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精霊使い  作者: 黎奈
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第五十二話 疲労抱えて決勝戦

「・・・わからない」


シンジは短く答えた。


それは本心から出たものだと思う。


「そっか・・・。

じゃあ、狙われたとかはないってことだよね。

私じゃあるまいし、狙われるわけないね。

じゃあ、あの香りは偶然のだったのかもしれない。

窓が開いてるからもしかしたらそこから来たのかも。」


私は窓を示して言う。


「・・・・」


シンジは何も言わない。


「・・・・」


この空気非常にやばい気がした。


「シンジ・・、動ける?

動けたら夕食食べに行こ?」


私は戸惑いながらも聞いた。


「あぁ」


シンジは頷いて立ち上がった。


顔色がいまいちだが足取りはしっかりしていた。


「ゆっくり歩いていこうね?」


「・・・・」


私はそう呼びかけて部屋の扉を開ける。


すると、廊下から奇妙な香りが漂ってきた。


「うっ」


思わず来た吐き気に私はうめき、扉を閉める。


一瞬開けた扉の隙間から入ってきた香りは部屋に充満した。


「っ・・・」


シンジは小さくうめきひざを突いた。


「ぅ・・・・、ルーリラ、ルーリラ」


私は呼びかけの言葉をつむぎだしながら人差し指を立てて渦を描いた。


すると・・・


ヒュゥルルルゥ


風があっという間に香りを消し去った。


「ぅぅ・・・」


私もたまらずひざをつく。


シンジは頭を手で押さえる。


私は口元に手を当てる。


もしかしたら・・・これも意図的な何かがあるかもしれない。


私はそう予感した。


吐き気を何とかこらえてシンジのところへ駆け寄った。


「シンジ・・・。

ごめん、気づかなかった。

廊下に・・・他の香りがくるとは思っても見なかった。

今・・癒すから・・・。」


私は片手をシンジの額に、そしてもう片方はシンジの胸元に手をかざす。


はぁっ!!


私は気を手のひらに集中させシンジを光で包んだ。


私の吐き気はひどくなり、シンジの頭痛は癒される。


シンジを光で包み込みながら


「少しは呼吸も・・・らくに・・・なるから・・・

ずつう・・も・・・・すこしは・・・・・・ましに・・・なると・・・おもう」


と、途切れ途切れに言う。


あの奇妙な香りは疲労を呼び起こすものの香り。


偶然なわけがない。


「うぐっ」


私は急激に来た吐き気に思わず口元を押さえた。


呪文も中断される。


「っ・・・。おい」


シンジが私を見て言う。


「・・・」


「うっ・・・・・・な・・に??」


私は吐き気を抑えながらようやく声をつむぎだす。


「無理をするな。」


シンジは私を見つめ、一言言った。


「シンジだって・・・。無理してる。」


私は言った。


「・・・・」


シンジは黙りこくる。


「今日、この部屋から出ないほうが良いかもしれない。

夕食は・・そうだなぁ・・・リュックに詰めてあるもので何とかなると思うから。

明日に備えて・・今日は早く寝たほうがいい。」


私はそういって窓のほうへ向かい、窓を閉めた。


「あぁ」


シンジは頷いた。


私はリュックからごそごそといろいろ取り出した。


リュックの中で通信機が鳴っていたことに私は気づいた。


私は通信機を手にとって耳元に当てた。


「もしもし」


そう言って相手のほうを伺う。


「あ、ルミル?よかった、出てくれて。」


相手はミヨだった。


「ミヨ?どうしたの?突然。」


私は聞いてみる。


「ルミルは気づいた?

廊下に奇妙な香りがしたのを。」


「うん、してた。

ついさっき、それにちょっとやられたの」


「え?ほんとに?

だとしたらもうあれは吸わないほうが良い。

吸うと障害が起きる。」


「やっぱり?

さっきちょこっとだけ障害がね。

あれは何の仕業だと思う?」


「たぶん意図的なものよ。

きっと、おそらくは。

でも、あれは薬品の香り。

薬品を扱う 薬師 がいるのかもしれない」


「薬師かぁ。

だったら、魔薬師じゃない?

だってあれは明らかに有害だもん」


「そうね・・そうかもしれない。

でも払うことはできるから。

じゃあ、私はこの辺で。

これを知らせたかっただけだから。」


「うん、ありがと」


「いえいえ^^

じゃあ、また。

明日頑張ってね?」


「うん、じゃあバイバイ」


ポチ


通信機を切って私はシンジの方に向き直った。


「やっぱり・・あれ、意図的なものらしいよ。」


そう呟いた。


「・・・」


シンジは黙ったまま私を見据える。


「まぁそれはともかく早く夕食食べて寝ようね?」


私はわざと明るく言った。


シンジの表情見るとちょっと空気が重いから。




この後、夕食食べて風呂を交互に入ってそれで寝た。







そして朝。


今日はいつもよりだるい朝を迎えた。


それはシンジも同じだったらしい。


「今日さあ、なんかだるいよね?」


「あぁ」


シンジは私の言葉に頷いた。


シンジも感じているらしい。


シンジは酔いのせいもあったからかもしれないが。



このあと、部屋を出た。


廊下からは奇妙な香りはしなかった。


だから朝食を食べに行って、少し時間を置いてホールへ向かった。


うーん、時間がたつにつれだるさが増すのは気のせいだろうか?


