表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Out siders  作者: 言乃葉
荒星の用心棒
1/2

♯1

 注意


 ・ 地雷要素が多数埋設されております。


 ・ 性転換要素が含まれております。苦手な方は避けて下さい。


 ・ 残酷な描写が含まれております。苦手な方は避けて下さい。


 ・ 用法用量を守り、正しく読みましょう。





 暗い雨雲から雨の糸が降りしきっていた。

 身体は冷え切り指一本を動かすのも億劫で、このまま目を閉じるとすぐにでも永遠の眠りについてしまう。血は流れ出て雨水と混じって地面に広がる。呼吸も弱く正しく虫の息。残り五分とない余命が課せられていた。


 生きる気力は始めから無い。執着するもの、守るべきものなど与えられなかった。ただ言われるままに生きてきた日々、それももう終わりだ。

 終わりはかなり意外な形だったが、災害みたいなものと解釈すれば何ということはない。地震や火事、台風に被災して命を落とすようなものだ。余人の納得はどこ吹く風で不条理な蹂躙は成された。アレは災害となんら変わりがない。


 目に入る雨の雫がいい加減うっとうしくなり、目を閉じた。すると急速に意識が沈んでいく。

 その沈降に逆らうことなく、死の誘惑に身を委ねた。

 ――はずだったのに強引に呼び戻す声がかかった。


「何を死のうとしている。わたしはお前を好いたのだ。そうと決めた以上は勝手に死ぬことなど許さぬぞ」


 耳に入った声は澄み渡る女性の声。声だけでも高貴な品位を感じさせる凛とした声色だ。

 この数分間何回か聞いた声。重くなった目蓋をあげてみれば、声に違わない美しい女性がこちらを見下ろしている。

 その美は酷く現実味を欠いた幻想世界の美しさ。隆盛を誇る王国の美姫を思わせる。


「どうした、わたしに一撃(口付け)をくれながらもう終わりか。まだ逝くには早いぞ」


 不機嫌な姫君は、こちらにぐっと顔を近づけて唇同士を合せた。鼻をくすぐる花の香りが印象に残る。

 今生で初めてのキスの味は、血の味がした。


「今、この時よりお前はわたしのものだ。未来永劫、死すら死する時の彼方先までな。わたしに口づけ(一撃)をくれたのだ、責任はとってもらうぞ」


 愉快そうな姫君の声をきっかけに変異が体内を荒らした。

 冷え切った身体に灼熱のマグマが注がれる。熱いよりも痛い。過剰な熱は痛みが先にやって来る。叫ぶ事さえ満足にできない口は金魚のように開閉させるだけで、身体はまともに動かないからのたうつ動きもできない。

 痛みによる通過儀礼。これは姫君との契約。数分先にある確実な死から逃れ、永劫に彼女の所有物となる契約だった。

 顔を上げて至近距離で見詰めてくる姫君の顔には、さっきの不機嫌さはなくなり満ち足りた大輪の花の様な笑顔だ。


 不意に理解した。彼女は人に死を与える天使なのだ。

 暗雲が垂れ込める空から雨と一緒に堕ちて来た災厄の御使い。そう納得がいくと同時に意識は再び暗い海へ沈む。今度は死の淵に落ちる眠りではなく、目覚めのある眠りへ。


 どうか、目が覚めても自分が自分でありますように。



 ■



 豊穣の地と古くは謳われていたユトヒの大地。人は遠く旧い過去に栄華を捨ててしまい、それでもこの大地にしがみついて日々を懸命に生きている。

 かつては星の海にも船を出し、万物の生き物を意のままに改良し、自らも優良な種族へと進化しようとしていた人類。それも全ては遠い過去の時代、神話の類として扱われだしたのが現在である。

 かつての文明を人類の大半は忘却して、惑星(ほし)の名前さえ忘れた。厳しい自然、改良の副産物で凶暴化した獣の脅威にさらされる毎日。厳しさを前に人は数を減らしていく。それでも人は大地の上で確かに生きていた。



 ――ユトヒの大地の北西部。広大なユトヒの大地の多くが人類に敵対的な環境であり、この周辺地域も例外なく厳しい環境にあった。

 水に乏しく、大地、空気、すべからく渇いていた。環境に適応した植物が何とか自生して、その植物をエサにする動物、さらにその動物をエサにする動物で生態系が出来ている。これだけで生態系のキャパシティは一杯、他に生物を受け入れる余地は無いのがこの土地だ。

 それでも人類というのはたくましく、無理矢理に環境のキャパシティに入り込んでいた。


 人が生きるには余りにも厳しい荒野。その端にひっそりと人の住む町はあった。何の皮肉か町の名前はグリーンビレッジ。荒野でも育成できる家畜と狩猟で得た毛皮で成り立つ、ありふれた辺境の町だ。

 荒野に生息している魔獣、官憲に追われて逃げてきた無法者、何より人に敵対的な渇いた大地。そういう厳しい辺境の土地でありながら人というものは逞しく、町を作って日々の営みを送っている。

