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02 侯爵家

部屋に戻るとすぐベッドに横になったが、やっぱり朝起きられず寝坊してしまった。

ふぁっとお行儀悪く欠伸すると、私の身支度を整えてくれている侍女のマリーが、嗜めるような目でみてくる。


・・だってまだ眠いんだもん。


マリーは、テキパキと私の銀色の髪を綺麗に編み込んでリボンで飾ってくれる。満足そうに、私をみて、

「リルアーナ様、出来ましたよ」

その言葉に、うとうとと目を閉じていた私も鏡をみた。


鏡にうつっていたのは、光るような銀色の髪を綺麗にまとめ、灰色がかったピンクの瞳の14歳の人間の私。

「とってもお綺麗ですよ」

マリーが目を細めて誉めてくれる。

うん!絶世のとはいえないけど、ぱっちりとした瞳に少し小さなふっくらした唇。我ながら、なかなかの美少女だと思う!


にまにまと鏡をみてると、

「まぁ。見れなくはないんじゃない?」

そんな可愛くない言葉が聞こえた。

「ユーリ!」

私はジロリと、微妙な言葉を放ち部屋に入ってきた男の子をみつめた。

男の子は、私と同じ綺麗な銀色の髪、でもその瞳は私と違って深い藍色だ。でも顔立ちはとてもよく似通っている。

それは当然だ。ユーリは私の双子の弟だもの。


ユーリは、手を振ってマリーを部屋の外へ下げると、私の横にヨイショと座った。

「で、昨夜はどこにいってたの?」


ビクンと私の肩が揺れた。

「…気づいてたの?」

そう問う私に、

「昨日あまりに綺麗な月だったから、バルコニーから庭をみてたら、銀色のおかしな猫がひょこっと現れ、てってけ走って庭を出ていく所がみえたからね。」

「おかしな猫とは何よ!」

猫の私はとっても毛並みのいい美猫なんだからー!

ぷんぷんしてると、真面目な声でユーリが言った。


「リリィ、猫の姿の時は外に出ないで。外は危険がいっぱいだ。猫の姿で事故にあったり誰かに拐われたりしたらどうするんだ」


その言葉に反論しようとして、ユーリをみると、真剣に心配している瞳がそこにはあった。

私はコツンとユーリのおでこに自分のおでこを合わせた。

「ごめんね。心配してくれたのね。でも、人のいる所には行かないし、絶対に危ないことはしないわ。」

私をじっと見つめてため息をつくとユーリは言った。

「本当に危ないことはしてないね?」

私は強く頷いた。

変な蛙はいたけど、危険ではないもの。

昨夜のアローとのことは内緒だ。あんな林まで行ったとバレたら夜絶対出してもらえなくなる!

だから、例えユーリにでも話せない。

でもユーリに内緒ごとなんて初めてなんだけど、上手に隠せてるかしら?

私を更にじっと見つめて、深く深くため息をつきながらユーリはガシガシ頭を掻いた。


「リリィが僕に隠し事をするなんて!」


あら?やっぱりユーリはすぐわかるのね。

「ユーリ。本当に心配いらないわ。だから、昨日私が抜け出したことはお父様達には内緒にしてね?何かあったら、一番に相談するから。」

ユーリに抱きつきながらいうと、更に大きなため息をつかれた。


朝起きるのが遅かったので、ユーリと一緒に少し早目の昼食をいただき、紅茶を楽しんでいると、お父様とお母様が帰ってきた。

私とユーリを見ると抱きしめて、頬にキスをしてくれる。


「お寝坊さん。やっと起きたのか!」

お父様の言葉に、えへへと誤魔化す。


「ちょうど良かった。2人に話があるんだ。」

お父様はそういうと、手紙を出してきた。

「第一王子殿下の20歳の祝賀会が今度あるんだ。ここに招待状もある。来月には2人は15歳で大人の仲間入りだ。これを2人の社交デビューにしようと思うんだが。」

社交デビュー?初めてのパーティー?

お父様の言葉に私は目を輝かせる。


「・・お城は落ちついたんですか?」

ウキウキとしだす私と対照的にユーリは心配そうな声を出す。

その言葉に私はハッとした。

そうだ。今お城というか貴族社会は真っ二つに別れている。


原因は、2人の王子殿下のどちらが王太子となるかまだ決まっていないのだ。


※※※

王様には正妃様とお一人の側妻様がいた。


王様と侯爵家出身の王妃様はとても仲睦まじかったのに、なかなか王妃様にはお子様が出来なかった。

そこで王様は公爵家の令嬢をお側にあげられた。その側妻様はすぐに無事ご懐妊されたが、なんと側妻様の懐妊からそれほど時をあけずに、正妃様もご懐妊されたのだ。


側妻様の子供ではあるけれど、第一王子殿下のロザリオ様と、その半年後に生れた正妃様の子、第二王子殿下のアレクサス様。

どちらも幼い頃からとても優秀で、どちらが次の王様になってもおかしくなかったが、当時は、第二王子殿下が優勢だと言われていた。

なぜなら、王様が溺愛されていたから。

王様は側妻様もその息子も大切にされていたが、やはり、正妃様を誰よりも愛されていたため、その息子であるアレクサス様の事を溺愛されていることは誰の目にも明らかだったらしい。

そんな時事件が起きる。

側妻様がアレクサス様の暗殺を図ったのだ。それがどんなものだったのかは知らされていないが、その時アレクサス様を庇った正妃様は亡くなり、アレクサス様も大きな怪我をされて滅多に公式の場に出なくなった。

側妻様は身分剥奪の上、森の奥の塔に幽閉されたが、数年後には狂われたままお亡くなりになった。


これらの事件が堪え、王様はそれ以降新しいお妃様をお側に置くことはなかった。

そのため、次の王様は、二人の殿下のうちのどちらかなのだが・・


本来であれば罪を犯した側妻様の息子である第一殿下には、もう王になれる機会などないはずだった。が、何故か、第二王子が滅多に公式の場に出てこない。大きな怪我をしてどこかに不自由が残ったとも噂されている。

そんな公の場に出れない状態で、国を支える王になれるのか?

それなら、もう次の王になるのは、第一王子殿下しかいないのか?

いや、罪を犯した妃の王子が王になるのはいかがなものか?

それなら皆で支えて第二王子を戴こう!

いや、しかしそれでは王が弱くなり、側近や後ろ楯が力を増し国が荒れる原因となってしまう・・・

そんな様々な意見と思惑で、今、国は割れている。


※※※


そんな王家の事情を思い出していたら、


「この祝賀会は妃選びですか?」

そんなユーリの言葉にはっとする。


お父様は、顎に手をやり、

「この祝賀会で第一王子殿下に、有力な婚約者を見つけたい元公爵家の思惑はあるんだろう。」

そう頷いた。

本来なら第一殿下の後ろ楯である元公爵家は、側妻様の独断と判断されたものの権力は根こそぎなくなった。爵位も公爵家を剥奪され、なんとか伯爵家の名を残すのがやっとであった。

なんとしても第一殿下を王にし返り咲きたいのだろう。

そのためにはロザリオ様にはしっかりした後見が必要だ。


しかし、そんな複雑な思惑が絡まって、二人の殿下にはまだ婚約者はいなかった。


そこで、国中の有力貴族令嬢を集められるこの機会をチャンスとしたいのだろう。


まぁ、猫の私には婚約なんてあり得ないし、関係ないけどね!

にゃん!にゃーんだ!


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