「・・・だるい」


シンジが歩きながら小さく呟いた。


まるで私の心を察したかのように。


「やっぱりシンジもそう思うんだ・・・。

でも試合だし、そうもいってられないよねー」


私は呟くように言った。




それからバトルフィールドまで歩いていった。


そして決勝戦が始まる。






相手二人はなぜか白い白衣を着ている。


白衣?


もしかして・・・・


私の頭に嫌な予感が駆け巡った。


私は頭の中で決勝戦相手を調べたときのプロフィールを見た。


一人は男。


ダテメガネをかけた不気味なオーラを放つ人。


名は、サイト。


見るからに文学とか物理とか化学とかを極めてるような人。


そして、もう一人は、女。


髪を結い上げポニーテールにして、白い白衣を着た人。


まるで医術師?と間違えられそうな人。


名は、エルー。



そんなものを見てすぐに頭をよぎったのは昨日の香り。


もしかしたらこの人たちの仕業かも。


そんな推測が出てきてしまう。


頭でそんな推測をしていると、


「あなたたち、お疲れのようですね?」


と、向かい側から声をかけられた。


「それは、あなたたちのほうが理解してるんじゃないんですか?」


私は挑発するように聞く。


「ほほう。私たちを疑いますか?」


「疑うも何も。白衣姿を見れば誰だってねぇ。」


私はもったいぶった口調で言う。


この言葉には二つの意味が込められていた。


それは 香りをしかけたのはあんたたちだとお見通しなんだよ って意味と

  

   白衣なんぞ着てたら誰だって医術関係がかかわっていると相場を踏むでしょう?


という二つの意味。


香りを仕掛けたのがあいつらなら前者のように解釈するであろう。


香りを仕掛けた奴じゃないならおそらくは後者のほうで解釈するだろう。


疲れた様子が理解できるのは香りを仕掛けた奴か医者関係しかいないだろうから。


「ほう、あなたにはお見通しでしたか。」


サイトは言った。


「お見通しと言うより、あくまで憶測で言っていたけどね」


私は挑発するように言う。


「憶測なんかで人を疑うんじゃないよ、」


エルーが割り込んでいった。


「あれ?白衣姿見たら誰でも疑いそうなもんだけどなぁ。

ポケットには薬品はいってるし。」


私は白衣のポケットを指差して言った。


「なに!?

この距離でお前は・・・。

いいだろう。その度胸気に入った。

うちらの実験材料にしてやるよ」


エルーがにらみながら言った。


「実験材料?

おー、怖い怖い。

それは勝ってからいう言葉じゃなぁい?」


「その挑発受けてたった。

いいだろうやってやろうじゃない。」


エルーは言った。


そのとき、


「では、両者、はじめ!!」


と、審判が言った。


そして体のだるさと戦いながら精霊を呼び出した。


「ウィーミア、ステージ、オン!」


「アーウィル、バトルスタンバイ」


「レドム、実験開始!」


「エスーフィア、やっちゃいなっ」


四人は精霊を出した。


サイトが出したのは雷属性の精霊。


エルーが出したのは念力属性の精霊。


念力はその字のごとく、ものを念で・・・気の力で自由自在に操れる力。


そういう属性もある。


はっきりいうと相性が悪い。


アーウィルは水属性。


ウィーミアは風と音。


雷と水はちょっと相性が悪い。


しかも念力と音は互角だ。


んー危ないなぁ。


まぁ、なんとかなるなる。


私は前向きに考えた。


そしてバトルに集中する。


「レドム、あっちにサンダーをやってください」


「エスーフィア、念力でやっちゃいなっ」


二人は叫ぶ。


「アーウィル、避けろ。」


「ウィーミア、音で粉砕、それと、念力封じ!!」


こっちも叫ぶ。


ダダーン!!


雷が地に降り立つ。アーウィルのいた場所に。


ズズズッ・・・・グシャ・・ボトボトボト


念力で動かされた岩石は音で粉砕された。


「レドム、金縛り!」


「エスーフィア、援護!!」


レドムによって私たちは瞬時に空気に縛られた。


「くぅっ」


「ちっ」


私はうめき、シンジは舌打ちする。


「ウィーミア、・・っ・・・・竜巻!!」


私は苦痛に耐え、何とか命じる。


この金縛り、天寿の力があればどうってことはない。


だが、それだとちょっと後からの反動が苦しい。


これは長期戦になりそうだから。


ゴゴゴッゴ!!!!


