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ヒーロー達と黒幕と  作者: 右中桂示
第四章

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第十八話 未知とのふれあい

 透人は今回、宇宙人に関わる事件に巻き込まれたらしい。

 となればこの白い世界は他の星の技術によって作られたものなのだろう。

 あの謎の生き物も他の星の生き物という事になる。


「妖怪とかじゃなくて宇宙生物だったのか……ん?」


 透人は呟きつつ宇宙生物のいた方に視線を向けたが、そこには朝見つけたぬいぐるみのような生物はいなかった。

 いや、いたにはいたのだが大きさが違っていた。両手で抱えられる大きさから自動車程の大きさにまでなっていたのだ。


「あぁ、成程。巨大化するのが分かったから、転がして俺達から離した上で周りに被害を出さない為に隔離したのか」

「いやいや、この状況で落ち着き過ぎだろ」


 早喜が何か言ってきたが、これくらい透人にとっては別に取り乱す程の事ではない。

 それより状況は解ったがまだ情報は足りない。

 そこで透人は情報を持っていそうな人物に聞いてみた。


「で、この場所は何で、あれは何で巨大化したんですか?」

「君ももう関係無いとは言えないか。言ってもいいだろう?」

「今更聞くな! 宇宙人ってバラす前に聞けよ!」


 早喜は最後に「もう知らん」と言ってそっぽを向いた。

 それを見た宇宙人は透人へと説明を始める。


「ここは空間を制御する装置でどうにかして作ったところさ。元々いた空間とは一切干渉しない別空間らしいよ?」

「説明が適当過ぎますね」

「そう言われても無理なんだよ。自分は技術屋じゃないからさ」

「それじゃあ原理は解らないんですか」

「原理は知らなくても使えればいいのさ」

「確かにそうですね」

「いや、納得したら駄目だろ」


 早喜が透人と宇宙人の会話に割り込んできたが二人は気にしなかった。

 透人としてもこの白い空間には興味があるがこの場合は仕方ない。


「それであの生物、ポゼレンと名付けたんだが空腹になるとああやって巨大化する習性があるのさ。その理由なんかはまだ研究段階なんだがね」

「つまりあなたは生物の研究が専門なんですか?」

「その通り。だから技術については専門外だと言ってるのにサキは聞いてくれなくてね」

「ワケわからんもん使いたくないだろ!」


 早喜の声からは今までの宇宙人に対する怒りが感じられた。

 しかし、宇宙人はそれをヘラヘラした顔で受けながし、視線を透人から宇宙生物に向ける。


「じゃあ、とりあえずポゼレンを元に戻そうか。いつまでもこうしているのもあれだしさ」

「どうするんですか?」

「巨大化は空腹になったせいなんだから餌を与えればいいのさ」


 そう言い残して離れた場所でジッとしていた宇宙生物に歩み寄っていく。

 そして目の前まで行くとジャージのポケットからいくつもの箱を取り出した。

 その量は明らかにポケットに入りきるものではなかったが、また空間を制御する装置を使っているのかもしれない。


「よしよし、おたべ」


 宇宙人は箱をひっくり返して宇宙生物の前に黒っぽい色のブロック状の物体を置いた。

 宇宙生物はそれに反応し、口を開けて舌を出した。

 しかし、宇宙生物の舌は餌ではなく宇宙人に巻きついた。

 その次の瞬間。

 ばくん。


「「あ」」


 舌が宇宙人に巻きついたまま口の中に引っ込んでしまった。

 宇宙人の方が食べられてしまったのだった。



  *



「全く、面倒かけさせて……!!」


 早喜は愚痴りながら走っていた。

 ペットに食べられた宇宙人を助け出す為にそのペットに立ち向かわなければならないのだ。全くやる気が出ないが仕方がない。



 そもそも何故、早喜がこんな事をしなければいけないのか。

 それは一年程前にあの宇宙人と遭遇してしまったからだ。

 遭遇したのは小学生から続けていた少年野球の試合をしている時だった。

 その際、宇宙人の乗り物を壊してしまった為に、帰る目処が立つまで早喜が面倒を見なければいけなくなってしまったのだ。

 ちなみに、遭遇した時一緒にいた少年野球のチームメイトは記憶を消されているので協力は頼めない。あまり多くの人に知られる訳にはいかないらしい。

