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精霊使い  作者: 黎奈
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第三十六話 失望 精霊の意思 (後編)

「!・・性格が逆転したな?・・あの力せいか?それともそいつのせいか?」


ノバがいう。


シンジが私を見ている視線が怖い。


私は自分を落ち着かせる。


冷静になれ、私。

落ち着くんだ。

勝つのは私たちなんだから。


私は落ち着いたまなざしで


「・・あなた、知っているんだ?

だったら思い知らせてあげる。」

(ウィーミア、竜巻を起こして!いつもの倍ぐらい。)


私はそう言ってウィーミアに合図を送る。


ウォオォオオオ”””


竜巻がウィーミアの周囲に出来上がり敵に向かって放たれる。


敵はその中へ飲み込まれる・・はずだった。


相手はフィオネを盾にしてきたのだ!


「っ!?」


私は声にならない叫びを上げ、ウィーミアは竜巻を途中でやめる。


ウ”ググググゥ


フィオネが必死にもがいているが、抜け出せないでいる。


フィオネを捕らえたのはシュール。


「フィオネ、雷光貫腕射!」


シンジはそう命じる。


ウグッ・・・フィィイイ””


しかし、フィオネはシュールを見ると震えて技を出せないでいた。


最後に聞こえたのはきっとフィオネの悲鳴と言っても過言ではない。


「ちっ」


シンジの舌打ちが聞こえた。


シンジっ。

やばい・・このままじゃ・・

あ、そうだ。この手で行こう。

まだ痛み止めの効果は聞いている。

無茶をするがこれしかない。


私は心の中で呟くと同時に走り出した。


シュールに向かって一直線に走る。


シュールは身構えた。


私はこのときシュールの視界から消えていた。


ヒュッ


姿を消した瞬間に聞こえたのはきっとこの音だけだろう。


シュールが戸惑い、ルサーが


「何っ!」


と、声を上げる。


私はシュールの後ろに姿を現した。


「!!」

相手は驚いて反応が一瞬遅れた。


そこにできた隙を狙いシュールからフィオネをもぎ取る。


そしてシンジの元まで帰る。


「!・・・。」


シンジは驚きのあまり声が出ないみたい。


「ウィーミア、業火の旋律!!」


私はシンジとフィオネを囲む結界を作りウィーミアに命じる。


(はいっ)


ウィーミアは私に応え、旋律を奏で始めた。


やがて・・・


ブォオゥウ”ブオォウゥ”


と、音を立てて旋律で具現化された地獄の業火が精霊たちを襲う。


「あ”ぁぁぁあ”ぁぁ””」


「う”ぅぅ”ぁぁぁああぁぁ”」


精霊たちが悲鳴を上げる。


そして、


「ウィーミア、地獄と業火の二重奏を!!」

(思い知らせてやって!!)


と、私は頼む。


(はいっ。)


ウィーミアは心で応え、地獄の旋律と業火の旋律の二重奏を奏で始めた。


私はフィオネを降ろして結界を強める。



そのとき、右腕が急に痛み出した。


「っ・・・」


私は声に出すことをこらえる。


やばい・・痛み止めの効果が・・


内心ピンチに陥った私は


(頑張って)


とウィーミアを応援する。


ウィーミアは頷き音を強める。


「あぁ”ぁぁあぁぁ””」


「・・・う”ぁぁっぁぁぁぁぁ””」


ノバとルサーの二人は悲鳴を上げた。


旋律が中盤にやってきた頃、ヤートとシュールの二体の精霊は瀕死状態に陥った。


「・・・・ルミル選手・・シンジ選手・・ペアの・勝利・・で・・す・・」


審判が辛そうに言った。


少し間をおいて


わぁぁっぁぁぁっぁぁ


と、歓声が起こった。


私は


「ありがとう、ごめんね、地獄の二重奏を弾いてもらって・・」


と、謝りながらウィーミアに近づく。


右腕がしびれるように痛い。

左足の感覚がなくなってきている。


そう思いながら。


「いいえ。楽しかったですよ。また呼んでくださいね?」


と、ウィーミアはやや疲れた表情をして言う。


「うん。ゆっくり休んでね。」


私はそう答えてリングにウィーミアを戻し、痛み止めを口の中に放り込む。


シンジのほうもフィオネを戻したようだった。


「シンジ・・行こう?」


「・・あぁ」


私はシンジに問いかけ、ホールから出た。


シンジはその後、休憩所で明日の対戦者を見てからどこかへ行ってしまった。


私はその後、部屋に戻り、傷の治療をする。


その後、シンジのことが気になって探しに行くとシンジのほうから現れた。


「・・やる。」


シンジが私の姿を見てそういいながら私に何かを投げてきた。


それはフィオネのリングだった。


「シ・・・シンジっ!?・・どういうこと!?フィオネのでしょ?」


私は思わず部屋に戻ろうとしたシンジに向かって叫ぶ。


シンジは私に背を向けながら


「そいつは俺の望む強さを発揮しない。」


と、言う。


え!?

