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ヒーロー達と黒幕と  作者: 右中桂示
第二章

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第六話 新たな秘密

「ふぅ、やっと諦めてくれたみたい」


 その声は疲れた様子の少女のものだった。

 少女は右手にあるメモ帳を見ると悲しげに顔を伏せる。


「でも、何でこんな事に使わなきゃいけないのかな。本当はもっと楽しいものなのに」


 少女は落ち込み重苦しい空気を漂わせていたが、それはくぅ~という音によって破られた。


「……お腹空いちゃったな」


 少女は顔を上げると鞄の中から菓子パンを取り出した。袋を開け両手で持って食べようとする。


「あれ?」


 そこでようやくさっきまで持っていたメモ帳が無い事に気づいた。

 実は鞄の中のパンを探している時に落としていたのだが、食欲の方が優先されていたらしい。


「もしかして落としちゃった? ………あ~、どうしよう?」


 何故つい先程落としたばかりなのに困っているかというと、それは少女がすぐには拾えない場所にいるからだった。


 少女がいる場所、そこは地面から遥かに離れた空の上、だったのだ。



  *



 理事長室で笑亜と話してから数日経ったがその間は特に何も無かった。


 普通に生活してても巻き込まれるんじゃなかったの、と聞いてみたが笑亜が言うには、


『裏の世界の事件なんて一週間に一度でも多い位なのよ。毎日起こる訳じゃないわ。そういう事だからもっと気長に待ってなさい』


 との事だったので、透人はこの日の放課後、前から楽しみにしていた新作ゲームを買いに行った。



 そもそも話の翌日から透人は全く警戒しないで本気で普通に生活していたのだ。

 これには笑亜にも、


『確かに普通に生活していても、とは言ったけれど動じないにも程があるわよ。火口君達みたいに元から裏の世界にいたのなら分かるけれど、最近まで知らなかったのでしょう? やっぱり私達のお仲間だからかしら』