 家畜を育て、魔獣と戦い、無法者を撃退して、家畜と毛皮を売りに出し糧を買って生計を立てていく。ここ数十年町は比較的穏やかな気候に恵まれ、町は徐々にではあるが活気づこうとしていた。


 グリーンビレッジの町外れ、そこは鉄道の駅になっていた。

 鉄道といってもかつてのような電化された鉄道の類ではなく、蒸気の力で動く蒸気機関車が現在持てる純粋な人の技術になる。今はその汽車も来ておらず、駅には駐在の駅員がいるだけの閑散とした静かな田舎駅だ。

 薪小屋ぐらいの小さな日干しレンガで出来た駅舎の中で駅員は机に向かって書類仕事をこなしている。白髪しかない老人と言って差し支えのない風体の男性。彼は書類の作成に一区切りがついたところで壁にかけた時計に目をやる。

 南にある都市行きの列車が来る頃合だ。むろん正確な時計に乏しい今の時代では一時間~二時間位の誤差は当たり前のように生じるが、到着する列車に備えるのは駅員の仕事だ。今から動いて損はないと彼は考えた。


 年々重く感じる体を椅子から持ち上げて、駅員は列車の到着に備えようとした。

 だが、その前に外から駅に近付く大きな物音が聞こえた。人の出す音ではない足音、魔獣でもなく、ウマだ。誰かがウマでここへと乗りつけたらしい。

 誰かと思い駅舎を出た駅員だったが、いくらも歩かない内に足を止められた。


「悪いなぁ、ジイさん。すまないが次の汽車が来るまで大人しくして欲しいんだがよ」

「な、何を!?」


 至近距離で聞こえた声と一緒に背中に押し付けられる硬い感触。言うまでも無く凶器の感触だ。駅員の体は凍ったように固まる。

 どうやら駅員が飛び出して来るのを予見して、先行していた人物が物陰に潜んでいたのだ。

 後ろから手が伸びて、駅員の肩を捕まえる。暴力慣れした力ある手だ。その手の持ち主を見ようと駅員は首を回すが、果たせない。背中にあった凶器の感触が今度はこめかみにやって来た。


「こっちを見るな。じゃないとジイさんの頭を吹っ飛ばさなきゃいけなくなる。分かるよな」

「あ、ああ……まさかアンタ、アシュトンのところの?」

「余計な詮索は命を落とす元だ」

「っ!」


 こんな事をする人物に駅員が唯一思い当たる名前を口にすると、こめかみに硬いものを押し付けられた。

 視界の端に銃の金属の輝きを認め、駅員は大人しく従うしかないと悟る。同時に自分の不運を神の試練かと考え、どうか無事にやり過ごせるよう心の中で神を祈った。


「じゃあ、しばらくロッカーにでも入ってな。大人しくしてたら何もしないからよ」


 後ろから布で目隠しされて、背中を銃で小突かれて駅舎へ戻る駅員。暗い視界の中、彼は一心に祈っていた。

 駅員は掃除用具を入れるロッカーに押し込まれ、そのまま何事も無かった。

 次に駅員が光を見たのは町の保安官に助け出された時だった。彼は日頃から保安官を嫌っていたが、この時ばかりは神の御使いに見えてしまい思わず祈りを捧げて保安官を困惑させる場面があった。まあこれは余談ではある。


 その間に駅で起こったことは当事者以外にはあまり関係のない出来事だった。



 □



 駅員の老人を掃除用具入れのロッカーに押し込み、手近にあったロープでロッカーを縛る。これで当分出て来れない。余計な第三者はここにいる一同誰も望んでいない。一人でも余計な人間はいないに越した事はない。


「エド、なんで殺さない。面倒なだけだろう?」

「殺した方が面倒だ。第一ジジイに弾を使うのももったいない」

「けっ、博愛ぶりやがって」

「そんなつもりはないさ。効率の問題だよ、効率。分かるかい? オジサン」

「オレはお前のそのインテリぶったところが気に入らないぜ」


 駅舎には男が三人。その内二人が閉じ込めた駅員の処遇で軽く口論になっていた。

 駅員をロッカーに閉じ込める処遇を決めた若い男の言葉に、いくらか年嵩の男が不満そうだ。口にしていた噛みタバコをヤニ混じりのツバと一緒に床へ吐き捨てて不満の態度を表している。残ったヒゲ面の壮年男性はむっつりと黙ったままだ。

 だが無言なりに態度で表しているらしく、壮年男性の態度を見た二人は口論を止めた。それに頷きで返した彼は駅舎からホームに出て、手近にあった飲料水を入れる樽に背を預けた。


