第五十一話 理由と酔い
私はシンジと昼食を食べ、その後部屋に戻った。
体がだるくてたまらなかった。
じーーーーー。
シンジはずっと私を見ている。
だるさを表情に出すわけにはいかなかった。
シンジにはいつばれてもおかしくないんだけど。
怪我の治療するにも精霊呼び出したりしないといけないし・・。
んー、どうしたものか・・・。
私がそう考えていると、
「あのときのフィオネは独自の判断だったのか?」
と、シンジから質問された。
シンジは壁によさりかかって私を見つめる。
「んー、あれは独自で判断したものじゃないよ。」
私はシンジにそっけなく言った。
「お前が命じたんだな?」
シンジは私に痛い視線を送る。
「そうだよ。
そう聞くってことは意図的に声を張り上げていたんだね?」
私はシンジの目をまっすぐ見て聞き返す。
「・・・」
シンジは黙ってしまった。
「否定はしないんだ?
じゃあ、どうして邪魔ばかりしたの?」
私はシンジに問い詰めるような口調で聞いた。
「・・・・」
シンジは黙ったまま私を見る。
シンジっていつも自分の都合が悪いときは黙っちゃうんだから。
私はもうちょっと問い詰めてやろうかなと思った。
「ねぇ、理由があったからでしょ??」
私は問い詰める。
「・・・。」
シンジは何も 言わない 。いや、言えない の間違いかもしれない。
「私に言えない理由だったの?
じゃあ、私がそれを当ててあげる。」
私はそう言ってシンジに近づいた。
近づいた私に視線を向けるシンジ。
そして私はシンジの額に自分の額をコツンと当てた。
「!」
シンジは何も抵抗はしなかった。
驚いてはいたけれど。
私は目を閉じて意識を集中させた。
〔シンジは私に魔力を使わせたくなかったの??
使わせたくなかったら邪魔してた?
何も私にしてほしくなかった?
自分のせいで私に何かあるのが嫌だった?
私がいつも無茶ばっかりしてたから?
無茶した後が困るから?
それとも 足手まとい だから?
それとも・・私がいなくても勝てる相手だったから?
それとも・・私の・・存在自体が・・・・〕
私はシンジの頭の中にささやき続けた。
だが、最後までささやき続けられなかった。
シンジがとっさに額を離し、私から目をそらして
「もういい。・・もうそれ以上・・・・・・」
シンジは辛そうな声で言う。
「シンジ・・・」
私はそんなシンジを見つめていた。
もういいってどういうこと?
シンジは私の何を聞いてそんな風になったの?
どの言葉がシンジを傷つけたの?
「・・・」
「・・・・・」
私とシンジの間に沈黙が訪れた。
しばらくして・・・
「お前・・・廊下から忽然と消えたが何があった?」
と、聞いてきた。
シンジは私から目をそらしたまま聞いてきた。
私はシンジの額に自分の額を再び当てた。
〔あの時、私は空間に閉じ込められた。
そして異次元に連れて行かれた。
不意打ちで何も抵抗ができなかった。
私だけを狙ったものだったと思う。
シンジは連れて行かれなかったから。
そこで見たのは・・人一人だけ。
黒髪に黒い瞳を持ち黒い衣を羽織っていた。
私より背が高い青年だった。
そのとき、誰?って聞いたんだけど・・、
名前までは教えてくれなかった。
ただ、ハンターだって言ってた。
その後、空間を破ろうと呪文唱えて・・
なかなか空間が破れなくて・・体に電気が走って・・
でも何とか空間を破ることができて・・
その後、そのひとにみぞおち食らわされて・・
あの人のこぶしはかなり痛かったよ。
激痛だった。
その後、矢が邪魔して私は戻ってこれたの。
ありがとね、シンジ。〕
私は頭の中でささやいた。