竜巻が起こる。


「アーウィル、・・・っ!・・」


シンジは苦しくて命じることができない。


「レドム、雷だ。」


「エスーフィア、竜巻を消しちまえ」


二人は命じる。


このままじゃ、やばいな・・・


「ウィーミア、竜巻をもっと作って。

それと・・っ・・・波動刃!!」


私は思い切り叫ぶ。


ゴゴゴゴゴっー!!・・・・スシャッシュシャシャシャシャーーーー


ウィーミアは竜巻を作り出し、それをエスーフィアが消していく。


ダダン!!・・ダダン!!ダダッー!!


レドムの雷をアーウィルはことごとく避けていく。

だが、多少腕をかすった。


「っ・・・アーウィル、フローズだ!!」


シンジは苦痛で顔を歪ませ命じる。


アーウィルは雷をガシッと素手でつかんだ。


ビリビリリッ・・・


そんな音が聞こえた。


金色(こんじき)色の雷はやがて青色に変わっていく。


「レドム、金縛り強化。」


サイトが命じる。


ぐぐっ


金縛りのせいで痛みが体を突き抜ける。


「う””ぁ”っ”」


シンジがたまらず悲鳴を上げる。


シンジはひざをがくっとついた。


シンジの体から魔力が吸い取られているように見える。


シンジは歯をくいしばって立ち上がろうとする。


シンジ・・やめて。

もう、そんなに無理しないで。

おねがい・・・

私よりひどい目にあってるあなたを見たくない・・・


どんなに願ってもそれは口に出してはいけなかった。


そしたら、シンジの今の行為は無駄になってしまうから。




シンジのためなら・・・・シンジを救うためなら・・・

天寿の力を解放する!!


「ウィーミア、蛇旋律!それと、竜巻で香りを封鎖!!」


私はそう言って天寿の力を解放させた。


ギギィ・・ぎぎぃ


金縛りの力が私に抵抗している音が聞こえる。


私は腕に力を込めて


はぁっ!!!


と、気を放った。


ブチッ!!!!


金縛りの縄が切れた。


そして私は自由になると、シンジに手をかざし、


「解き放て!!」


と、声を張り上げる。


ブチッ


金縛りが溶けた。


シンジはガクッとひざを突く。


「なに!?」


サイトが驚愕した声を上げる。


シューールルルゥ


ウィーミアの蛇旋律はレドムを拘束した。


そしてひそかに放っていたエスーフィアの香りも消し去った。


「くそっ、ばれてたか!!!」


エルーが叱咤した。


「アーウィル・・・うぅっ!」


シンジは立ち上がろうとしながら

アーウィルに命じようとするがうめきで中断される。


「シンジ、むりしないで」


私は言う。


だが、


「俺を甘く見るな」


の、一言を言い返された。


「・・・・・」


私は何もいえなかった。


「ッ・・・アーウィル、ラガルスラーシャ!!」


シンジは苦痛で顔をゆがめながらも命じた。


「エスーフィア、レドナクラスト!!」


エルーは立ち直り命じた。


アーウィルの持つ青い雷の刃に青い輝きが生まれた。

破壊力と鋭さが含まれた武器にそれは変化した。


エスーフィアの尻尾が増えた。

そしてその尻尾は強大な威力を誇る武器と化した。


念の威力でそれはさらに増した。


その二つの武器が炸裂し合った。


互いが互いを攻撃しあう姿。


キン!!・・・キン!!・・・・キギィ!・・・


刃物が交わう音。


それが幾度か重なったとき、アーウィルに隙ができた。


グサッ


そこをすかさず、エスーフィアが突き刺した。


グイ


アーウィルはそれを手に持った。


「ラドレフローズボルト!!!」


シンジがそこで声を張り上げた。


次の瞬間、アーウィルからエスーフィアに何かが伝わった。


「グワァッァァァァ!!!!!!」


突如エスーフィアの悲鳴が鳴り響いた。


青い光がエスーフィアを飲み込んだ。


それがエスーフィアを苦しませる元だろう。


「ウィーミア、レドムに、地獄暴風蓮焼じごくぼうふうれんしょう!!」


私はそれを呆然と見ているサイトたちに当てるよう命じた。


ズドウグルルルルゥ!!!!!


音、風、炎、それら全てが狂った技。


これを受ければ、もう動けまい。


「レドム、ルドラレルゴ!!」


レドムの出した技は狂った技に飲み込まれた。


そして



ドッカーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!



爆発した。


爆風に飲み込まれ、私たちは吹っ飛ばされた。


それは相手も同じことだった。


相手も相当な痛手を負っただろう。






今回長いです。

戦闘は終盤ですが次回に続きます。

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