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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

(貞操逆転Ver.)カスとクズとザコとヘラ

作者: ドクエナガ
掲載日:2026/04/09

タイトルで分かる通りこちらは別バージョンです。

貞操逆転してない通常版は既に投稿済で、通常→貞操逆転の順で読むと倍楽しめると思います。

面白かったら評価とかお願いします。




【住宅街】




 その日はいつも通り、コンビニから彼女の家に向かって歩いていた時の事だった。




「……裏切者」


「え?」


 ――ドスッ




 突然背後から女に刺され、気が付くと白い空間にいた。


 目の前には、後光が眩しすぎる美女。




(絶対面倒くさいやつじゃん、これ)




【世界の狭間】




「あなたは死にました。なので、異世界に転移してもらいます」


「え~? 確かに流行ってるけど~」


「もちろん、チート能力(スキル)をあげますよ」


「う~ん」


「戦争で奪われた国に送るので、男が少ないですよ」


「うん?」


「ハーレムは合法です」


「むむ! そこまで言われては仕方がない!」


「ありがとうございます。では、チート能力をお選びください」




 そう言って、女神が紙の束を渡してきたので一枚ずつチェックする。




 ――ペラペラ、ペラペラペラ




「……この聖属性魔法のリザレクションって、自分にも使えるんですか?」


「使えますよ」


「じゃあこれで」


「分かりました」




 その後、聖属性魔法が使える人間は数が少ないとか、最初は冒険者ギルドに登録するのがおすすめとか、色々言われてから転移――




「ちなみに、男女の貞操観念が逆転しているので注意してください」


「は?」




 ……転移した。




【聖属性魔法】


 回復(ヒール) 怪我や病気を治す


 浄化(ピュリフィケーション) 汚れや不浄を消滅させる


 蘇生(リザレクション) 死者を蘇らせる




【トライリー王国】




 視界が切り替わると木造の家やでこぼこの道、走る馬車といった異世界ファンタジー定番の光景が目に飛び込んできた。


 しかし、男は全くと言っていいほど居らず、周りの全員がこちらを見ている……様な気がする。


 「あ~」と感嘆と何かしらの感情が籠った声を出しながら少し眺めた後、女神に言われた通りの道を進み冒険者ギルドにお邪魔する。


 女神の加護(パワー)で文字は読めるようになっているので、酒場や掲示板らしき物に興味を惹かれながら受付と書かれている所へ行き、美人の職員に話しかける。




【冒険者ギルド】




「あの、登録したいんですけど」


「は、はい、分かりました。あの、こちらの書類に、必要事項をお書きください。あっ、代筆は、必要でしょうか?」


「お願いします」


「……はい」


(普通に会話してるだけなのに、めちゃくちゃ緊張されてる。なんか顔赤いし)


「コ、コホン。気を取り直して。ではまず、お名前を――」




 彼女からの質問に答え、実際に魔法を見せ完成した書類を小さなコピー機みたいな道具に読み込ませると、TCGみたいなサイズの金属の板が出てきてそれを丁寧に手渡される。




「こちらが、ハジメさんの冒険者カードになります」


「ありがとうございます」


「ひゃっ」




 検証がてら、受け取る時にわざと指を触れさせると彼女は可愛い反応を見せる。


 声を聞いた奥の職員も、仕事の手を止めて羨ましそうにこちらを見る。




(本当に逆転してるんだな、この世界)




【冒険者カード】


 ハジメ 男


 ランク A


 スキル 聖属性魔法




「んんっ、ハジメさんは、貴重な聖属性魔法の使い手であり、希少な男性でもある為、Aランクからのスタートとなります。もちろん、戦闘試験もありません。ということで、登録完了です。これから頑張ってください」