 そういう訳で早喜は宇宙人の騒動に巻き込まれている。

 文句を言いつつも壊してしまったのは事実なのでその罪悪感から宇宙人の手助けをしていた。



 ただ、今回の場合は理由がもう一つある。

 それは今回巻き込んでしまったクラスメイトの透人にあった。

 早喜は最初、反省させるために宇宙人が自力で出てくるのを待っていようかと割と本気で検討していた。

 その考えを透人に変えさせられたのだ。

 早喜は透人の事を詳しくは知らなかった。せいぜい、天然で食いしん坊な友人が最近仲良くしているということくらいだ。しかし、その友人はきっかけがあれば誰とでも仲良くなるのであまり気にしていなかった。

 だから、透人がこんな変な奴だとは思わなかった。

 透人は宇宙人が食べられた後、早喜の方を期待をこめた目でチラチラ見てきたのだ。

 何を期待しているのかは分かっていたが早喜は無視して検討していた。

 だが、しばらくすると透人は「あの人見捨てるの?」や「このままじゃ俺も困るんだけど」等と言ってきた。

 多少心を動かされたが、それでも無視していると今度は「何で宇宙人と知り合いなの?」から始まる質問攻めをしてきた。

 だんだんうっとおしくなってきた早喜はさっさと帰るために宇宙人を助けに向かっていったのだった。



 早喜がまっすぐ向かっていくと、宇宙生物が舌を出してのばしてきた。

 そこでポケットに入っていた装置を起動した。

 すると舌は早喜の目前で弾かれる。


 早喜が起動したのはバリアを発生させる装置、らしい。以前、他のペットが逃げ出し、それを捕まえるのを手伝わされた時から借りているのだが詳しい事は知らなかった。

 何故なら持っていた宇宙人も知らなかったからだ。


 バリアで弾いた舌は弱々しく垂れ下がり、追撃を仕掛けてくる様子はない。

 早喜はその隙に宇宙生物の右側に回り込んだ。

 そして、先程とは別の装置を起動させる。それから宇宙生物の横っ腹にハイキックを放った。

 その結果、ドゴォと普通ならあり得ない音が響き宇宙生物は数メートルの距離を吹き飛んだ。


 今度起動させたのは簡単に言えば身体能力を強化する装置、らしい。これも以前借りたものだが詳しい事は知らなかった。

 何故なら持っていた宇宙人も知らなかったからだ。


 早喜はひっくり返った宇宙生物に近づいていくが動き出す気配はない。

 少しやり過ぎたかもしれないと反省したものの、まだ終わりではない。

 まず、宇宙生物の腹を触って妙な感触があるのを確かめる。そして身体能力を強化させて腹を一気に押した。

 その刺激により宇宙生物は腹の中にあったものを吐き出す。

 見覚えのある姿が白い地面を転がり、うつ伏せの状態で静止した。

 それを確認した早喜は宇宙人に歩み寄り、


「余計な事させんな!」


 失態の尻拭いをさせられた恨みから背中を踏みつけた。

 その足を退けると、宇宙人の体にノイズが走り、ヘラヘラしたジャージの男の姿は消え去った。


「……しまった」



  *



「ん?」


 透人は目の前で起きた出来事が信じられないという風に瞬きを繰り返していた。

 早喜に踏みつけられた宇宙人にノイズが走ったと思ったら、その姿が変わったのだ。

 そのシルエットは頭が丸みを帯びた三角形でそこから何本もの足がのびているというものだった。

 それを分かりやすく例えるならばタコ型の宇宙人。もしくは火星人となるだろう。


「あぁ、成程。さっきまでのは正体を隠す為の立体映像か何かなのか」

「いやいや、リアクションがおかしい。普通はもっと驚くとこだろ!」


 透人は短い時間でいつもの調子を取り戻した。

 それに対し早喜がまたツッコんできた。先程よりも口調が荒くなっている。

 透人がそれを聞き流しながら観察をしていると、宇宙人は上体を起こして疲れたように言葉を発した。


「大変な目にあった。というかサキ、最後はひどいんじゃないかい?」

「黙れ」


 早喜は冷たい目で見下ろし、それを受けた宇宙人はやれやれと両手(?)を広げた。

 宇宙人が顔を上げた事で、前面がガラスの様に透明なもので覆われたヘルメットを被っていると分かった。その内側の顔は赤っぽい色をしている。が他の部分は白く、さらに様々な機械が取り付けられている。

