***の日記・憧
義父はよく笑う優しい人・・・というのは前書いたか。義父が義母を時々見つめている、というのも。でも、義父は・・・母だけでなく、どこか遠くを見つめる。そこがどこなのかはよくわからないが、懐かしむような慈しむような独特の目。私は、その時の義父の目が嫌いだ。義父が遠くにいってしまうような気がして。義母へ向ける目は好きだ。いつもは冷たく冷静な瞳がその時だけ優しくて温かい色に染まるその瞬間がとても好きだった・・・・・でも、なぜだか寂しかった。
いくつのころだっただろうか?義父が手紙を書いているのをみかけた。義母はともかく、義父のそんな姿は珍しかったので、思わずかけよって誰に書いているのか尋ねてしまった。すると義父は例の懐かしむような慈しむような独特なあの目を一瞬だけどこかに向けたあと、優しい口調で答えた。古い友人に書いているのだと。古い友人とはどんな人なのかと尋ねると、義父は静かに微笑んで私を膝に乗せた。そして、私の背を優しく叩きながら子守歌を口ずさみはじめた。幼いながらに誤魔化されたなぁ・・・とわかったが、父の温かい膝と優しい声で私はすぐに眠ってしまった。起きた時には布団に寝かせられていて、近くに義父はいなかった。だが、布団には父の香り・・・・サンダルウッドの甘い香りが仄かに残っていて私は義父に包まれているようななんだか幸せな気分になった。
今でも父の古い友人が誰なのかはよくわからない。義母に聞いてもにっこりと笑みを浮かべられるばかりでなにも答えてくれなかった。
・・・・・・そういえば。一回義父に「どこにも行かないで。」とお願いした気がする。その時も義父は静かに微笑むばかりでなにも答えてくれなかった。
ああ・・・・考えてみれば、義父は私に対して愛情なんか少しも抱いていなかったのかもとすら思えてきた。本当は義母のそばにいたいがためだけに・・・・いや、違う・・・・きっと違う。そんなことはない、義父は私を愛していた・・・・そう信じていよう。そうでなくては私は壊れてしまう。たしかにあの人は私に対して親としての愛を抱いていた。親としての愛は抱いていた。実の子のように大切にしてくれていたし、ちゃんと叱ってもくれた。
・・・・・・本当に、なんて優しくてなんて残酷な人だろう。どうして一回も、愛しているといってくれなかったのだろう。どうして一回も私を突き放さなかったのだろう・・・。
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あぁ、この娘はもしかして♦