「ありがとうございました」


「冒険者の活動について詳しく知りたい場合は、こちらの冊子をお読みください。……も、もし宜しければ、私がご説明させていただきますが?」


「お願いします」


「ありがとうございます! 冒険者とは――」




 冒険者ランクはGランクから始まり最高はAランクとなる


 冒険者はパーティーを組むのが基本である


 パーティーの場合ランクはメンバーの平均となる


 冒険者の主な仕事は魔物退治又は討伐である


 事前に掲示板から依頼書を取り受付で受理しなければ報酬は貰えない


 常設依頼は依頼書を取らなくても報酬が貰える


 依頼は自分のランクの一つ下から上までしか受ける事は出来ない


 依頼に失敗した場合罰金を支払わなければならない


 緊急クエストへの参加を断る事は出来ない




 等々、基本的な事を彼女から教わり、とりあえず全て覚える。




「説明は以上です。所で、この後――」




 彼女が何か言おうとした時、奥から来た職員が耳元でごにょごにょと何かを伝える




「分かりました。……申し訳ありませんハジメさん。ギルドマスターが一度お会いしたいと」


「いいですよ」


「ありがとうございます。では、こちらへ」




 そう言って立ち上がり、歩き出した彼女の後ろを付いて行く。


 受付の奥に入り二階へ続く階段を上ると、大量にあった視線が無くなったので目の前のお尻を軽く撫でてみる。




「ひゃっ!? ハ、ハジメさん!?」


「あっごめん、目の前にあったから、つい」


「い、いえ、私のでよければ……いつでも」




 彼女は恥ずかしそうにそう言うと、今度は誘うように揺らしながら歩き始めた。


 お言葉に甘えてセクハラしながら彼女の後ろを付いて行くと、すぐに目的の部屋に着いてしまう。


 お尻から手を離すと彼女は寂しそうな声を出したが、すぐに気を取り直し扉をノックする。




「あっ……ギルドマスター、ハジメ様をお連れしました」


「……入れ」


「失礼します」




 部屋に入ると赤い髪を短く切り揃え、獰猛な獅子の様な瞳と圧を持ったデキる女社長みたいな美女が奥の椅子に座って待っていた。




「初めまして、ハジメくん。私が――」


「え? どちら様ですか?」


「……君の目は節穴か? どこからどう見てもギルドマスターのアライネ様だろう」


「いえ、ギルドマスターはもっと……あっ! もしかして! 若返りの薬を――」


「クララくん? 君の仕事は彼をここに連れて来る事だけの筈だが? いつまでそこに居るつもりだ? この間も他の者は仕事をしているんだぞ? 皆に申し訳無いと思わないのか?」


「怖! 分かりましたよ。戻ればいいんでしょう、戻れば」




 クララさんは不満そうにギルドマスターを睨みながら部屋を出ていった。


 それを確認すると、彼女は嬉しそうにこちらを向く。




「さて、これで漸く話が出来るな。私がギルドマスターのアライネだ。まずは席にかけてくれたまえ」


「ハジメです。よろしくお願いします」


「ああ、よろしく」




ーーーー







 返事をした後、彼は言われた通り席に着いた。


 その後、聖属性魔法が使える男なのになぜ冒険者を選んだのか、どこから来たのか等色々聞いたが適当にはぐらかされた。


 納得はしていないが、機嫌を損ねて辞められたら大問題なので深くは追及しない事にする。




「そうか。ところで、宿は何処を利用している? もしあれなら、信頼できる宿に紹介状を書いてもいいが」


「まだ決めてないです。お金が無いので安い所――」


「それはダメだ! ……あっ、いや、急に大声を出してすまない」


「いえ、大丈夫です。心配してくれたんですよね、嬉しかったですよ」


「……ハジメきゅん」


「え?」




 彼の優しさに思わず女の部分が出てしまうが、(キャラ)ではないのでなんとか誤魔化す。




「な、何でもない。とにかく、安い所はダメだ、家に来なさい。私は元Aランク冒険者だからな、君を守ってあげられるぞ?」


「何するつもりですか」




 彼に呆れたようなジト目で見られ、少し興奮する。




「そうだな、余り知らない女と二人きりは嫌だよな。なら、ギルドの寮部屋はどうだ? セキュリティもしっかりしてるし、宿泊料もタダでいい」


(流石にいきなり家は無理か。しかし、恩を売ればいずれは……ぐふ、ぐふふ)


