだ。足も前に出せない。全身が金縛りにあったかのようだ。



「今お前に、この俺に服従するという『呪い』を掛けた。お前は一切俺を害する行為を取る事が出来ん」


「……!」


 私はヨロっと後ろに下がる。その時は身体が普通に動いた。『呪い』とやらは本当らしい。


(だったら……)


 こいつを殺せないのは残念だが、それならもう一秒たりとも生きていたくなかった。今すぐアルや家族達の元へ行くのだ。


 私は持っていた短剣を自らの喉に突き立てようとした。そして……


「……ッ!?」


 刺せない。先程シグルドに短剣を突き立てようとした時と同じ現象が私を襲っていた。これあ、まさか……


「言い忘れていたが、この『呪い』は自らを害する(・・・・・・)行為も取れなくなる。お前が死ぬ事を意識して行動しようとした瞬間にも発動するのだ」


「な…………」


 私は今度こそ絶句する。死ねない? それでは……アル達の所にも行けない……?



「そ、そんな……い、嫌……そんなの、いやぁぁぁっ!」



 私はその場にしゃがみ込んでしまう。死に逃げる事も許されない……。それはまさに、文字通りの地獄であった。


「くく……自らの立場が理解できたか? それでは行くぞ。お前を帝国に連れて帰る。楽しい……非常に楽しい趣向を考えているのでな。お前も楽しみにしているがいい」


 シグルドが私を連れ去らんと、その腕を伸ばして迫ってくる。私にそれに抗う気力は残されていなかった。否、仮に残されていたとしても、私にはもうそれは許されていない(・・・・・・・)のであった。



「い、いや……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



 私に出来る事は、ただ悲痛な叫びを上げ続ける事だけだった……






 こうしてエレシエル王国は完全に滅亡する事となった。敗戦国としてエレシエルの国民や兵士らは大半が捕えられ、ロマリオンの奴隷とされた。ロオマリオンの民にとってはこの世の春。そしてエレシエルの民にとっては極寒の冬の時代が訪れようとしていた。


 そして私はシグルドによって帝国の首都ガレノスへと連行された。そこでの出来事は、この後の私の運命を大きく変えてゆく事となる…………


次回は第5話 帝都にて ~英雄の企み~


ロマリオンの帝都へと連行されたカサンドラ。

彼女はそこで皇女の不興を買い、処刑されそうになるが――!?

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