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小話01 私の王子様~エリザベス視点~

私は夜会に参加していた。


3ヵ月前。

国を揺るがす大きな事態が明らかにされた。


テナン伯爵家が15年前に、魔法使いを個人的に使役しカローラ様を操りローズ様を殺害したこと。更にアレクサス殿下の暗殺未遂を再度計った事が明らかにされた。

それは、本当にショッキングなことで国中が驚いた。

我が国は、個人での魔法使いの使役は決して行ってはいけないのだから。魔法使いとは、とても貴重で尊い存在なのだ。

テナン家はそのあまりの罪の重さから、一族郎党全てに処罰が下った。実際に魔法使いを使役した当主は斬首刑となり、近親者は爵位剥奪の上、全ての財産を没収され国からの追放、他の親族も全てが処罰されるというとても重いものだった。

それは、王子様であられる第一王子のロザリオ様も例外ではなく、王位継承権も爵位も無くし神殿へ入られる事がきまった。


ただ、カローラ様の身分だけは一部回復され、王家の墓へは入れないものの捨て置かれた墓場から、陽当たりのいい墓場へ移される事が決まった。


そんな凶事が明らかになり、国中がひっくり返る騒ぎとなった。


しかし同時に慶事として、アレクサス殿下が完全に体調を回復されたことも発表され、正式に王太子として立太子された。

さらに、このたび、アルフィルム侯爵家のリルアーナ様との婚約も正式に発表され、これでこの国の混乱が落ち着き、安泰だと国中が喜びに沸いた。


そんな中、ひっそりともう1つ処罰された家があった。

我がハンガリン公爵家だ。

事件発覚の半年前よりテナン家と近づき、ロザリオ様を王太子とするため、権力を使い強引に政権に割り込み、国家を混乱にもたらした罪を問われた。

ただ、当主である父が素直に罪を受け入れた為それほどの罪にはならなかったが、父は爵位を兄に譲り引退した。

ハンガリン公爵家は、爵位こそ公爵家のままだが、その権力的地位はほとんど無くなり今に至る。

もちろん、私とロザリオ様の婚約の話も立ち消えた。


そんな没落寸前のハンガリン公爵家に近づく者はいなくなり、今までチヤホヤと持ち上げていた者達は皆去っていった。


ため息をつく。

そんな居心地がよくない、夜会だけど、今日はアレクサス殿下とリルアーナ様の正式な婚約式だ。

大好きなリルアーナ様の晴れの姿を陰ながらお祝いしたくて参加した。

それに、きっと今日はユリウス様も参加されるはず。


ユリウス様。


お名前を囁くだけで、胸がドキドキする。

リルアーナ様と親しくさせていただくようになって、ユリウス様とも多少お話出来るようになった。

ユリウス様は初めに思っていたような優しい王子様じゃなかった。

でも、いいかたは厳しいけど、人を見下すような事は絶対なさらないし、とても優しい方よ。

それにお姉様のリルアーナ様をとっても大事にされてる様子が素敵なの。


嫌いだとはっきり告げられたし、バカとも言われたわ。

でもいいの。

私のことを見つめて下さってほんの少し笑って下さった日のことは私の宝物だもの。


どうしてこんなに好きなのかしら?

一目惚れしたくらい見た目も大好きだけど、きっと嘘をつかないその真っ直ぐな所がもっともっと好きになったの。


でも、もう近づいてはいけないわ。


アルフィルム侯爵家は、将来の正妃様の生家。

今まで権力争いからは一歩引いた家柄だったけど、今や一番の注目株よ。

その次期当主であられるユリウス様には、毎日引きもせず婚約話が舞い込んでいるらしい。


そんな話を聞くだけで、いつ婚約されてしまうのかと恐怖を覚え、他の令嬢がユリウス様の横に並ぶ事を考えただけで嫉妬で狂いそう。

でも、今一番評判の悪いハンガリン公爵家の娘が近づいたら、ユリウス様の迷惑になる。

ユリウス様の迷惑になることだけは嫌!