「……ありがとうございます。アライネさんって、優しいですよね。それに綺麗だし、仕事も出来て」


「ハ、ハジメくん? いきなり何を」


「俺、アライネさんの事、好きになっちゃったかもしれません。もっと近くで話しませんか?」


「あ、ああ」




 そう言って、彼は座っているソファの隣を優しく手で叩く。


 私は自分の欲求に逆らうことが出来ず、余裕を持って……少し距離を置いて彼の隣に座る。


 すると、彼は距離を詰めて体を密着させ、左手で私の肩を抱きもう片方の手で太ももを撫でる。




「お、おい」


「アライネさんさぁ、ずっと厭らしい目で俺のこと見てたよね? 知ってる? 男ってそういう視線に敏感なんだよ?」


「す、すまない」


「でも、嬉しかったよ。俺も……アライネさんの事、そういう目で見てたから」


「ハジメ……くん……」


「ねぇ、アライネさんは、どうしてほしい?」


「……いっぱい……褒めてほしい」




 私の心は、既に彼の事しか考えられなくなっていた。


 お手本の様なハニートラップだと僅かに残った理性が警告を出す。


 しかし、彼が私の頭を撫でた瞬間、僅かに残った理性は一瞬で消え去り……私は赤ちゃんになった。




「よしよし、アライネちゃんは毎日頑張ってて偉いね~」


「あう~、ハジメパパ~」




ーーーー




 アライネさんと仲良くなった後、一階へ戻ると全員が赤い顔でチラチラ見てくるが気付かない振りをする。


 無料の宿を確保出来たので依頼を受ける必要が無くなり、夜までどうやって時間を潰すか考えていると掲示板の前で落ち込んでいる中学生くらいの少女が目に入る。


 その少女は茶色の髪を腰まで伸ばし、初期装備みたいな布の服を着た村人Aみたいな少女だった。




「……はぁ」


「どうしたの?」


「いいクエストが無くて、このままじゃ馬小屋……え?」


「君一人? だったら俺と、パーティー組まない?」


「え?……ええええええっ!?」




 めちゃくちゃ驚かれた。




「あ、あの! わたし弱いですよ!? 試験に落ちてGランクになった雑魚ですよ!?」


「へ~そうなんだ」


「そ、それに、わたし……女ですし」


「見れば分かるよ? 可愛いよね」


「へひゃは!?」


「俺とパーティー組むのは、嫌?」


「い、嫌じゃないです」


「じゃあ決まり。俺はハジメ、よろしくね」


「ソラ、です。あの、よろしく、お願いします」




 そう言ってお互いに自己紹介を済ませ、正式にパーティーを組む。




「早速依頼受けようか。最初だし薬草採取で良いよね?」


「い、良いと思います。わたしじゃ魔物を倒すのは難しいですし、低ランクの仕事では宿代も稼げませんから」


「緊張してる? ほら、もっとリラックスして」


「ひゃ、ひゃいぃ」




【トライリーフォレスト】




 その後、街を出て、クララさんに聞いた薬草の群生地がある森でのんびり採取していると




「シャァァァァァァ!」




 突然、額に角を生やした兎が草むらから現れた。




「ひゃっ!? あっ! ホーンラビットです! ど、どうしましょう!?」


「戦うに決まってるでしょ……ソラちゃんが」


「そっ、そうですよね……えい!」


 スカッ


「えい! えい!」


 スカッスカッ




 ソラちゃんは何度も剣を振るが全て躱され、ついにはカウンターで首を貫かれる。


