二作目
クリエイト!なんやかんやで続きます。
埃っぽい狭い部屋の、天井と壁がぶつかるところを見ていた。多分、何かがあったら崩れてしまうんじゃないかと心配になる。
いやでも、もっと心配しなきゃいけないのは、、、。
巧は目の前、と言ってもたった1つの机を挟んで座る女性を申し訳なさそうにちらりと見た。そんな彼の様子を気にせずに、目の前の原稿用紙に意識を集中させている。
何気ない仕草の一つ一つを見ているだけでも、巧の目が喜んでしまうような美人である。そのぶんだけ、接するときには緊張する。
彼女が読んでいるのは、なにを隠そう、巧が書いてきた小説である。
ゴールデンウィークも終わり、期末テストまであと一週間と迫っている。長い夏休みに入ってしまう前に、誰かに読んでもらう最後のチャンスである。
巧が睡眠時間を削らながら、満身創痍(正直、テスト勉強よりきつかった)で書き上げた原稿である。出来上がった当初は、生まれてきてよかった!と歓喜に満ち溢れるぐらいの気分だったが、今となってはまな板の鯉の気分である。身が縮んでしまあそうな恥ずかしさにたった今耐えているところだ。
(この気持ちは、書き続ける限りずっと切り離せないものだろうな)
巧が、また上を向いた時、突然どんと紙が机を叩く音が聞こえて飛び上がる。
「うん、前よりかは上手くなってるところもなくはなかったけどね」
「はあ」
期待していた、一言はまだ「お預け」のようだ。
「でも、改めてさっと読んでみたら所々、君の書きたいものがわかってきた。」
巧は、黙って目の前の彼女を見つめる。鋭い視線に押し返されそうになる。でも、ここでくじけるわけにはいかなかった。
「書きたいものが伝わってくるっていうことは、成長とも言えるかな。うん」
「ありがとうございます」
おずおずと頭を下げる。
よし、悪いことばかりじゃないみたいだ。
たった一言褒められただけで巧の心が、軽く安らかなした気持ちになった。小さくガッツポーズをしたいぐらいだ。
「まあ、ネコにも読んでもらって細かいところは今度。今はテスト勉強でしょう」
そう言って、先輩ー夜桜かおるは鮮やかに微笑んだ。
埃っぽい部室の空気がそれだけで浄化されたように感じた。