「汽車が来るまで待つぞ。俺達がボスに指示されたことは駅員を殺すことではなく、これからやって来る用心棒達をボスのところまで送迎することだ」

「マック……ああ分かったよ、お行儀良くお出迎えだな。でだ、汽車が来るまでちょっと一杯引っかけてもいいか? どうせしばらく待つんだろ」

「飲み過ぎてゲストに馬鹿な真似をするなよ。そうなったらまずお前を撃たなきゃならない」

「大丈夫だって、少し酒が入っていた方がオレは調子が良いんだ」


 年嵩の男は懐からスキットルを取り出して中身のウイスキーに口を付けだした。それを見ている残る二人は呆れつつもあまり気にしていない。三人にとってそれが日常だからだ。

 彼ら三人に共通しているのは暴力を日常としていることだ。各々が腰に巻いたガンベルトには銃が顔をのぞかせて、日の光を受けたそれらは武器ならではの鈍い輝きを放っていた。

 エドと呼ばれた若い男は左右に二挺の派手なニッケルフィニッシュが施された自動拳銃。年嵩の男は抜きやすいように体の前に大型の回転式拳銃を差している。マックと呼ばれた壮年の男は少し変わって拳銃の代わりに短く切り詰めた水平二連散弾銃を長い革ホルスターに入れている。いずれの銃も暴力の気配が濃く現れた凶器で、それを持つ彼らもまた暴力に慣れ、暴力の空気で呼吸している人種だ。

 暴力が日常の三人組。とはいえ駅員を意味もなく閉じ込める程暇ではない。これは三人の上役から指示あっての行動だった。


 そのまましばらく時間が三人の上を通り過ぎていく。ちなみにロッカー内の駅員はこの時は必死に神に祈っている最中だ。

 エドと呼ばれる若い男は駅のホームを行ったり来たりしながら時折腰の銃を弄っていて落ち着きのない様子だ。年嵩の男は機関車用の大きな貯水槽の下で荒野の強い日差しを避けつつスキットルを傾け、ちびちびと酒盛り中。最後のマックと呼ばれるリーダー格のヒゲ面の男は樽に背中を預けたまま顔を俯かせて微動だにしない。

 高い空をデスバードが翼を広げてゆったりと滑空して鳴いた。金属を切るような不気味な声だ。それを見上げた年嵩の男は、不吉なものを見たと言わんばかりに不機嫌になって再びツバを地面に吐いた。

 屍肉を漁るハゲタカに酷似した大きく黒い鳥は、この世界では死神の使者と見なされている。不吉の象徴とも言われ好き好む人は少ないだろう。


 どのくらいの時間が過ぎたか。一人酒盛りしていた年嵩の男のスキットルが空になり、若い男がホームを何往復もしたとき、微動だにしなかったヒゲ面の男が何かを察知したのか不意に顔を上げた。


「来たぞ」


 ヒゲ面の男の声に残る二人は一瞬動きを止め、すぐに意味を理解すると彼の下に集まった。

 鉄道のレールが震えている。まだ姿を見せていない列車が出す振動で小さく細かく揺れているのだ。ヒゲ面の男はこれで察知したらしい。

 レールの振動は秒単位で大きくなっていき、次には機関車の出すピストンの音、煙突から出ている燐光じみた魔導晄混じりの蒸気がレールの向こうから現れた。ほどなく岩場の影から姿を現わした蒸気機関車は、この辺り一帯ではごく一般的な型式で男達には見慣れたタイプのものだ。

 この辺りの機関車は大抵後ろに貨物を積載する貨物列車を牽いているのが一般的だ。地域の物資を輸送するのが鉄道の大きな役目だからだ。だが男達が見ている列車には客車が繋がっており、この辺りでは珍しく汽車に乗っている人間がいると知らせていた。

 汽車でやって来る人物――間違いなく余所者(アウトサイダー)だ。男達は待っていたゲストがやって来たと確信を深めた。


 汽車が重量感たっぷりな車体にブレーキをかけ、ゆったりとホームに停まる。金属が擦れる耳障りなブレーキ音が一帯に響き渡るが、男達は気にせず視線を客車に向けたままだ。

 排気音と一緒に車体脇のピストンから魔導晄混じりのスチームが吹き出して列車は完全に停まる。しかし列車から車掌が出てくる気配はない。原因は言わずもがな三人の男達にある。銃で武装した連中が外で待ち構えていては出て行く気になれないだろう。

 機関車の運転席から機関助手らしき若い男が顔を出したが、三人の姿を見てすぐに運転席へと引っ込んでしまった。怯えているのが分かる反応だ。

 ひなびた町のひなびた駅に汽車が停まってキッカリ一分。客車の扉が開いて中から一つの人影が現れた。


 人影は背の高い男だった。歳は二十代後半から三十代に見え、身長六フィートを越える細身の長身を着古したパンツとシャツで包み込み、同じく年季が入っていそうなダスターコートを羽織り、頭には荒野の強い日差しを避けるツバ広の黒い帽子が載っていた。身なりは清潔だが全体的にくたびれた印象をしていて、ベテランのカウボーイの様にも見える。