 倒れて動かなくなったソラちゃんを見て、死んだと確信したのかターゲットがこちらに変わる。


 しかし




「まだ、終わってないよ?」




 そう言った瞬間、背後でカサリと音が鳴ったホーンラビットは慌てて振り向く。


 そこには、不思議そうな顔で体を起こしたソラちゃんがいた。




「あれ? ここは……」




ーーーー




 目を覚ました私は、体を起こし周りを見渡した。


 すると、笑顔のハジメさんと、驚いた顔のホーンラビットがこちらを見つめていた。




「え~と?」


「ソラちゃんは首を貫かれたんだよ。そして、俺が治した」


「あっ! そうだ、わたし、ホーンラビットと戦って、それで」


「ほらほら、ぼーっとしてる暇は無いよ?」


「え? きゃあ!」




 ハジメさんに指を指されホーンラビットの方を見ると、いきなり突撃されたが体を転がしてギリギリで回避に成功する。




「どんな怪我をしても治してあげるから、思う存分戦ってね」


「ひ、酷すぎませんか!?」


「シャァァァァァァ!」


「ほら、頑張れ頑張れ」


「う、うおりゃああああ!」




 それからたくさんの(実際は短かったかもしれない)時間を掛けて、わたしはホーンラビットに勝利した。




「はぁ……はぁ……つ、疲れました」


「あれ? 体力も回復する筈なんだけど」


「……精神的な話です」


「まっ、何はともあれお疲れ様。よく頑張ったね、ソラちゃん」


 パチパチパチパチ


「……ありがとうございます」


「怒ってる?」


「ハジメさんは……鬼畜です」


「ごめんね。こんなクズとパーティーなんて嫌だよね」


「……え? い、いえ!? そこまでは!?」


「それじゃあ、これからも一緒に居てくれる?」


「は、はい。あの、そういう言い方、止めた方がいいですよ。勘違いされちゃいますから」


「勘違いじゃないかもよ?」


「ふえ?」




 そう言われて、思わず顔が熱くなる。


 だってハジメさん、性格はアレだけど、顔は凄くかっこいいし。




「あ、あの、それって、どど、どういう」


「それは……また夜に、ね?」



 そう言って、ハジメさんはとても蠱惑的な笑みを浮かべる。


 わたしの脳内は、一瞬でピンク色に染まりきった。




【冒険者ギルド】




「お~い、ソラちゃ~ん」


「……はっ! あれ? ここは?」


「ギルドの寮部屋だよ。ついでに言うと、もう夕方だったり」


「へ?」




 そう言われ周りを見渡すと、タンスやテーブル、そして……大きなベッドが一つ、目の前に堂々と置かれていた。




「はいこれ、ソラちゃんの分のお金ね」


「あ、ありがとうございます」


「ちなみに、もう宿は決まってるの?」


「いえ、まだです。いくら稼げるか、分からなかったので」


「なら、この部屋に一緒に泊まらない?」


「え!? いえっ、それは」


「お昼のアレ、どういう意味か知りたくないの?」


「……ゴクリ……し、知りたい……です」




 そう答えると、ハジメさんはわたしの手を引っ張りベッドの上に押し倒す。


 本来なら女のわたしがリードしないといけないのに、体に力が入らずそのまま流されてしまう。


 ハジメさんはわたしの頬に優しく手を添えると、ゆっくりと顔を近づけてくる。




(うわ、うわ……し、しちゃうんだ、本当に、きっと、最後まで。ど、どうしよう、わたしも、何かした方がいいのかな?)




