ラジオの二人
「お助け部は人助けの部活です。」
放送室のマイクに向かって猫実さんが話す。
「えっ、人助けって部活になるの?」
番さんがそれを受けて、反応する。
跳ね上がる声とは、別に正面の猫実さんをみる目は、楽しげで冷静である。
「なるんです。」
「どうやってよ。」
「それを今から、お話しします。」
「わあ、楽しみ。」
軽妙というより、取り止めのない会話が巧の目の前で繰り広げられている。
「というわけで、今日のテーマは……、じゃらじゃらじゃら……ばん。」
「「お助け部って何?」」
番さんが口で効果音をいい、猫実さんと声を揃えてタイトルコール。巧は息のあった二人をながめながら、やっぱり女子同士通じるものがあるのだなあ、と不思議に思う。いつのまにか巧の出る幕はなくなっていた。ラジオなので話さなければ存在しないことになってしまう。しかし、目の前の二人の会話を見ているだけで気が抜ける。何も言わなくていいような気分になる。
「毎日部室でお待ちしています。」
「お、おお……毎日?」
番さんが声だけで、猫実さんの意気込みにおどける。
「はい、毎日です。」
「大変じゃない?」
「いえ、もう慣れました。」
「ええ……待ってる間何してるの?」
「うーんと、本を読んだり、ぬいぐるみを作ったり。」
「ぬいぐるみ? 見せて見せて?」
「あ、ちょっと待ってくださいね。」
猫実さんはマイクから口を離して、スカートのポケットを探す。
「あ、これです。お助けピョン吉です。」
「わー、かわいい。何これ。」
番さんは、ぬいぐるみを見て嬌声を上げる。しっかり、マイクに向かって声を入れて笑う。
「お助け部のマスコットキャラクターのお助けピョン吉です。」
「へえー、あ、お助けって書いてある鉢巻を巻いているんだ。」
「はい、そうです。ピョン吉はいつもやる気に満ち溢れていますので。」
「なるほど、さすがマスコットキャラクター」
結局巧より、ぴょん吉の方が存在感を発揮していたが、無事一回目のお助けラジオは終了した。猫実さんは楽しかったらしく、放課後も次回の計画を語って聞かせてくれた。