 しかし彼の身から発せられる凶暴な獣性は服装の印象を大きく裏切り、牧童ではなくアウトローな印象に仕上がっていた。切れ長の目はどこまでも冷ややかでナイフを思わせる。癖のある長い髪は全て後ろに撫でつけられ、くすんだ金髪(ブロンド)が帽子の隙間から見えた。顔の造作は端正なのだが、冷たい眼差しとどこか気怠げな雰囲気が見る人に危険な予感をさせる。

 獣性と無法を人型の鋳型で鋳造して、理性と知性で何重かコーティングすればこんな風になるだろう。そんな男だった。


 アウトローな長身の男がたった一人。他に客室から人が出てくる気配は無い。男はしばらく客車の上から三人を睨むように見詰める。次いで視線を上げて空を見上げ、飛んでいるデスバードを目で追った。

 三人の方でも戸惑いと困惑で動きが止まっていて、誰も口を開こうとはしない。リーダー格のヒゲ面の男だけは値踏みするような目で男を見ているが、見られている側はそれを知ってか知らずか無反応だ。

 奇妙に歪んだ緊張の糸。それも男が列車から降りてきたことであっさりと切れた。


 男が降りるなり汽車は汽笛を鳴らし、その場から逃げるようにして動き出す。重々しいゆったりした動きだが、運転手や車掌の心中が表れているのか心なし動きが速い。誰だって面倒事には関わりたくものだ。

 後ろで車両がゴトゴトと音をたてて通過していくのを無視して男は三人を見据えていた。

 ヒゲ面の男は念を入れて確認をしてみようと考え、口を開いた。


「あんた、こんな町に何の用だい? ここには何もないぞ」

「確かにな。観光向けの町じゃないことは確かだ」


 男が答える。聞こえるのはタバコで焼けたどこかいがらっぽい男の声だ。

 ヒゲ面の男はコイツがゲストだとほぼ確信している。だが話が聞いていたのと少し違い、それが彼の戸惑いの元だった。ボスは用心棒を五、六人は雇い入れてこの町に来るよう手配したと言っていた。それが現れたのはこの男一人だけだ。聞かされていた数とまるで合わない。困惑してしまうのも無理はないだろう。

 ヒゲ面の男の心中は複雑だったが、彼はボスにやって来る用心棒を送迎しろと命令されている。自身も雇われている身、命令には従うつもりだ。


「そうかい。もし良かったらこんな辺鄙な町まで来た目的を聞かせてくれないか? 俺たちが助けになれるかもしれない」

「回りくどいな。君らはアシュトンからの迎えだろう? こちらの目的なんて分かり切っているだろうに。用心棒のデリバリーだよ」

「注文した数と大分違うんだがな。五、六人は来る予定なのに何でお前一人だけなんだ」

「そんなの知らんよ、口利き屋にでも聞いてくれ。オレは用心棒の仕事があるって紹介されて汽車のチケットを渡されただけさ。他の人間の事情なんて知るはずないだろう?」


 男の発言に送迎側の三人は思わず顔を見合わせてしまった。年若い男、年嵩の男、二人の顔には揃って「どうしよう?」と戸惑いの感情が浮かんでいた。リーダー格のヒゲ面の男の表情は渋い顔を一層渋くさせる。往々にして辺境の町は都市部の人間に舐められる事が多く、口利き屋も用心棒も田舎での仕事を避けてしまいがちで、人がロクに集まらない。

 【学院】に目を付けられないためとは言え、こんな辺境に拠点を持ったのはボスの失敗だったかもしれない。ヒゲ面の男は今更な後悔に内心頭を抱えて、それでも命令に従おうと決めた。


「分かった。まずはボスに会って貰う。細かい話はそこでしよう。ついてきてくれ、ウマを用意している」

「ああ、了解した。と、その前に誰か火を持っていないか? 手持ちのライターのオイルが切れてしまったんだ。一服つけてから行きたいんだが」

「残念だが、ここには紙巻きタバコを吸う人間はいない。偉い奴は葉巻、他は大抵噛みタバコだ」

「なんとまあ、そういえば畜産の町だったな。火気厳禁ってか」

「そういうことだ。さ、行くぞ」


 男が紙巻きタバコを口に咥えて火を求めたが返ってきた無情な返答に肩を落とし、口に火の点いていないタバコを咥えたまま男達の案内に従う。

 程なく駅を去っていくウマの足音がして、駅舎が静けさに覆われた。この頃になるとロッカーに押し込まれた老駅員は精神的疲労でグッタリとしている。

 駅舎近くの茂みから聞こえる虫の声だけがこの場を満たしていく中、駅舎から少し離れた場所にある岩陰から二つの人影が現れた。


「最初の接触は成功ですね」

「ああ、彼なら当然」

「やはり見た目が完全に外界の無法者ですし、相手に自然と受け入れられる素地があるということでしょうか」

「否定はしない。実際、僕達は無法者と大差ないし」


 ウマが去っていった方向を窺う二つの人影は、いずれも辺境の町にあって特徴的な出で立ちをしている。

 一人は小柄な女性……いや、顔立ちの幼さからすると少女という方が正しい。幼さとは不釣り合いな一本芯の通った凛とした雰囲気を持ち、五フィート程度の小柄な身体を包む衣服は小袖に袴というこの周辺の土地では馴染みのないものだ。きっとこの辺りの住人の目には変な服装としか言いようがない代物に映るだろう。容姿は性的な魅力よりも美術品めいた魅力の方が強い。まるで俗世の穢れを知らない妖精のような少女だ。