 当然こんな事初めてで、どうすればいいのか分からなかったわたしは……とりあえず目を閉じた。




「……んっ」




ーーーー




【トライリーフォレスト】




 あれから、何日も経った。


 わたし達は正式にお付き合いを始め、薬草を採取しながらたまに乱入して来る魔物を(時間を掛けて)倒す、そんないつも通りの日々を過ごしていた。




「ブモォォォォォォ!!」




 しかし、この日乱入して来たのはこの森でも上位の強さを持つ、巨大なイノシシみたいな魔物グランドボア。


 わたし達では逆立ちしても絶対に勝てない、圧倒的な強者がこちらを睨み付けていた。




「ハ、ハジメさん! 逃げてください!」


「ソラちゃんは?」


「ハジメさんが逃げたらわたしも逃げます!」


「噓だね」


「でも、それしか!」


「大丈夫だよ……リザレクション」




 その瞬間、視界が白く染まり何も見えなくなる。さらに




「ひゃあ!?」




 何かに――恐らくハジメさんに持ち上げられ、風を切るような感覚に襲われる。




「何!? 何が起きてるんですか!?」


「しー、静かに。音で気づかれる」


「もが……」




 何が起きたか分からず焦って大声を出すと、ハジメさんに手で口を塞がれる。


 体を枝や葉で傷つけられながら運ばれ、目が見えるようになった時には既に森の外だった。


 ハジメさんは体勢を整えると、わたしを優しく地面におろす。




「あ、ありがとうございます。えと、あの時何が?」


「あの時は……まず魔法っていうのは魔力を注げば注ぐ程威力が上がって演出も豪華になる訳ねだから大量に魔力を注いで光の演出を豪華にしたリザレクションを目の前で発動することで目潰して遠くに小石を投げて気を取られた所でソラちゃんを担いで反対方向に逃げて体臭とかの痕跡をピュリフィケーションで消してヒールを掛け続ける事で疲れない体にしてひたすら――って感じかな」