「お前が空間を壊さなければ、俺の矢など届きはしなかった。」
シンジは目をそらしたまま、そっけなく言う。
私は額を放した。
「・・ハア・・ハァ」
いつの間にか息が上がっていた。
「おいっ・・お前、今ので・・・・。
・・・あのときフィオネに命じたのはこれと同じ方法だったのか?」
シンジは私を見て言う。
私は肩で息をしながら
「原理は・・・同じ・・だと思うよ。
だけどそれなんかより、魔力を使うほうが・・きつかったよ。
・・私たちの無事と・・勝利・・その二つがあるから、使ったことに・・
・・・こうかい・・・はしてないよ・・・」
と、言った。
そのあと、ガクッとひざをついた。
「おいっ」
左足がしびれだした。
右腕も力が入らなくなった。
薬の効果が薄くなってきたんだと思う。
やばい・・早くシンジがいないとこで薬飲まなきゃ。
「・・だいじょうぶ。・・息切れ起こしてるだけだし。
私、ミヨと約束あるから少し行ってくるね?」
私は立ち上がった。
少しふらつくがたいしたことはなかった。
「その状態でいけるのか?」
「へいき・・へいき。たいしたことないよ。
じゃあ、夕食のときに戻るよ。」
シンジは心配そうに聞いてきたが私は首を振って部屋から出た。
そして休憩所まで行こうと、足を引きずって歩く。
私はゆっくり歩いていた。
そして曲がり角もゆっくりと曲がった。だが・・・・
曲がり角のところで誰かとぶつかった。
ドン
私はふらついてしりもちをつく。
「あ、ごめんなさい・・ってルミルじゃないの!!」
相手は怒鳴る。
「ミヨ!?」
私も声を上げた。
まさか、言い訳に使ったミヨと出くわすとは思っても見なかった。
「ミヨ、声もうちょっと抑えて。」
私は言う。
「ルミル?」
ミヨは怪訝そうに私を見る。
「あのね・・実は言い訳にミヨを使ってたから・・」
そう私が言うと私の部屋のほうからガチャリと音が聞こえた。
「やば、シンジが・・」
「ルミル・・・。
じゃあ、瞬間移動で逃げよっか」
ミヨはそう言って私の腕をつかんで瞬間移動した。
シュパッ
ついたのはどこかの部屋だった。
「ここって・・・」
私が呟くと
「ここは、私が取った部屋。
じゃあ、治療しましょう?
その怪我・・シンジって人にばれそうになったところ逃げてきたんでしょう?」
と、ミヨが悲しく笑う。
「うん。薬の効き目が切れかけて。
ごめんね、シンジが言ってたよ。
私に魔力を少し分けてくれたんでしょう?
ありがとね。」
私はミヨに笑いかける。
「お礼を言われるほどのことじゃないよ。
私は償いをしてるんだから。」
ミヨは言う。
「償いって・・それもやめてよ。
仲間でしょ?
だからさ、償いとか言うのやめてよ。
今助けてもらったのは感謝してるんだから」
私は ね? とミヨに聞き返す。
「ありがとう。ルミル」
ミヨは微笑んだ。
「何かあったらすぐ助けを求めるからさ、そのときはお願いね?」
「もちろん。」
ミヨは私のその言葉でようやく心から笑ってくれたみたいだった。
「早速治療手伝ってくれる?」
「もちろん、喜んで」
そう言ってパーカーのすそをまくし立てて包帯を取った。
右腕の傷はぱっくりと開いていて出血が止まらない。
青く腫れて以前より悪化していた。
ウィーミアとミヨの力を借りて治療する。
そしてガーゼを張って新しい包帯を巻く。
次は左足。
右足と同じように悪化していた。
だから同じように治療して痛みを抑える。
ガーゼを張って包帯を巻く。
そのあと、ミヨに新しい痛み止めをもらう。
「ほんとに危ないときに飲んでね?
すぐに効くから。」
ミヨはそう言った。
「うん、わかった。ありがとうミヨ。
悪いけど、買い物にさ、付き合ってくれる?