今日は絶対、ユリウス様の周りをうろうろしない!

絶対、ユリウス様に突進しない!

私は何日も前から何度も何度も言い聞かせて、この夜会に参加したの。


だって、ユリウス様のお姿を見ただけで、フラフラと光に群がる羽虫のように寄っていってしまう私ですもの。

今日は、絶対、離れた位置で、お顔だけをみるのよ!


本当は心配なの。

アレクサス殿下の祝賀会で、一瞬みせたユリウス様の寂しそうな迷子になられたような瞳が。

きっと、あれほど仲のよいご姉弟だもの。複雑な思いがあるのよね。

私に何か出来る訳でも、リルアーナ様の代わりになれるわけでもないけれど、今日、正式に婚約なさるお二人をみて、やはりあの寂しい瞳をされるのかと思うといてもたってもいられなかったの。

だから、少しだけでもお元気な姿を見たくて、参加したの。



「あーら。エリザベス様。どうしてこのような所へ?」

夜会が開始してすぐ、私の元へはそんな嘲笑が飛んできた。

ペンス侯爵家のミリア嬢・・・嫌がらせ大好きな嫌な奴。

「今日はおめでたい日ですのに、犯罪者の方が参加されるなんて信じられませんわ。さすが、ロザリオ様の婚約者を狙いながら、ユリウス様も追いかけ回す節操のない方は、違いますわね。」

ミリア嬢の言葉に、顔が朱に染まる。

今まで、ハンガリン公爵家の権威に怯え噂されていなかったが、今や自分の評価がそうなっているのかと愕然とする。

周りの令嬢が、嫌な笑みを浮かべて同意する。


そこにいた令嬢の半分は、つい先日まで自分の取巻きだった令嬢達だ。

面白可笑しく私のユリウス様への行動を噂されたのだろう。


本当に、私は、駄目な令嬢だわ。

自業自得の隙をみせてしまった。

でも、さすがに何か一言言い返してやろうと思った時、


わぁと入口が賑やかになる。


・・ユリウス様!


遠目でも分かる、照明をキラキラ反射させて輝く銀色の髪。


「邪魔よ!さっさと帰りなさい。」

「犯罪者の娘が馴れ馴れしく近づいて、ユリウス様にご迷惑かけないようになさいな。目障りなのよ!」

口々に私を罵ると、ドンッと突き飛ばして、ミリア嬢達がユリウス様目指して歩いていく。


私は、さっと、陰に隠れて、ユリウス様を見ていた。


あぁ。良かった。

前の祝賀会の時より落ち着いた瞳をされているわ。

リルアーナ様の事を受け入れて前を見つめていらっしゃる瞳に私はまた改めて恋をしてしまう。

つい、フラフラとユリウス様に突進しそうになる足を必死で抑える。

駄目よ。

カーテンを握りしめて、必死で自分を抑えた。


でも、目で追うのはどうしてもやめられなくて、ユリウス様の周りで頬を染めて笑う令嬢達が羨ましくて、カーテンを握りしめる手が真っ赤になっていた。


夜会は、素晴らしいものだった。

最近の嫌な雰囲気を一掃するかのように、華やかで、贅をつくしたものだった。

手をとりあって登場した、アレクサス殿下とリルアーナ様は本当に仲がよさそうで幸せそうに見つめあっている。見ているだけで、うっとりしてしまう美しさだ。王様も目尻を下げるようにお二人を見ていらして、王がとてもリルアーナ様を気にいっているとの噂は本当だったのだと皆が納得した。