「……ヘー」




 何を言っているのか半分くらい分からなかったけど、取り敢えず分かった振りをする。




「流石に今回はヤバかったし、仲間を増やそうと思うんだけど」


「そうですね。わたしも賛成です」


「後、夜にお仕置きね」


「……はぃ」




ーーーー




【冒険者ギルド】




 次の日、ソラちゃんと一緒に冒険者ギルドに行き、クララさんに一人で活動している高ランク冒険者の情報を教えてもらう。




「そうですね~。今一人で活動しているのは、王宮から追い出された魔法使いと、刃傷沙汰を起こした剣士の二人ですね。二人ともAランクですよ」


「……もう少しマシなのはいないの?」


「高ランクにも拘らず一人で活動しているということは、パーティーを組めなかったという事なので」


「ふ~ん」


「ちなみに、あそこで飲んでるのがリィンさんですよ」




 そう言われて酒場を覗くとお手本の様な魔女服を着て、長い青髪を床まで垂らした酔っ払いが居たので早速話しかける。




「初めまして、俺はハジメ。こっちはパーティーメンバーのソラ、Aランク冒険者のリィンさんですよね。俺たちの仲間になってくれませんか?」




ーーーー




「なぜです師匠! なぜ、私の研究を認めてくれないのです!」


「あなたが、魔法を信仰しているからよ」


「魔法に果ては無い! もっと! もっと深くまで覗く事が出来れば!」


「魔法は力であって、神では無い……それを理解出来る様になるまで、あなたの王宮への禁じます」


「師匠!」


「冒険者にでもなって、仲間をつくりなさい。そうすれば……私の言っている事が、少しは理解出来るでしょう」




 師匠に捨てられたあの日、私は冒険者になった。


 活動を続けている内に、色々(いろんな)(やつら)からパーティーに誘われた。


 しかし、私に全て押し付ける奴、文句ばかり言う奴、気持ちの悪い目で見てくる奴。


 一体何があれば、こんな奴らを仲間と呼べるのだろう。


 そして気付いた。師匠は私の事が嫌いなんだと、顔も見たくないから王宮から追い出したんだと。


 それから私は、現実から目を背ける為娯楽に手を出した。


 酒とギャンブル、この二つさえあれば人は生きていける。


 だから今日も、私は一人で酒を飲む……筈だった。




「初めまして、俺はハジメ。こっちはパーティーメンバーのソラ、Aランク冒険者のリィンさんですよね。俺たちの仲間になってくれませんか?」




「はあ? ……え、男?」




 一瞬で酔いが覚め、思わず疑問が口に出る。


 「そうですよ」彼はそう言って私の前に座ると、優しく手を重ねてくる。


 肌から伝わる硬い感触や、ここからでもほんの少し感じる男性特有のいい匂いが私の脳を刺激する。




「聞きましたよ。リィンさんって、凄く強いんですよね。俺達、どうしても倒したい魔物が居るんですけど」


「そ、れは」




 男に必要とされるのは嬉しい。凄く嬉しい。


 けど、過去の経験が、素直に喜びたい私の心に蓋をする。




「気持ちは、嬉しいわ……でも、ごめんなさい」


「もし入ってくれるなら……良い事、してあげますよ?」


「う、うそよ」


「本当ですよ。守ってもらうんですから、お礼をするのは当たり前じゃないですか」




 彼はそう言いながら少し前のめりになると、自分の服の胸元を引っ張り中を見せてくる。


 ポタポタと、机に赤い染みが出来上がっていく。




「……ゴクリ」


「仲間になってくれるなら、もっと良い事、してあげますよ?」


「……ほ、ほんとに?」


「もちろん……部屋、行きます?」


「行く」


「じゃあ、着いて来て下さい。ソラちゃんはどうする?」


「特にする事も無いので、リィンさんがよければ一緒がいいです」


「もちろん、構わないわ」




 存在を忘れていた後輩に言われ、なけなしのプライドで余裕を持った態度を見せすぐに後悔する。




(やらかした、他人に見られるだけでも恥ずかしいってのに。初めてで余裕の無い姿まで見られるのが確定した……し、死にたい)




【トライリーフォレスト】




 数日後、森へやって来た俺達はグランドボアと戦っていた。




「サンダーランス」


 ――ズガドオオオオオオン!