 背中まである長くクセのない黒髪は、吹きつける荒野の乾いた風に揺られてサラサラと黒い流れを作り、この辺りでは珍しい大陸東側の人種の顔立ちはエキゾチックな魅力を強調していた。総じて、浮世離れした印象を見る人に与える少女だ。


 もう一人も女性で、こちらは少女よりも幾つか年上に見えて歳相応の女性的成熟を見せている。ただ少女よりも年上のはずなのにこちらの方が頼りなさそうな雰囲気だ。身に纏う服装は女性用のスーツに近く、もっと言えば軍服だ。使われている素材は上質で、都市部に配備されている憲兵隊の制服よりも上等なユニフォームである。辺境地域のグリーンビレッジではとても目立つ服装だ。頼りない雰囲気と上質なユニフォームのギャップが女性の正体を分からなくしそうだが、彼女の容姿を一目見ればユトヒの大地の住人はすぐに彼女の所属が分かる。

 アップに纏めた長く艶やかなブロンドの髪、美貌と呼ぶに値する顔立ちを持ち、何より側頭部より長く伸びた笹穂状の耳はこの大地の支配種族【エルフ】の特色だ。世間ズレしていないだろう無防備な女性ではあるが、この大地では余程のバカか自殺志願者でもない限りちょっかいをかけてくる人間はいない。エルフという種族はそれほどに恐れられているのだ。


 片や異国風の少女、片やこの大地の支配種族エルフの女性。もし目撃者がいたら頭を捻るだろう不思議な組み合わせの二人だ。

 二人が見ている先で走り去ったウマが立てる土埃が薄れていき、後には荒野の無人駅が見えるだけになったところで二人は再度動き出した。


「じゃあ、彼から連絡が来るまではこちらは待機」

「ねえ、やっぱり町の外で野宿なの? テントがあっても少しキツくないかな」

「町に入ると僕達の外見は凄く目立って要らないトラブルを起こす。それに、【学院】製の耐環境テントは辺境の宿屋よりも快適」

「【学院】を褒めてくれるのは嬉しいけど、外界の宿屋って酷いの?」

「ピンキリ。でもここみたいな辺境だと、ノミとかダニとか、ムカデ、ヤスデ、後は寝ている間にブーツにサソリとか」

「……ごめんなさい、私テントが良いわ」

「ん、了解」


 隠れていた茂みから出て、彼女達は町から離れていく。少女は淡々と今後やるべき行動を語り、エルフの女性は辺境の環境に嫌悪感を出していた。

 この二人も岩場の向こうへと姿を消せば、周囲に人影は完全に失せてしまった。駅舎内のロッカーでもがいていた駅員も静かになり、荒野の駅舎には風の音とデスバードの金切り声が聞こえるだけになる。

 それら一連の様子を遙か遠くから高価な機材を使って見詰めている存在がいる。映される光景に存在は興味深く観察の眼を向けて、密やかに面白がっていた。

 存在は次の場面転換を望み、コンソールを操作して【カメラ】の視点を移動させた。視線が向けられる先はもちろんあの無法者達の行方だ。



 ■



 グリーンビレッジの寂れた通りをウマが走り抜ける。元から賑やかさとは縁遠い辺境の町だったが、無法者達が闊歩するようになってからは住人達の姿は消えてゴーストタウン同然になってしまった。暴力を生業とする無法者を恐れ、住人達は住まいに隠れて息を潜め嵐が過ぎ去るのを待っていた。

 血の気が多い辺境の民であるため住人達の中には立ち向かおうとする人物も大勢いたが、そういった人達はすでに殺され墓穴に入っている。この町で一番に腕の立つ保安官助手が銃弾で頭に穴を空けられ、町の入り口で死んでいるのを発見されてからは無法者達に抵抗しようという住人はいなくなった。

 駅で無法者三人組に迎えられた男は、与えられたウマに乗って町の通りを走る最中に隠れ潜んでいる住人達の気配を感じた。彼はこの町がこうなった経緯を知らされているが、取り立てて思う所は無い。【学院】による支配が成されていても、人の世の本質は暴力が支配しているのだと弁えているからだ。つまりこれもユトヒの大地ではありきたりな出来事だった。


 一行は町を抜けて少し小高い丘にある屋敷へとウマを走らせる。その丘は草木が豊かに生えており、周囲の荒野からは信じられないほどに緑が映えていた。ここだけは町名の通りに緑の地になっていた。