 よく見る宇宙人のイメージとは違うが透人はその理由を推察した。


「着てるのは宇宙服ですか? やっぱり地球の空気は合わないんですか」

「宇宙服? ……カモフラージュがとけてるじゃないか」


 そこで初めて宇宙人は自らの正体がバレバレになっている事に気づいたようだ。

 宇宙人がいつの間に、と首(?)を捻る横で早喜は目を逸らしていた。

 その様子を見て不審に思ったようだが宇宙人はまあいいか、と透人に視線を移し先程の質問に答えた。


「宇宙服とは違うね。生身でも問題は無いよ。ただ持ち込んだ服が少なくてね」

「成程。考えてみると知的生命体なら何か事情が無くても服くらい着てて当然ですね」

「話が分かるじゃないか。この星にも昔、我々の仲間が来たみたいなのにその絵が裸なのが不満だったんだよ」

「ああ、そういう絵って本物だったんですね」

「なあ、何で平然と会話してんだ?」


 早喜が理解できないものを見ている様な困惑した声で言った。

 だが透人は好奇心のままに質問を続ける。もはや早喜の存在は眼中に無いようだ。


「そういえば、肝心な事がまだでしたね。名前はなんて言うんですか?」

「名前かい? 自分はェン※○カ■というのさ」

「エン? エ、エ……ェン※○カ■ですか」

「何で発音できんの!?」


 早喜が驚いて大声を出した。今までで一番の声量だ。

 しかし、何でと言われてもやってみたらできただけなのだからしょうがない。


「言いにくいのなら無理はしなくていいよ。普段は名前をここの言葉に翻訳して、マコトと名乗っているからさ。サキは呼んでくれないんだけどね」

「必要以上に関わりたくないからな」


 早喜は真顔であっさりとそう言った。

 それでも透人は早速使うのだった。


「マコトさんは何の目的で地球にきたんですか?」

「色々な星の調査をしていてこの星もその一つだったのさ。だけど下調べ用の小型船がそこのサキに壊されてしまってね」

「そんな簡単に壊れるものなんですか?」

「噴出孔だか通気孔だか解らないが重要な隙間にボールが上手く入ったみたいでね」

「ああ。バードストライクみたいなものですか」

「そこは納得するところじゃないだろ!」


 とりあえず壊れた理由は理解できた。

 マコトは既に使えればいいと言っている。だから自分が操縦する乗り物の構造を知らない事についても不思議はない。

 だから、透人としては納得しても問題無かった。


 その後も透人の質問が続いていき、結構な時間がたった頃マコトが提案した。


「座って話そうか。なんならお菓子もあるから」


「いや、いい加減帰せよ!!!」


 隣で話をずっと聞かされていた早喜が痺れをきらして叫ぶ。今日一番の大声を更新した。

 しかし、残る二人は不満そうに言う。


「んー。まだ聞きたい事があるんだけど」

「そうそう、面白かったのに。……でも、またの機会でいいか」


 その言葉に早喜が素早く反応する。


「待て。記憶を消すんじゃないのか」

「話の解る面白い人じゃないか。別にいいだろう?」


 マコトの返答を聞いた早喜は難しい顔で考えた後、透人に厳しい目つきで問いかけた。


「この事は秘密にしてくれるよな?」

「大丈夫。何も知らない人にバラすつもりは無いよ」

「……それならいいか」


 早喜は透人の言い回しに違和感を感じたようだったが深く追及してはこなかった。

 透人は無関係な人にバラすつもりは無い。ただ既に知っているであろう人には話すつもりだ。


 その後、元の大きさに戻した宇宙生物を回収し、マコトが何かしらの装置を使って再びジャージの姿になってから白い空間は解除された。

 そうして今回の騒動は終わりを迎え、早喜とマコトは帰っていった。

 その後ろ姿を見ながら透人は呟く。


「今日は俺何もしてないな。まあ、いいか」

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