更に、アレクサス殿下の祝賀会で、アレクサス殿下がリルアーナ様に一目惚れし情熱的に愛を向けられていた姿は、今や、社交界では乙女達の憧れとなっている。

王子様に見初められ、情熱的に愛される。そんなまるで夢物語のようなお二人の姿を令嬢達がうっとりとみつめていた。


私も幸せそうなリルアーナ様をみて、心が温かくなる。

おめでとうございます。カーテンの陰から呟いた。


夜会は一層盛り上がっている。

以前は、19時前には退場されたアレクサス殿下が19時を過ぎてもお元気そうな姿をみせていて、周りの人達は、アレクサス殿下が本当に全快されたのだと噂していた。


私はそろそろ帰ろうかとカーテンの影から出る。

お元気そうなユリウス様とお幸せそうなリルアーナ様の姿を見れたもの。十分だわ!


ゆっくりと出口に向かっていると、

「エリザベス様!」

なんとリルアーナ様が私を見つけ、声をかけて下さった。


ヒソヒソと周りが噂しているのがわかる。


私は慌てて礼をとりながらも、リルアーナ様の悪い噂になるのではないかと焦っていた。

「ユーリの近くにいらっしゃらないから、今日は欠席されたのかと思ったわ」

ニコニコと話しかけて下さるリルアーナ様に、慌てて、そっと、

「リルアーナ様。本日は本当におめでとうございます。お幸せそうなお姿をみれて嬉しかったですわ。でも、その、私はあまりいい噂がありませんから、あまりお近づきにならないほうが・・」

私がそう言うと、リルアーナ様は私の手を握った。

「エリザベス様。ハンガリン公爵はご自分の罪を潔く認め責任をしっかりとられたわ。こちらが引き留めても、きちんとご自分を律された。もう十分責任をとられたのよ。」

そういって下さる言葉に涙が浮かびそうになる。


横にいらっしやったアレクサス殿下もとても優しく

「エリザベス嬢のことは、リリィから聞いているよ。これからも仲良くしてやって欲しい。」

そういって、私に笑いかけて下さった。


お二人の優しさに、胸がいっぱいになり、お礼をいうのが精一杯だった。


そんなお二人から離れた瞬間、私は、腕を引っ張られ、会場の隅に連れていかれていた。

取り囲む令嬢達の真ん中でミリア嬢が、私を睨む。

「さっさと帰るように言ったでしょ?殿下達に近づくなんて、なんて図々しいの」

そうよそうよ!と周りの令嬢が同意する。


「本当に、図々しくて身の程知らずにも程があるわ。殿下やリルアーナ様はお優しくて同情されているんでしょうけど、目障りで仕方ないわ。」

そういうと、私のドレスの胸あたりにワインを溢す。


「あら!ごめんあそばせ。手元が狂ったみたい。みっともないからさっさとお帰りあそばしたら?」

そういって哄笑する。

周りもみっともないわ。恥知らずにはお似合いね。等といいながら笑っている。


私はあまりにも惨めな自分の姿が悔しくて、ドレスを握りしめていた。

泣くもんか!

こんな奴らのために、泣いてなんかやらないわ!