 丘の上に建つ屋敷も町の建物と違い、日干しレンガではなく【学院】製の生体建材で建てられている。高い耐久性、環境適応、自己修復の機能を有する建材で建てられた屋敷は町の建物とは全く異なり、プラスチック樹脂で出来た模型のような質感をしていた。

 緑ある大地といい生体建材といい、どちらも高い金銭を必要とし庶民には手の出せない代物だ。間違いなく金持ちの屋敷と言えよう。

 程なくウマは緑の丘を登り屋敷に到着した。いよいよ雇い主とのご対面だ、と用心棒になる男は思い気を引き締める。

 ウマを降りた一行は屋敷には入らず、回り込むように裏手へと足を踏み入れる。屋敷の裏手、丘の草木に手が入り整えられた庭とも言える場所では、異様な光景が広がっていた。


「十分経過、まだ持つな」

「クソ、この位のガキならもうへばってしまうところだろ。3ゴルトも賭けたのに損した」

「へへん、こっちは一時間に賭けているぜ。まだガンバレよ嬢ちゃん」


 太く育った樹にロープをかけ、絞首刑にされかけている妙齢の女性が一人。それを年端もいかない少女が女性の足場になって下から支えている。その周りを五人の男が取り囲み、口々にはやし立てている猟奇的風景だ。

 彼らの会話内容からすると、どの位の時間で少女が女性を支えられなくなり、女性が死ぬかで賭をやっているらしい。男の一人が懐中時計を手に楽しそうに時間経過を口にしている。

 少女は必死に女性を支えており、足が震えているにも関わらず支えるのを止めない。女性は少女に止めるように言っても同様だ。どうやら親子らしい。女性の方は暴行を受けた跡、少女は暴力を受けた跡があるのに見捨てるという選択肢は無いようだ。

 そんな中、男達がやって来た一行に気付き、取り分け新顔の用心棒予定の男に注目が集まった。


「おう、戻ったかマック。もしかしてソイツが?」

「ああ、だけど少し予定外の事があってな。ボスは?」

「あっちだ。町長を良い感じに揉んでいるところ」

「それより、何で女を吊しているんだよ。オレまだヤってないぞ」

「仕方ないだろエド坊や。吊しているのはボスの命令だ。用済みだからさっさと吊せってさ」

「マジかよ、今回オレ一人も女にありつけてないぜ」

「お気の毒にな、同情だけはしてやる」


 三人組の一人、エドと呼ばれた自動拳銃を腰に差している青年が肩を落としている中、用心棒予定の男はボスのいる方向に目をやった。マックと呼ばれたヒゲ面の男もそれに気付き、他二人をその場に置いて案内を再開した。と言ってもそれほど歩きもしない距離に目的の人物はいる。


「頼む、家族は助けてやってくれ。私はどうなってもいい、目的は私だろ? 家族は無関係だ。アシュトン君、お願いだ家族を解放してくれ!」


 目的の人物のすぐ近くに別の男性の人影。それが地面に這いつくばって目的の人物に縋り付いている。当の人物は木製のアームチェアに座って、這いつくばる男性を面白そうに観察するだけだ。


「お前の復讐に家族は関係ないじゃないか、私だけを殺せばいい。そうだろ?」

「――おう、帰ってきたかマック。そいつが代表か?」

「ボス、来たのはコイツ独りだけだ。他は誰も来ない」

「……辺境だから舐められているのか。クソ、口利き屋め調子の良いこと言ってコレか」


 地面に這いつくばっている男を無視して、アシュトンと呼ばれた男はマックと話を始める。

 このアシュトンがここにいる無法者達の頭目だと用心棒予定の男はあらかじめ知らされている。外見としては三十代半ば。荒野の男らしく日に焼けた肌とガッシリとした体格を誇っていた。赤みがかった茶色の長髪に縁取られた精悍な顔には一筋の刃物傷、目付きも鋭くいかにも無法者といった風情だ。

 アームチェアの横にはライフルが一挺。ボルトアクションの五連発、憲兵隊が以前に使っていたタイプ。膝の上にも拳銃、トグルアクションとシルエットが特徴的な自動拳銃だ。後はパンツの裾に隠してブーツにも何かあるようだ。

 用心棒予定の男がここまで観察すると、アシュトンの方でも探るような目付きで視線を飛ばしてくる。男の冷ややかな目とアシュトンの鋭い目が交わった。


「それで、お前何か得意なモノはあるか?」


 切り出してきたのはアシュトン。すでに考えを切り換えており、やって来た用心棒を見定めようとしている。何かアピールさせてみて、それによって与える給金を決めようとしているのだ。

 男もこの空気を察して、おもむろに懐に手を入れた。この場の二人を刺激しないようゆっくりと出てきた手には一枚の硬貨があった。

 1ゴルト硬貨。【学院】が製造流通させている貨幣だ。【学院】でしか製造が出来ない耐熱耐摩耗の樹脂で作られた正八角形のコインはユトヒの大地唯一の基軸貨幣になり、大地に住まう人間全てがこのコインを金として扱っているのだ。