 と呆れたような感心したような声で言われた。

 ちなみに最後の方は透人が意味がよく分からないと聞いてみたが教えてくれなかった。



 しかし、何軒もまわっても見つからず自宅から離れたよく知らない場所まで行ってようやく買う事ができた。


 その帰り道、透人は人気の無い道を自転車で走っていた。

 あれ、来た時こんな道通ったっけ、と思いつつよく知らない道を進むが、特に焦ったり不安になったりはしていない。

 むしろ透人は楽しささえ感じていた。

 好奇心が人一倍強く、知らないものを知るという事自体に魅力を感じていた。

 でなければ得体の知れないものに首を突っ込んだりしない。

 未知の場所を進むというその状況を楽しんでいた。

 と、まあそんな事を言ってみたところで道に迷っているという事実は変わらないのだが。


 帰りが遅くなってもいいからもっと寄り道してみようか。


 そう考え、透人は周りに何か面白そうなものがないか探しだした。

 その目の前に突然何かが落ちてきた。

 それも道の真ん中に真上から一直線に落ちてきたのだ。


 透人は自転車を止め、真上を見上げるがそこには何も無い。周りの建物から落ちてきたにしては軌道と落ちた場所がおかしい。

 不思議に思った透人は落ちてきた物を拾い上げる。

 それは黒いメモ帳だった。


 透人は表紙にも裏表紙にも何も書かれていなかったので、少し迷ったが中を見る事にした。


 中を見た透人はこのメモ帳は笑亜がいうところの裏の世界に関わる物だと確信した。

 何故ならメモ帳には複雑な図形や読めない文字等いかにも怪しいものがかかれていたからだ。

 ただのそういう趣味の人が適当にかいただけだという可能性もあったが、落ちてきた時の事を考えるとそれはないだろう。多分。


 御上君の流派とか言ってたし他の流派もあるって事だよな。その他の流派のものなのか。


 考えながらしばらくメモ帳を調べていた透人だったが一人の人影が近づいてくる事に気づいた。


「すみませ~ん。それ、私のなんです」


 声がした方からは金髪に青い瞳をした高校生らしき少女が手を振りながら走ってきていた。

 その少女は透人と目が合うと足を止める。


「あれ? 確か同じクラスだったよね。う~ん、でもごめん。名前何だったっけ?」

「ああ、気にしなくていいよ。俺は明海透人だけど観鳥(みどり)さんでよかったよね」


 観鳥さんと呼ばれた少女、観鳥アンナは透人のクラスだけでなく学校全体に知られる存在だ。

 イギリスとのハーフであるアンナはその日本人離れしたルックスとスタイル、それと人懐っこい性格から男子女子関係無く人気があった。


「え~と、とうどくん。それじゃあ返してくれる?」

「うん、いいけど中見ちゃった。ゴメン」

「ふぇっ!? え~と、その、どう、思った?」


 アンナは動揺しながらも期待と不安が半分ずつといった表情で問いかける。


「よく分かんないから教えてくれたらいいなって思った」

「……そう。見えたんだね…」

「ん? どういう事?」


 アンナは一瞬驚いた顔を見せた後、嬉しそうに微笑んだ。

 その予想外の反応に透人が戸惑っていると、突然アンナの雰囲気が変わった。


「……でも、う~」


 その声と共にアンナは微笑みを消す。そのまま何かを悩むように唸っていたが、やがて思い詰めたような顔で透人に詰め寄る。


「お願い! 皆には秘密にして!」

「ん? う~ん」


 この反応だとやっぱり裏の世界に関わってるのかな、等と考えていた透人だったが、アンナはその姿を見てただではお願いをきいてくれないと思ったらしい。


「黙っててくれるなら…私のお気に入りのスイーツおごってあげるから!」

「ん? スイーツ? いや、俺はそれよりメモ帳について教えて欲しいんだけど」

「……え、その……」


 透人は別に何もなくても言うつもりはなかったのだがどうせならと希望を伝えてみた。

 それにアンナは困ったような顔を見せ、再び悩むがやはり透人の要求には応じられないようだ。


「スイーツじゃダメ……かな?」


 台詞とともに小首をかしげる。その仕草はアンナの容姿と相まって男性ならば誰もが見とれてしまうような可愛らしいものだった。


「じゃあ、それでいいよ」


 が、透人は全く動じずにあっさりと答えた。むしろ簡単に教えてはくれなそうだとがっかりしていた。



 アンナを先頭にして透人は自転車を押しながらついていく。


 目的地に着くまでの間、透人は何故か元気になったアンナからおすすめのスイーツについて、いやというほど聞かされていた。

 それだけでなくいつの間にか話はおすすめのレストランや喫茶店に移っていき、ひたすら食べ物の話を楽しそうに語っていた。


「そんなに食べるのが好きなんだねぇ」

「うん! ……あ、違うよ。いつもいつも食べ物の事しか考えてないわけじゃないよ!」

「? ………ああ、成程」


 どうやらアンナはあれだけ語っておきながら食いしん坊だと思われたくないらしい。

 少し話しただけで誰でも分かると思うのだが本人はばれてないと思っているようだ。


 透人は今までアンナに対して興味はほとんど無かった。だがその意識は変わりつつあった。

 ただ、それは異性に対する興味ではなく、面白い人だな、というものだったが。


「あ、ほら着いたよ」


 アンナが指差す先にはコンビニがあった。


「コンビニスイーツはおいしい割に安いからたくさん食…あ、一度に全部食べるわけじゃないよ! そんなに食べられないからね!?」


 うん、やっぱり面白い人だ、そう思いながら透人は小走りするアンナを追いかけた。



 透人が自転車を止めると二人は店舗と駐車場の間を歩いていく。

 アンナが今から買おうとしているものについて語りを再開させた。

 とその時、大きな音が響いた。


 その方向を見ると自動車が車止めを乗り越え、二人に迫ってきたところだった。


 ああ、アクセルとブレーキを間違えたか、ギアを入れ間違えたんだな。


 と何が起こったか分析しながらも透人はアンナの方を向く。何かできる時間は無く、反射的な行動だった。

 だが、緊急事態にもかかわらず目の前のアンナは落ち着いていた。そして「クッション」というアンナの声が聞こえた。


 その次の瞬間、透人の前で突然自動車が止まり、そして後ろに下がっていった。


 明らかにおかしい動きだった。運転手も何が起こったのか分からず呆然としていた。


 そんな中、透人は改めてアンナの方に向き直る。


「ねえ、今何やったの?」

「………」


 アンナはうつむき押し黙っているだけで反応は無い。

 そこで透人はもう一度声を大きめにして問いかける。


「観鳥さん? 何やったの?」

「ふぇ!? ……えっと、どうして私に聞くの?」

「さっき観鳥さんの声が聞こえたんだけど」

「……え~と、それは……ただの空耳じゃないかな?」


 あくまでもしらばっくれるアンナに透人は別方向からアプローチをしかけることにした。

 そもそも本人が認めていないとはいえ、詮索するより先に言わなければいけない事がある。


「観鳥さん」

「えっと、だから私は……」

「助けてくれてありがとう」

「ふぇ?」

「と、言うわけでお礼に好きなものいくらでもおごってあげようと」

「もう一回言ってくれる?」


 アンナは食いぎみで目を輝かせて反応した。

 ここまでの食い付きとは透人も予想外だった。


 とはいえこれはチャンスでもある。

 感謝の気持ちがあるのは本心だが、それと同じ位アンナが何者なのか知りたいのだ。

 何をやったのか教えてもらえるよう透人は交渉を始めた。



  *



 あるビルの屋上に一人の男が立っていた。

 その男は一冊の本を開きながらブツブツと呟いていたが、やがて顔をあげた。


「クク。人形は潰されたが人前であからさまに魔法を使うとはな。様子見の必要は無かったかもしれん。今回の仕事は簡単に済ませられそうだな」


 男は邪悪な光を目に宿していた。

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