04 第一王子殿下の祝賀会
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ユーリの腕に手を添え、エスコートされながら私は馬車から降り立った。
今日のために仕立てたドレスは、薄いピンクがかったオレンジのドレスだ。
私の瞳に合わせつつ、初初しさを醸し出したとても可愛いドレスにローズクォーツをふんだんに使ったアクセサリー。
今日は、自慢の銀髪を半分流しながら複雑に編み込まれた髪が、私を少し大人びさせてみせてくれている。
はっきりいってかなり可愛い!マリーの自信作だ!
うふふと笑う私に呆れたように、
「リリィ。そろそろお城にはいるから、その不気味なニマニマ笑いはやめてよ」
「大丈夫よ。私を誰だと思ってるの。完璧なレディになるわよ!猫かぶりなら誰にも負けないわ!完璧すぎて本当に猫になっちゃう位なんだから」
胸を反らし、おほほという私を呆れたようにユーリは見つめた。
まぁ。でも、本当にちゃんと猫はかぶらないとね。
結婚なんか出来ないけど、家族に恥をかかせるわけにもいかないし、私にも侯爵令嬢としての矜持はあるのだ。
中に入ると、きらびやかな光が目をさす。
一瞬目を閉じると、えいっとユーリと大人の社会へ踏み出した。
パーティーが始まると、主役の第一王子殿下と王様が現れお席につかれた。
王様は、ブラウンの髪ととても綺麗な緑色の瞳だった。
第一王子殿下のロザリオ様は、漆黒の髪と濃い紫の瞳のとても端正なお顔をした王子様だった。。
何だかとても線の細い、でもとても硬く鋭利な雰囲気を纏われている。
その、その見目麗しいご様子に、回りの令嬢がうっとりしてる。
おおー!これが噂の王子様ハーレム!!
とニマニマ私はみていたが、令嬢達はうっとりしながらも近づく様子はない。
そっかー。あの雰囲気と、下手に近づくと権力争いに巻き込まれるから遠巻きにするしかないのかぁ。
「…ねぇ。ユーリ?」
と、隣をみるとユーリがいなかった。
…あら?
キョロキョロと回りをみると、ユーリは、少し離れた所で令嬢達に囲まれていた。
私がポヤポヤと想像している間に、いつの間にか令嬢達がユーリを誘い連れていっていたらしい。
そういえば、「リリィ!」と助けを囁くユーリの声が聞こえていたような。
「…女の戦いはもう始まっていたのね。」
そう呟くも、一人になってしまってつまらないので、軽く摘まめるものでも取りにいく。
「…つまんない。」
まだ始まってたいして時間は経っていないけれど、初めての社交会で知り合いも見つからない。両親は挨拶にいき、ユーリは令嬢達に囲まれ一人ぼっちだ。
…ダンスもはじまったのに、私の事誰も誘ってくれないし。
そう考えると何だか悲しくなる。
結婚は諦めたと思いつつ、素敵な人と一目で恋に落ち、猫でもいいといってくれる・・そんなこと、やっぱりどこかで夢見てたみたい。
クスリと苦笑すると、少し、風に当たりたくて、庭に出てみた。
王宮の庭はそれは見事で、今日は特別に夜の灯りを少し照らし、一部が解放されていた。
とはいえ、まだパーティーが始まってすぐの時間の今、庭に出ている人は私くらいのようだ。
「綺麗ねぇ」
そう言って、庭の奥までゆっくり歩く。
すると、がさがさっと茂みが揺れて、中年位の男性が現れた。
「おっと!」
と男性は私をみて一瞬驚いた顔をした後、私を上から下まで舐めるように見つめてきた。
そのあとニヤリと笑うと、
「おやとても素敵なレディですね。パーティーは始まったばかりなのに、こんな所で1人とは、待ち人来ずかな?私も待ち合わせ相手にすっぽかされたのですよ。どうぞ、ご一緒しましょ。」
そういって私に手を差し出してくるが、その目が何故か嫌な感じだ。
「風にあたりにきただけですので、結構ですわ」
そういって離れようとすると、男が乱暴に手首を掴み茂みに連れ込もうとする。
「お高くとまりやがって。相手に振られたんだろ?相手してやるっていってんだよ。」
生まれて初めてきく下品な言い種と、力強く掴まれた手に、心が驚いてすくみあがる。
「やっ!」
小さく声をだして身をよじって逃げようとする。
でも、男の力の方が強い。
・・・やだ!!
そう思って目を強く瞑ると、
「失礼!僕の連れに何か?」
そんな声がしたかと思うと、男とは逆の手を掴む男性が現れた。綺麗な金髪と、とても綺麗な緑色の瞳。
私より幾つか年上にみえる横顔はとても凛凛しい。
私を助けてくれた男性は、私を後ろに回し庇いながら、強い視線で、睨むように男をみる。
すると、男は、男性の様子から、自分より高位貴族だと思ったのか、表情をニコリと紳士風にして
「いえ。お一人で危ないと思い声をかけていただけですよ。待ち人が来られて良かったですね。」
そう言って去っていった。
「…あっ、有難うございます。」
まだ震える声でお礼をいうと、助けてくれた男性は、私の手を繋いだまま無言で歩きだした。
パーティーの会場の入り口が見える位置までくると、私の頭を軽くポンポンとしてから、さっと庭に戻っていって姿が見えなくなってしまった。
私はそんな男性の姿を呆然と見送っていると、
「リリィ!」
慌てたようなユーリが現れた。
「ユーリ!」
私はユーリに抱きついた。
「リリィ!どこに行っていたんだ。心配したじゃないか」
ユーリは私を強く抱きしめ返してくれた。
「…ごめんね。少し風にあたりたくて庭に出ていたの」
「リリィ。1人で庭に行くのは危ないよ。・・その、庭には不埒な事にふける男女もいるからあまり女性1人で行くものじゃないんだ。まだ時間が早いから大丈夫だと思うけど、中には時間を気にしない品のない人もいるから。」
…知らなかった。
つい綺麗なお庭につられたけど、そんな事もあるのね。
さっきの中年男性も、不埒なことが目的だったかと思い出すだけで身が震える。
それと同時に助けてくれた男性の綺麗な緑色の瞳と手の温かさを感じて顔が赤くなる。
そんな百面相の私を見つめていたユーリが、私の手をとった。
「リリィ!踊ろう!」
ニッコリ手を繋いでダンスホールにむかう。
キラキラと照明がかがやいて華やかな音楽が流れている。
ユーリと2人手を繋いで、ダンスホールを踊ると心が落ち着き弾んでくる。
ずっと一緒にいて、ずっとダンスレッスンも一緒に受けていたのだから息もピッタリだ。
昔は同じ背丈だったのに、今では私より頭一つ分大きくなったユーリを見上げると、ユーリの瞳も楽しそうに揺れていた。
くるくる弾むように、ニッコリ笑いあって踊ると、回りから、チラッチラツと視線と感嘆の声が聞こえる。
「あれが、アルフィルム侯爵家の双子星」
「なんて綺麗。銀の髪がキラキラと輝いて・・」
「素晴らしく美しい揃いの人形のようだ」
でも、そんな言葉は私には聞こえてこない。
ユーリと手を繋いでくるくると踊るのが楽しくて、夢中でステップを踏んでいた。
こうして、私達の社交デビューは幕を閉じた。