 この樹脂製のコインをすぐ隣にいるマックに軽く放る。半ば反射的に受け取ったヒゲ面の男は目を白黒とさせたが、男は気にせず彼に指示を出した。


「そいつを人のいない方向に投げろ。出来れば思い切りな」

「なるほど、面白い。やれよマック」


 何をやるのか察したアシュトンはマックにコインを投げるよう促した。マックも一瞬だけ戸惑ったが、こちらもすぐに何をするか察して投げる方向を見定めた。

 投げる方向を決めたマックは中々に堂に入ったモーションで投擲を初め、手にあるコインを全力で荒野に向って投げた。

 直後、男の腕が滑らかに持ち上がった。手には手品のように一挺の拳銃が現れている。銃口の先は当然コイン。そして発砲。投げられたコインが撃ち落された。遠くで親子の首吊りショーをしていた無法者達も銃声に反応して何事かと騒いでいるが、この場の三人は気にしていない。唯一、這いつくばっている男だけは銃声に怯えて頭を抱えているが、それを気にする者はいなかった。

 アシュトンはアゴをしゃくってマックにコインを拾いに行かせ、戻って来たマックの顔に驚きの表情があるのに気付いた。


「ボス、これを。かなり出来る奴みたいです」

「ははっ、すげーなコリャ。訂正、口利き屋もいい仕事したかもしれないな」


 戻って来たコインは正八角形の形状を三つの弾痕で歪めていた。空中にあった1インチ程の大きさしかない硬貨に三発も当てて、それも銃声が一つにしか聞こえない程の速射で成されている。どれほどの腕前かは素人でも分かる凄まじさだ。アシュトンも思わず笑ってしまい、這いつくばる男にコインを投げた。彼は穴の空いたコインに目をやり、それをやった用心棒予定の男にも目をやる。だが視線が合うとすぐに元の這いつくばった姿勢に戻った。


「それにお前のその銃、パイソンか。腕の良いガンマンはパイソンを持つ事が多いと聞くが、本当なんだな」


 すでに男の腰のガンベルトに収まってダスターコートに隠れているが、回転式拳銃の中でも特徴的なシルエットはあの一瞬でもアシュトンは覚えている。

 ユトヒの大地において老若男女問わず手にする銃は遙かな過去、旧世界の時代に元設計があった。それを現代の銃職人(ガンスミス)がリバイバルしているのだが、その中でパイソンと呼ばれる回転式拳銃は伝説的逸話がある銃で、ガンマンの多くは一度は憧れる銃だった。

 アシュトンが言った逸話の一つ、腕の良いガンマンは腕の良いガンスミスに気に入られる事が多くパイソンを譲られる。そんな話もあって、現代においてパイソンはガンマンの中でも特別な目で見られる銃だった。

 そんな銃を腰に吊した男。先程披露した銃の腕前も合わせると新規に雇う用心棒はコイツ一人でも問題ないかもしれない。無法者達の頭目はそう考え、決断を下した。


「よし、いいだろう。サラリーは一日10ゴルト、今回来る予定だった用心棒どもに払う金の倍だ」

「分かった雇われよう。今からアンタがオレのボスだ」


 握手が交わされ、非常に簡易な契約が結ばれた。辺境では文盲も多く、書面でのやり取りなど堅い代物は役所ぐらいでしかありえない。だから大抵はこのように雇う者と雇われる者との口約束で契約が結ばれるのだ。

 契約を結ぶと、アシュトンの纏う空気が変わる。今までは鋭いながらどこか気怠げな雰囲気だったが、椅子から立ち上がり軽く深呼吸をすると獣性を剥きだしにした猛獣へと変わった。


「さて、新しい兵隊も雇った以上、お遊びもおしまいだな」


 横に立て掛けたライフルを手に取り、ボルトを操作、初弾を装填する。手早く立射姿勢で銃を構え、狙う先には未だに首吊りショーに興じている無法者達。

 発砲。ライフルの鋭く長い銃声が響き、それに驚いた無法者達がアシュトンに目を向けた。


「お前ら、遊びは終わりだ! 今から準備を始めておけ!」


 ボスのこの一声でショーはお開き、無法者達は命令通りに準備を始めようと屋敷に入っていく。残されたのは妙齢の女性と幼い少女。ただし、もうどちらも生きてはいない。アシュトンが撃った銃弾は少女の頭を正確に撃ち抜き即死させ、足場が無くなった女性はそのまま首を吊された。去っていく無法者達は賭けがノーゲームになったため、愚痴をこぼしたり金を出さずに済んで喜んだりしながら屋敷に入っていった。彼らには無惨に死んだ二人の存在などもう眼中にない。