処置用にたくさんほしいからさ、いろいろと。」
「うん。もちろん」
私の言葉にミヨは頷く。
私はウィーミアを戻してミヨとお買い物。
近くのショップに買いに行った。
そしてその後、夕食の前にミヨとわかれて部屋に戻る。
「ただいまぁ」
そう言って部屋に入ろうとしたけどドアが重くてなかなか入れない。
「ん?・・・!!」
何事かと思って覗くとシンジがそこで寝ていた。
ドアの隙間からなにやら眠りを誘う香りがした。
私は呪文を唱え、香りをかき消した。
そして少し開いたドアから体をよじらせて中に入る。
そして私はシンジの寝顔をまじまじと見つめた。
無防備って感じの寝顔じゃないな・・・
改めてそう思った。
警戒してる・・・
眠っているんだろうけど張り詰めた空気がそう言っている気がした。
私はシンジの体をよいしょとかついでソファまで頑張って移動した。
重くはない。
ただ、体の脱力感が少し重く感じさせるだけ。
ソファに横たわらせた。
ソファは広いからシンジが横たわってもまだ有り余った。
熟睡・・いつもしてないのかなぁ?
そう思いながら私がシンジの顔を覗き込んだとき、
シンジの目がゆっくり開かれた。
まだ寝ぼけているようだった。
「・・・・」
シンジは上半身を起き上がらせ、私を見つめた。
いつもの視線と違う。
そんな気がした私はおかしいのだろうか。
私はいつもの雰囲気を出さないシンジをまじまじと見つめた。
すると突然シンジが私の背に腕を回し、抱きしめてきた。
「!?」
とっさのことで抵抗できずうろたえることしか私はできなかった。
どさっ
そのままシンジは私と一緒にソファに寝転がる。
シンジは私を抱きしめながら横たわる格好となった。
「シンジ・・?」
私は戸惑った。
「・・どこにもいくな・・・」
シンジの口からそんな声が漏れた。
「ぇ・・・・?」
シンジ??
どうしたの一体・・?
「どこにもいくな・・」
シンジは再び言う。
もしかして・・酔ってる?
私はさっきの香りのことを思い出した。
あの香りには眠りの効果以外にもそれに酔わせる副作用もあった気がした。
もしかしたらその副作用が回ってるのかもしれない。
この普段ならありえない言動が酔っている以外で行われるはずがない。
私はそう確信した。
シンジは普段無口で冷たくてたまに出る言葉は嫌味に近い。
そんな人が どこにも行くな なんてて言うはずがないのだ。
「お前は・・いつも無理をする。
無理して笑うお前の表情は笑っているようには見えない。」
シンジは私に言い放つ。
「・・・・」
シンジ・・・。
私は黙ってシンジの言葉を待った。
「お前は・・何故そんなに無理をする?
お前、他の奴らにはそんなところは一切見せないくせに。
何故なんだ?
俺は・・・・・・・・・」
シンジは私に言い募る。
シンジ・・・。
それが本当にシンジの本心ならいいのに。
これは酔っているからなんよ、ルミル。
ルミル、勘違いするな、これは酔ってるせいだ。
私は必死で自分に言い聞かせる。
「シンジ・・・。
シンジに心配してほしくない。
だから、無理してるんだよ?」
言っても意味がないことだけど思わず私は言ってしまう。
「お前・・そんな理由で隠し事するのか?
