第十二章 どきっ!!さよなら主人公!!
「じゃあ、またな!!」
ミズキさまが手をふって見送りにきてくれた。
「さようなら!ありがとうございました!また、来ますね!!」
「ああ!待ってるぜ!!」
あれ?そういえばハナミズキが・・・・
「うがぁあああああ!!!!」
「ぎゃああああああ!!!!」
く、熊がきたぁ!!!!!
「おう!ハナミズキ!おめぇもちゃんと来たか!」
ん?ハナミズキ?
「・・・・着ぐるみじゃん。」
頭の部分だけが異常なまでにリアルな着ぐるみだ。
「ちっ、ばれたか。」
いや、ミズキさまのおかげだけど・・・。
「じゃあな!タウチ!また会おうぜ!!」
「そうだね!」
見送りにきてくれた二人に手をふりながら、スノウさんとミラと一緒に馬車に乗り込む。
そういえば私、舞踏会でのハナミズキとのダンスが終わってシャワーを浴びた以降の記憶がすっきりさっぱりないんだよねぇ・・・。ハナミズキに聞いても逆に「あのあと大丈夫だったのか?」って聞き返されるし、ミラに聞いてもなんか濁されるし、スノウさんに聞いてもにっこり笑われる(なんか無駄に威圧感あって怖い)だけだし、ミズキさまには恐れ多くて聞けないし・・・・。本当になにがあったんだろ。
「さよーならー!!ありがとうございましたー!!
* * * *
「えっと・・・おひさしぶり・・・です・・・ヤマユリさま・・・。」
き、緊張するー!!ミズキさまとは違う意味で緊張するー!!なんだかこの方、神々しいんだもん!!ユリぐらいの大国の女王となると、なんか違うのかなぁ・・・。それとも私とミズキさまがなんかいろいろ変なだけかなぁ・・・。私は・・・・まぁ、根本的にいろいろダメだし、ミズキさまはもはやヤンキーだもんなぁ・・・。
「ああ、久しいな。タウチザクラ。元気に過ごしていたか?」
「はい・・・。」
うー・・・なにを話せばいいんだろ・・・。
「新しい使用人を雇ったのだな。名はなんという?」
「はい。こっちが、スノウさんで・・・
「以後お見知りおきを・・・ククッ。」
「こっちが、ミラビr
「ミラです♪よろしくお願いします♪女王陛下♪」
また遮りやがったこの野郎!!!
「こちらこそよろしく頼む。しっかりタウチザクラを支えるのだぞ。」
「ええ。もちろん。」
「は~い♪」
ちょっ、ミラ!!
「それにしても・・・スノウか・・・・。」
ん?どうしたんだろう?
「本物かは知らないが、本物だとしたら・・・・心強い味方を持ったな。タウチザクラ。」
「え?あ、はい?」
なんのこっちゃ。
「来てもらって早々にすまないが、そろそろ舞踏会が始まる。存分に着飾って楽しんでくれ。」
「はい。」
またミラにお願いするしかないなぁ・・・。服は全滅だから、今の洋服すらミラに出してもらったものだし。
* * * *
「・・・・・・・・。」
壁の花、その名はタウチザクラ・モクレン。誰も話しかけてくれなければ、誰も目すら合わせてくれない。ダンスなんて一回も誘われていない。実は何回か優しそうな人にお誘いをかけてみたが、すべて断られた。
あー・・・・スノウさまは・・・いない。また抜け出してるのかなぁ。
「踊りませんか♪お嬢さん♪」
つ、ついに私にもダンスのお誘いが!!!
「・・・・なーんだ。ミラか。」
さっきまでなんか賭け事してたのに消えたと思ったら。
「ミラはいいよねぇ・・・。引く手数多でしょ?仮面をつけてるとはいえ、イケメンだもんねぇ・・・。」
私なんかもう、壁の花となってユリの美味しいお菓子をむさぼるだけ・・・。むしゃむしゃ。・・・・案外楽しいかも。
「あ、タウチちゃん。」
「あぁ、ヒメユリさん。」
我が麗しの幼馴染は軽く手を振り、こちらに微笑みかける。
「ひさしぶりだね。元気にしてた?」
「うん。ヒメユリさんは・・・変わらず元気そうだね。」
「うん。じゃ、ばいばい。」
そういってヒメユリさんはたくさんのお客さんのなかに消えた。
ヒメユリさんは私のことを嫌っているわけではないけど、無関心だ。私としてはもう少し仲良くしたいけど、どうしてもきっかけをつくれない。
「なんだかとっても薄い仲♪」
「悲しいなり・・・。」
私はユリにまったくと言っていいほど「まぁ、親しいかな?」という人がいない。いや、他の国にも全然いないけど、ミズキとかに比べるとね?・・・・にもかかわらず、どうしてユリに守ってもらえているかというと、ひいおばあちゃんだか、おばあちゃんだかがユリの女王さまと仲良しだったからだ。ま、最近は関係も希薄になってるんだけどね。その代わり、ミズキと仲良くなれてるから・・・まぁ、しばらくは安泰かな?ミズキはユリほどの大国ではないけど、いわゆる中堅国。安定してるし、ほとんどの国は逆らおうと思わない。ユリとかメギとかヒガンバナだと話は別だけど、ユリは平和主義、ヒガンバナは前王が死んでから少しずつ衰えてきてるから戦争をふっかけてくる可能性はあんまりない。メギが唯一の不安要素かな・・・。
「はぁ・・・。もう部屋に戻ろっか。」
「え~♪いいんですかぁ♪」
「いいよいいよ!!もう帰ろ!!」
あーあ、ヒメユリさんと仲良くなりたいなー!いい子っぽいもんなー!!!
