第三十ニ章 どきっ!!世界は残酷!!
「大丈夫ですか♪」
顔を上げると見慣れた仮面をつけた男がいた。
「ミラ・・・!!」
私を助けてくれたのはどうやらミラだったらしい。
私がもともといた場所を見ると、花水木が植えられた陶製の植木鉢が粉々になっていた。
・・・・・あれがあたってたら死んでたな。
「ありがとう、ミラ。」
「いえいえ♪あなたは僕の唯一の友人で唯一の主人ですから♪」
ミラから離れて振り返ると、ハナミズキが何度も瞬きを繰り返しながらこちらを見つめていることに気が付いた。
「ハナミズキも、ありがとう。」
「あ、ああ・・・・。」
ハナミズキの瞳がゆらっとゆれると、透明ななにかが瞳に膜をはった。やがて、それは決壊し、ぽろぽろといくつもの雫があふれ出した。
あふれる涙もそのままに、ハナミズキはこちらに手を伸ばし、生きていることを確認するかのように私の体をぺたぺたと触ったあと、痛いほど強く私の体を抱きしめた。
「ほんとうに・・・よかった・・・。タウチが死んじまうかと思った・・・・。」
「ごめんね・・・・。私、不運だからさ・・・。こういうこと結構あるんだよ・・・。」
「・・・・・ところでオウジサマ♪」
しばらくされるがままにしていると、ミラがハナミズキに話しかけた。
「なんだ?」
「お手紙ですよ♪」
ミラが手紙を差し出すと、ハナミズキは私から体を離して手紙を受け取った。
「・・・・なんだ・・・・?」
手紙はキジのえがかれた薄い黄色の便せん・・・・和紙かな?に包まれていた。
デザインといい、紙の質といい、明らかにミズキからの手紙ではない。でも、それ以外からって・・・・?
「誰から受け取ったんだ?」
「鷹から♪」
伝書バトならぬ伝書鷹・・・?
「まぁ、開けてみれば?」
「・・・・・・・ああ。」
ハナミズキは便せんから警戒するようにゆっくりと手紙を出した。私の方向からはなにが書かれているのかわからない。でも、
「・・・・・・ハナミズキ?」
もともと肌の白いハナミズキの顔色が真っ白を通り越して、真っ青になってゆく。
「・・・・帰らなきゃ。」
「どうしたの?」
「俺、ミズキに帰る。」
「なにが書いてあったの?」
手紙をのぞき込もうとしても、ハナミズキは頑なに見せない。
「教えてよ!」
「だめだ。」
「なんで?」
「お前には教えられない。本当にごめん。お前はこんなことに関わるべきじゃない。」
なっ・・・!!!こっ、これでも・・・
「あと、婚約は破棄だ。賠償はできそうだったらする。」
も、もしかしてあの手紙・・・!!浮気相手からとか・・・!!?なぬっ!!最低だ!!!
「ミラ!!」
「はぁ~い♪」
「あ、ちょっ、お前!!」
ミラはハナミズキから手紙を奪うと、私に差し出した。
「ありがとう!」
人の手紙を見るなんてちょっとアレだけど・・・ええい!!浮気するハナミズキが悪いんだ!!
「おい、見るな!!!」
へ王ノ木水ルナ愛親
省冠
ス告布戦宣ニ国ノ木水、国ノ木目ガ我
々草
木目
「・・・・・・・・・!!」
右から左に読むのなんて慣れてないから一瞬わからなかったけど、宣戦布告だ。しかもメギからの。
「・・・・・・だから見るなっていったのに。・・・・こんなこと、お前が知ってもどうにもならない。」
・・・・・・・・。
「タウチと俺との婚約は破棄。ただの同盟国だ。いや、同盟も破棄だ。ハナミズキとモクレンにはなんのかかわりもない。だから援軍もいらない。」
「でも、それじゃあ・・・
「どっちみち結果なんてほぼわかりきってる戦争だ。そんな戦争にほかの国まで巻き込むわけにはいかねぇよ。とくに、モクレンはな。」
メギは降伏を許さない。降伏したものは皆殺し。負けたものも皆殺し。戦争を戦い抜いて生き残った者のみがメギの国民となり、多額の賞金を将軍から賜ることができる。それに身分や金などは一切関係ない。王族だろうが、ホームレスだろうが降伏するか負けるかすれば殺される。
・・・・・少なくとも、戦争は王が死ぬか降伏するまで終わらない。降伏は絶対にしないだろう。なぜって王が降伏した場合、メギは国民全員が降伏したと判断して問答無用で国民を皆殺しにする。だから、ミズキさまに残された選択肢は・・・勝ってメギごと潰すか負けて殺される・・・それしかない。失礼かもだけど、勝つことはほぼありえないだろうから・・・・ミズキさまは・・・・。
「じゃあな。」
ハナミズキは魔道具を使ったのか、一瞬にして姿を消した。
「ハナミズキ・・・・・。」
なんで・・・メギは突然ミズキなんて・・・・。
「タウチさん。」
ミラは黙って私の肩を抱くと、やがて優しく背中を撫でだした。
なぜだか、今はそんな優しい行動すらもなにもできない私を責め立てているように感じた。