 這いつくばっていた男はその光景に固まってしまい、次いで怒りの篭もった目でアシュトンを見上げてきた。妻と子供を殺された男の正当な怒りが顔中に広がっていく。


「アシュトン、お前は!」

「うるさい」


 今にも立ち上がって殴りかかろうとした男をアシュトンは無造作に蹴りつけた。すぐ後ろが丘の斜面だったこともあり、男はそのまま転がり落ちてしまった。幸い大した怪我もなく、すぐに起き上がった男は殴りかかろうとしてその足を止めてしまう。アシュトンがライフルの銃口を向けてきたからだ。


「憎いか、憎いだろうな町長。程良く小金持ちの充実した生活をしていたところに無法者の登場。妻は男共にマワされ、子供共々嬲り者。保安官は怯えて出てこない。腕の立つ助手はくたばった。んでもって妻と子供はたった今殺された。憎いよなぁ」

「貴様、こんな事をして【学院】が黙っているとでも――」

「思っているよ。【学院】なんてのは、正義の味方じゃない。連中が出張るのは魔導絡みの技術の時か、【学院】の施設に被害が出る時だけさ。こんな田舎の町一つが乗っ取られても出てくる訳がないだろう。これだから田舎者は……この程度の常識すら分かっていない」

「ぐぅ」

「けど、いいさ、アンタは逃げてもいいぞ」

「何?」

「逃げろって。見逃しやるよ。あっちの方角に丸二日歩けばツームストンの町だ。助けでもなんでも呼んでくればいい」

「……何のつもりだ」

「何だよ、今すぐ死にたいのか? だったらいいぜ」

「くっ」

「そうそうっ、走れ走れツームストンまで頑張れよ」


 何を思ったのか、アシュトンは男――発言からするとグリーンビレッジの町長――を見逃すと言って、ライフルの構えを解いて彼に逃げるように促した。

 突然の掌返しに町長は戸惑い、それでも今は逃げるのがベストだと判断したのかアシュトンに背を向けて走り始めた。フロックコートに革靴と走りに向いた服装ではないが、町長は構わず走っていく。

 アシュトンはその様子を見ながら、ついさっき雇ったばかりの用心棒に声をかけた。


「初仕事だ。あの町長を殺せ、出来るか?」

「了解ボス」


 気軽に町長を殺せと命令し、受ける用心棒も気負い無く応えて前に進み出た。ダスターコートの下から再び現れる青みがかった鋼の拳銃。

 用心棒は走って逃げる町長を目にしても慌てず銃を手にする。シリンダーを振り出し、空薬莢を三個抜き出して新しい弾薬を込め直す。給弾する間にも町長は逃げていくが、用心棒はやはり慌てない。

 拳銃を両手で構え、銃口を小さくなっていく男へと向ける。撃鉄が起こされてシリンダーが回る。町長の足はかなり遅いが、それでも100ヤード近い距離になろうとしていた。ここまでの距離だと普通ならライフルの出番だ。

 だが、用心棒は構わず引き金を引き発砲。町長はつんのめるように地面に倒れ、そのまま動かなくなった。


「この距離で拳銃の弾を当てるか。本当に良い腕だ。ああ、そう言えば名前はまだ聞いてなかったな」

「ロン、ロン・レイだ」

「オーケイ、ロン。どの位になるかは知らないが、これからよろしくな」


 荒野の無法者達は呼び名に頓着しない。その名前が本名だろうと偽名だろうと通り名だろうと、識別がつけばそれで良しとしている。だからアシュトンも用心棒が名乗ったロンという名を疑問もなく受け入れた。一緒にいるマックも同様だ。


「今日一日はゆっくりして旅の疲れを抜いてくれ。明日からは色々と働いてもらう。女はついさっき死んでしまったが、メシはそれなりの物が用意出来る。マック案内してやれ」

「分かった、付いて来な新入り」

「ああ、よろしく頼む」


 マックの案内で新しい用心棒ロンが屋敷へ向い、この場に居るのはアシュトン一人だけになった。

 彼は倒れたまま動く様子のない町長をしばらく見詰め、やがて興味が失せたのか鼻をひとつ鳴らして踵を返した。この時鋭いはずの目はなぜか緩んで寂しげな顔をしていたが、それを見ている者は『例外』を除いて誰一人いなかった。

 荒野を()く太陽はいつの間にか西の空に移り、無法者達の一日は今日もこうして終わるのだった。





 コンセプトは時代劇『三匹が斬る』+マカロニウエスタン+SFが少々。

 ウェスタン風を目指して書いてみましたが、いかがでしたか? レオーネ監督、西部劇は厳しいですね。

 西部劇の乾いた感じとファンタジーの生っぽさを上手く料理出来ていると良いのですが、これはこれからの課題かと自分では思っています。


 拙作『終末世界の創世記』がまだ執筆中なので、その合間を縫って書いています。ですので当面は不定期投稿となり、結構合間が空くと思います。ですが『終末世界~』ともども完結させるつもりですので、よろしくお願いします。

 2016年、改訂して再開しました。話を煮詰めて納得がいく物になったと思います。これ以降先にあるように不定期ながら連載をさせて頂きます。どうかよろしく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