「はーぁい!!みーなさぁーん!!」
突如、舞踏会のホール全体に聞き覚えのあるかわいらしい声が降り注ぎ、南国を思わせる怪しげな音楽が流れ始める。
あたりを見回してみると、その声の主は空中ブランコにのっていた。
「わぁっ!!クレマチスちゃんだぁっ!!」
思いのほか響いた私の声にクレマチスちゃんは天使の微笑みを浮かべながら手を振った。
彼女は・・・いや、彼は天使の歌声と天使の外見を持つ男の娘!本当にかわいんだよね!!大ファンなんだ!!!
「明日、一番星が輝きはじめるころ!」
ロゼ・ロードンだ!・・・・・今代のロードン家当主はなぜか演劇とかじゃなくてサーカスに凝ってるらしいよね。なんでサーカスなんだろ。
「ローゼン歌劇場にて♡」
ぐへっ!クレマチスちゃんやっぱ天使!
「ロゼ・ロードン、クレマチス・センニンソウ・ルレザン、シレネ・ユリ、オダマキ・ヤドリギの四人で、」
オダマキさんだ!あの人、あんま人形をつくらないけどよく本当に綺麗な絵をかいてるよね。絵自体は市場にまったくといっていいほど出回らないから当然持ってないけど、むかしあの人の画集買ったなぁ・・・。
「パンドラサーカス、開幕よ♪」
シレネさまじゃん!!なんだかんだで会ったことがないけど、写真の通り本当に美男子なんだなぁ。
クレマチスちゃん以外の三人ももちろん空中ブランコに乗っている。しかも、末恐ろしいことにシレネさま以外は自分が話していないときはくるくると回りながらぽーんぽーんとブランコからブランコへと飛び交っている。シレネさまはジャグリングをずっとしながら皆に笑顔を振りまいている。
「「「「「うぉおおおおおおおお!!!!!!!」」」」」」
しらばく会場に降りていた沈黙を破り、歓声と拍手が巻き上がる。
「わー!!!観たいなぁっ!!!ね、明日の夜まで残ってようよ!!」
たしか明日の朝早く出る予定だったけど、いいよね!!少し遅くなるだけだし!!それにしてもロゼが他の四大貴族も巻き込んでサーカスばっかやってるって噂本当だったんだなぁ。
「・・・・やめておいたほうがいいのでは♪」
「え。」
なんでさ!!
「貴女があのサーカスになんぞいったら、きっとすぐにあのサーカス団に魅入られてしまいますよ♪」
「私がサーカスに?なんで?」
普通逆じゃ?サーカス団の人たちはお客さんのことなんざ見てないでしょ。
「あのサーカス団は私たちに観せているわけではなく、私たちを見ているのですよ♪ほら、今だって♪」
ふと視線を感じて、顔をあげてみる。だが、特に誰かと視線がぶつかったりはしなかった。気のせいかな?
「あれらはずっと探しているのです♪パンドラの箱を♪」
・・・・・ん?なんの話だろう。急にとんだ気がする。
「狂いたくなければ行かない方がいいと思いますよぉ♪」
「いや、狂いたい人なんていないって。でも狂うこととサーカスなんてどこに関りがあるのさ。」
「あるんですよ♪」
はぁ・・・?よくわからない。
「皆様のご来場をお待ちしております!」
ロゼの声がホール中に響き渡った瞬間、色鮮やかなちょうちょたちが一斉に舞い降りてきた。私の上にも・・・・
「な、なんか蝶が大挙してこっちにきてない!?」
「あら、本当♪」
え、いや、ちょっ、助けてよ!!
「燃やしますか♪」
「え、それはちょっと・・・:。」
ちょうちょが燃えるのはあんまみたくないし、それにあれが燃えたままこっちに突撃してきたら困るよ。困るっていうか、たぶん死んじゃうよ。
「どうにかして追い払えない!?」
「難しいでしょうねぇ♪」
「じゃあ、私を逃がしたりとか隠したりとか!」
「それだったら♪」
ミラは胸元からトランプをとりだし、こちらに投げてきた。
な、なにが起こるんだ!!?
「ちょぉっと痛いかもですが、耐えてくださいねぇ♪」
え、痛い?どういうk
「ぎゃばー!!!!!」
トランプが巨大化して勢いよく私にはり付いてきた。その勢いに負けて、倒れた私にそのままはり付いてきたトランプは地面にもはりついて地面と私を濃厚密着させてくる。
「ぐえー!!圧縮されるー!!!!」
トランプに塞がれて外の景色は見えない=声も届かない!?=このまま圧死or酸欠で死亡!!
「うわーん!!」
ああ、儚い人生だったなぁ・・・。美人薄命っていうけど、本当にそう・・・・・・ではなかったなぁ。あれって逆でもあてはまるのかぁ・・・。たしかに、残念な見た目してると扱い雑になるもんなぁ・・・。次は美少年か美少女に生まれ変わりたいなぁ・・・。
ママ、今からママのところに行きます・・・。天国にいったら、ずっと優しいままでいてくれると嬉しいです・・・ママだけに・・・。・・・・・変なことをいいました。ママはずっと優しかったですね。いつも、泣きながら私を抱きしめてくれましたね・・・。また、抱きしめてください・・・。
スノウさん・・・あとは任せました・・・・。モクレンをいい国にしてください・・・。
ミズキさま、ハナミズキ・・・大好きでした・・・。死ぬ前にあえてよかったです・・・・。
クレマチスちゃん・・・大ファンです。
ミラ、いやショッカー。お前は絶対に許さん。死んでも恨んでやる!!!
「さようならぁ・・・・・。」
ああヤバイ、酸素が足りな・・・・