それだけが、私の矜持で出来ることだった。

そう思って、歯を噛み締めていると、


「・・何してるの?」

そんな冷たい声が聞こえてきて、はっとする。


私を囲っていた令嬢達が慌てて、顔を作っているのがわかる。


「ユリウス様。エリザベス様がワインをひっくり返されたようで、皆で心配していたのですわ。」

ミリア嬢が、先程とは一変した優しい声音でユリウス様に話しかける。


「はしたなくも、もう酔われてしまったのですって。ですからもう今からお帰りになるそうですのよ。私達もあちらに行きましょうよ。」

そう言うと、ユリウス様の腕にそっと自分の手を添えて、うっとりとユリウス様を見つめる。


ふーんと興味なさそうに、ユリウス様は私を見る。

ワインで胸元に染みがある自分のみっともない姿が悲しくて、恥ずかしくて、我慢していた涙が浮かびそうになる。


すると、

「て、いうかさ。僕に馴れ馴れしく触らないでくれる?」

そう冷たくミリア嬢にいい放つユリウス様の声が聞こえた。

「なっ・・!」

ミリア嬢が言葉を失う姿が見える。


ミリア嬢の腕を振り払うと、ユリウス様が私の前に立つ。

「みっともない姿。」

ユリウス様にこんな姿を見られ、みっともないと言われて羞恥で顔が赤くなった。

すると、

「みっともないから、これでも付けておきなよ。」

そう言うと、ご自分の胸元に飾っていた花を私に差し出してくれた。

私があまりにも驚いて、受けとれないでいると、

「僕があげるものいらないの?」

そう言われるので、慌てて受け取って、ワインの染みの部分に花を飾る。まだ少し染みはあるけれど、お花のお陰でほとんど目立たなくなった。


「あっ、有難うございます。。」

私がお礼をいうと、

「別に。ダンスの相手があまりにもみっともないと恥ずかしいからね。」

そんな事をいって下さる。


ダンスの相手?

私はぽかんとユリウス様を見つめる。


「何?僕が相手だと不満なの?」

そんな事を言われて、首をブンブンと振る。

「じゃあおいでよ。」


そう言うと、私の手を引っ張ってダンスホールに連れ出される。


周りが驚いたように私とユリウス様を見ていた。


「あの!ユリウス様。私は、今本当に評判が悪くて。このままでは、ユリウス様にも悪い噂がついてしまいます。」

私は、ユリウス様の迷惑になるのが嫌で必死で訴える。


「別に。ハンガリン公爵は、きちんと責任を果たした。言いたい奴には言わせておけば?」

そんな言葉に涙が浮かぶ。


「この前の殿下の祝賀会で、少しだけ借りをつくったから返してるだけ。だから気にしなくていいよ。」

そういいながらステップを踏むユリウス様にあわせ私もダンスを踊る。


借り?

何の事かはよくわからないけど、ユリウス様とダンスを踊っている事実に私は天にものぼる気持ちになる。


ずっとずっと夢見ていた。

一度は、ロザリオ様の婚約者になるのだからと諦めた。

次は、自分が近づくとユリウス様の害になるのだと諦めた。


それでも、ずっと、ユリウス様とダンスを踊ることを夢見ていた。

今、それが叶っているんだ!


私は、嬉しくて涙が滲むのを止められなかった。


「ダンス中に泣かないでくれる?僕が泣かせてるみたいじゃないか」

そうユリウス様に言われるけど、

「はい。すみません。でも、嬉しくて。あまりにも夢みたいで、嬉しくて、、」

言葉も続かない私の様子に、にユリウス様は

「なにそれ」

そういって呆れたように笑った。


ダンスが終わると、リルアーナ様も心配そうに近づいてきた。

私の胸元にユリウス様の花が飾ってあるのを見ると、全てを理解されたようで、

「ユーリ。やるじゃない」

そういって楽しそうに笑った。


※※※


それからは、少しハンガリン公爵家への風向きがかわった。

王妃になられるリルアーナ様と、今後政治の中枢を担っていくだろうアルフィルム侯爵家次期当主のユリウス様。そのお二人と私が親しい間柄との噂が広がったのだ。

少しだけハンガリン公爵家への風当たりは軽くなり、明らかな侮蔑は減った。


その風向きの変化を利用して、当主となったお兄様は、今必死に、家の立て直しを計っている。


私は、あの日いただいた花を押し花にして宝物にしている。

ユリウス様は、あの日以降も変わらず、周りに集まる令嬢達に冷たい態度をとっている。


私にも、相変わらず「嫌い」とはっきり言われるので、やっぱり私は嫌われているらしい。


それでも、夜会では時々ダンスを誘って下さるようになった。

時々、呆れたように笑って下さるようになった。


そして私はますますユリウス様が好きになってしまって、諦めきれず、ユリウス様の周りをうろうろしているの。


大好き。私の王子様ー。


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