お前はいつも俺から遠ざかろうとする。」
シンジは私を見つめて言った。
見つめる瞳がいつもと違う。
今の瞳は優しさが宿っている。
いつも見せないものを・・宿らせている。
「遠ざかろうとなんてしていないよ。
私はシンジにもっと歩み寄りたい。
そう思ってる。」
私は見つめ返して言う。
これは本心だ。
いつものシンジにいえないこと。
シンジに知られてどう思われるのかが怖い私の本心。
「ありえない。
お前は俺を気にかけているようで怯えている。
どこかで俺を避けている。」
シンジはそう言った。
ギク・・
たしかにそうだ。
シンジが心配でシンジをかばって無理をしていた。
でも、シンジに心配されたくないから平気を装って隠してた。
シンジにばれたら後がどうなるかが怖くて・・・。
「シンジは・・・シンジは私をどう思ってるの?」
私は話を変えようと聞いてみる。
一番答えが怖い質問でもあった。
だが、同時に一番聞きたい答えが眠る質問でもあった。
「どこにもいくな。
俺から遠ざかろうとするな。
隠し事をするな。
無理をするな。
その行為全てが俺を狂わせる。
お前はバカだ。
俺のしてほしくない行為をいつも平気でするんだからな。」
シンジが私を見つめて言う。
シンジ・・・そこまで言われたら
私・・・シンジが酔っていること忘れそうだよ。
「シンジ・・・」
私が呟いたそのとき、シンジが頭を抱えた。
「っ・・・」
シンジは小さくうめいた。
「シンジ・・・シンジは酔っているんだよ。
だから思ってもいないことを・・。
シンジ・・・眠って。
そうすれば痛みはすぐに治まるよ・・
今、水持ってくるから・・」
私はシンジから体を離して言う。
そしてシンジに背を向けて行こうとしたとき左腕をつかまれた。
「シンジっ」
私は驚いて振り向いた。
「どこにも行くな。
今は・・今だけは・・・」
シンジは苦痛で顔をゆがめて言った。
そんな顔で言われたら私・・つけあがっちゃうよ・・・
シンジに・・とてもおろかな期待を抱きそうだよ・・・
私は振り返ってシンジを抱きしめてソファに横たわらせた。
「わかった・・・わかったから・・
・・もう・・寝て?」
私は言った。
今の・・今の私はどんな表情で言ったんだろう?
悲しい表情?
辛い表情?
その両方?
私はシンジに力なく微笑んだ。
シンジはその後、すぐに目を閉じて眠った。
私はただ、シンジの傍でたたずんでいた。
あの言葉がシンジの本心ならどれほどうれしいのだろう?
でも、今のシンジは酔っていた。
それは事実。
あの言葉が本心ではないはずだ。
その証拠を私には確かめられない。
確かめたくない。
怖い。
もし今のが偽りだったら・・うわべだけの言葉だったら・・・。
偽りと言うほどまでにいかなくても
シンジが私に何の関心も持っていないのは私には悲しすぎるから。
だから私は確かめたりしない。
後々の旅が困るから。
どうやってシンジと接したら良いのか・・と困ってしまう。
今の段階ならまだ笑って接することができる。
少しずつ歩み寄ることができる。
だから・・このままでいいんだ。
シンジはこの後、目を覚ました。
「シンジ・・・大丈夫?」
私は体を起こしたシンジに向かって言う。
「あぁ・・・だが・・頭痛がする。」
シンジはそう言って頭をさする。
そのしぐさがいつものシンジに戻っていたことを私は悟った。
「今、水もってくるね?」
私はそう言って水をもってこようとシンジに背を向けた。
そのとき、腕をとっさにつかまれた。
「ど、どうしたの?シンジ・・」
私は振り向いて聞いてみた。
内心の動揺を悟られないように。
今、私の心臓はバクバクだった。
呼吸困難になりそうなくらい。
「・・・。・・水はいらない。」
シンジは私から目をそらして言う。
まるで何で自分が引き止めたのかが分かっていないようなそんな感じで。
「ほ、ほんとに大丈夫?
部屋に戻ってきたらシンジ、眠ってて・・・
変な香りがしたからびっくりしたんだけど・・・」
私は気になったことを言った。
今回のシンジはちょっと雰囲気違いますよね。
違うように書いたんだから当たり前なんですが・・・
ご感想お待ちしてます。