 リィンがそう言いながら杖を振ると雷の槍が空から落ちてきて、グランドボアの胴体を消し飛ばした。


 支えを失った顔と後ろ足がどちゃりと地面に落下し、赤い水たまりを作っていく。




「えっ強、一撃じゃん」


「……わたし達の苦労は一体」


「あのねぇ、言っとくけど私、王宮魔術師の一番弟子だから。……元だけど」


「え? 何か言った?」


「何でもな~い」




 無事に復讐――もとい討伐を終わらせ、ヒールで直した死体をリィンの魔法で異空間に収納し街に帰った。


 グランドボアの死体はそれはそれは高く売れたので、二人の服や装備を購入した。




「ソラちゃん可愛い~、お姫様みた~い」


「え~? それは言い過ぎですよ~。えへ、えへへ」


「……ねぇ、私は?」


「凄く綺麗だよ、リィン」


「そう」




ーーーー




【冒険者ギルド】




「ランクアップおめでとうございます。ソラさん、これからも頑張ってくださいね」


「ふわ~……見て下さいハジメさん! Fランクですよ! Fランク!」


「おめでとうソラちゃん。よーしよしよしよしよしよし」


「えへへへへ~」


「何やってんのかしら、こいつらは」


「ふふっ、実は混ざりたかったり?」


「……そんな訳無いでしょ」




 Aランク冒険者のリィンが仲間になった事で魔物討伐系のクエストが受けられる様になり、収入が増えギルドでさらに噂される様になってきたある日。


 珍しく一人でギルドに居ると、知らない女が甘ったるい声で話しかけてきた。


 そこに居たのは長い紫の髪を左右で結び、黒いドレスの様な装備を身に着けた地雷系みたいな見た目の女だった。




「あの~、ハジメさんですか~?」


「そうだよ、俺に何か用かな?」


「やっぱり~、かっこいいって聞いてたから~、すぐに分かりました~。本当に~、男の人なんですね~」


「そうだよ。君、可愛いね。俺の部屋で遊ばない?」


「良いんですか~?ぜひ~……いっぱい、愛して下さいね。ハジメさん」




ーーーー




「あいつ、愛してるって言うだけで何でもするんだぜ? きもいよな」


「え~? あたし以外にそんなこと言うなんて酷~い」


「そのおかげで楽出来てんだから許してくれよ。俺が本当に愛してるのはお前だけだって」


「それは分かってるけど~」


「これ食い終わったら、いっぱい愛し合おうな」


「は~い」


「……楽しそうだねぇ……その女、誰?」




 みんな、みんな、本当に噓ばっかり。


 愛してるって、大事なんだって、幸せになってほしいって……そう、言ってたのに。




 物心がついた時、わたしは孤児院に居た


 両親の顔を、わたしは知らない


 周りの子供達は、わたしの事を虐めて笑った


 先生は、助けてくれなかった


 将来を誓い合った彼氏は、他の女と結婚していた


 あと少しで、殺せたのに




「……嫌な夢」




 ギルドの一室で目を覚ましたわたしは、頭を動かして横を見る。


 左を見るとスヤスヤ寝ているダーリンと、ダーリンの体に抱きついて寝ているリィンが居た。


 右を見るとだらしない顔で涎を垂らしながら寝ているソラちゃんが居た。


 それを見たわたしは……もう一度目を閉じて、二度寝をするのだった。




「ふふっ、幸せだなぁ」




ーーーー




 ユアが仲間になってから数日、リィンから一緒に王宮に来てほしいとお願いされたので二人でやって来た。


 巨大な門をくぐりメイドに案内された部屋で座って待って居たのは、長い緑の髪を床まで垂らし、その大きな胸を強調するようなドレスを着た糸目のお姉さんだった。




「久しぶりね、師匠」


「よく来ましたねリィン。そして初めまして、私はアニマ。この国唯一の宮廷魔術師です」


「どうも、彼氏のハジメです。よろしくお願いします」


「……仲間ではなく、彼氏ですか。変われば変わるものですね、あの魔法馬鹿が」


「師匠、余計な事は言わなくていいから」


「そうですか。それで、今日は何の用でこちらまで?」


「いや、普通に王宮への立ち入り許可を貰いに」


「許可を与えましょう」


「あと、幸せのお裾分けに」


「……はい?」


「師匠、夫が居なくなってから欲求不満でしょ? だから、私の彼氏貸してあげようかな~って」


「何を……言っているのですか?」


「そういう訳で、私は魔法の研究してくるから。後はごゆっくり~」




 それだけ言って、リィンは部屋を出ていった。




ーーーー




 馬鹿な弟子が馬鹿な事を言って出ていった後、彼は私の隣に座ると体を密着させてきた。



(アイアン・ハート! ……ふぅ、落ち着いてきました)


「申し訳ありません。あの馬鹿の事は無視して下さい。ハジメくんも、私の様な年寄りには興奮しないでしょう?」


「余裕でしますけど」


(くっ! アイアン・ハート!)


「それに、私は一度夫に操を立てた身、浮気はできません」


「大丈夫ですよ。ちょっとリアルな玩具で欲求を解消するだけですから、浮気にはなりませんって」




 そう言いながら彼は私の膝に上に移動すると、背中に手を回し優しく抱きついてくる。


 彼から感じる匂いや感触が、私の理性をドロドロと溶かしていく。




(あっ、あっ、ダメよ、いくら欲求不満だからって、こんな……こんな、かっこよくて優しくていい匂いもする若い子に浮気するなんて、絶対にダメ……ダメなのに)


「そ、そうよね。玩具で遊ぶだけなら、浮気じゃないわよね?」




 先の葛藤は何だったのか、結局私はハジメくんに身を捧げた。


 一回だけ、一回だけだからと思いつつ、途中で自分からから何度も求めて普通に浮気した。


 でも、これは仕方のない事だと思う。だって、夫とはもう二度と会えないんだし。


 私が新しい恋を見つけても、きっと許してくれる筈。いつも言ってたものね。




 お前が幸せなら、それでいいって。




ーーーー




 その後、王女に求婚されたり、エルフに信仰されたり、聖女と共に多くの命を救ったりしたが




 それはまた、別のお話。




 ―完―




初投稿→ハジメ

純粋→ソラ

鈴の音→リィン

夢→ユア

(受付)嬢→キャバ→クララ

アラクネ→アライネ

生命魔法→アニマ

リトライ→トライリー

Tier1→ワティア(帝国)


ワティア帝国(本編未登場)

トライリー王国を戦争でボコって男を根こそぎ奪っていった国

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