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ありがとね
「どうかわしを許しておくれ」
俺は物心ついてから(つく前も)じいちゃんに虐められた覚えはないんだけど
じいちゃんは最後、俺のてを握って泣きながらそう言って、そしてそれが最後の言葉だった。
自分が死んだらすぐに王都にいきなさい、旅をして世間を知りなさい。
そうじいちゃんはいつも言っていたので、遺言だと思って旅に出ることにした。
でも雪も積もってたし、いろいろ準備もあったので、結局半年ほど経ってから相棒を連れて旅に出た。
一番近くの村まで俺の足で5日ほどかかる道を歩きながら見晴らしのいいところで振り返った。
結構しっかり補強した小屋とデカめに作ったじいちゃんの部屋が見えた。
「バイバイ爺ちゃん、今まで育ててくれてありがとね。」
頭を下げて、歩き出した。
振り返らなかった。