シンジ!??どういうことっ!?・・ってまさかっ!?


「えっ!?シンジ・・それって・・フィオネと契約を切ったってこと!?」


私が恐る恐る聞いてみると


「そうだ。

そいつには失望させられた。」


と、平然に言う。


「失望されたからって契約を打ち切るなんて・・

フロンさんの意思もフィオネの意思もシンジはどうでもいいって思ってるのッ!?」


私は悲しくなって言い返す。


「・・・俺には関係ない。

俺はあいつが暴走したときの強さがほしいと思っただけさ。」


「それで・・無理そうだから見捨てたの?」


「あぁ、そうだ。」


私の問いに当たり前のようにシンジが肯定する。


「そう・・」


私はそう呟きながらフィオネを呼び出す。


「ひっくっ・・・ひっくっ・・」


呼び出したフィオネは泣いていた。


フィオネ・・シンジといたかったんだね・・・


「フィオネ・・私と契約しよう。ね?いいでしょ?

私はあなたを意志を尊重するから。

一緒に強くなろう?」


(・・私・・・強くない)


私の声にフィオネは泣いたまま頭の中で言う。


フィオネ・・今までシンジにそんなことを・・・


「シンジにいわれたの?

私はシンジとは・・違うから・・

私はあなたの秘めた力がほしいんじゃないの。

あなたの今もっている可能性がほしいの。

だから、ね?」


私は自分で言いながら悲しい笑顔をフィオネに向けた。


フィオネは目を見開いている。


おそらく私が目に涙をためているからだろう。


(あなた・・人じゃないの?だから・・そんなに悲しい顔を・・)


「フィオネには分かるんだね。

私はフィオネと同じよ。

大丈夫。

あなたの暴走は私が止めれるから。

私はきっともう一人の自分が解放するから大丈夫。」


私はそう言ってフィオネの涙をぬぐってあげた。


そう・・私は・・フィオネと同じ。

私の母さんは 天寿の民 と 精霊 の子孫。


だから私は・・フィオネと同じ。


(私と同じ・・)


「そうよ。

シンジは見抜いていなかったけどフィオネなら・・

私といればあなたも自分の意思で動かせる。

同じ存在(なかま)がいればフィオネも大丈夫だよ。

だからね?」


私はそう言ってフィオネのリングをフィオネのほうに向ける。


存在(なかま)・・うん。契約・・する。)


フィオネはやっとのことで頷いて私と契約をした。


それを見ていたシンジは私をじっと見つめる。


「ありがとう、いつも一緒だからね?」


(うんっ)


私はフィオネに微笑みリングに戻した。


「・・シンジの望むものにフィオネはならなかったようだけど

たぶん手放すのをシンジはきっと・・後悔すると思うよ。

まぁ、それはシンジがフィオネの全てが理解できたときだろうけど。」


そして私の力のことも・・と心の中で呟きながら私は言った。


「理解?」


いまさら何を・・といいたげな表情をしながらシンジは私を見る。


「そう。でも・・もっとあとになるけれどね・・・じゃあ、戻ろうか?」


私はそういいながら部屋に戻ろうとする。


だが・・


ガシッ


っと腕をつかまれた。


「っ・・シンジ?」


つかまれたときの力が強くて私はうめいた。

腕も右腕だから痛いのだけど。


「お前・・・いや、いい・・」


シンジは私に何か言いかけたがやがて腕を放してくれた。


そんな時、来たのはマリアだった。


「あら、こんなところにいたのね。」


マリアがそう言って近づいてくる。


「・・・。」


「あ、マリア。

偶然だね?こんなとこで会うなんて・・それとも意図的なものかな?」


私はそういいながらマリアを見る。


「偶然よっ。それより、シンジ様のお怪我大丈夫ですの?」


「・・・。」


マリアはシンジに問いかけたつもりみたいだ。


あぁ~そうか、アピールね。


「それは私が 治した よ。ばっちり完治させたんだから。平気でしょ?シンジ。」


私が聞いてみる。


「なんともない」


シンジは突然のマリアの乱入が嫌だったのかそっけなく応える。


「そうですの・・・それはよかったですわ。

ところで・・私たちのバトル見ましたか?」


「・・・」


「みたよ。遠くからだけど。」


シンジが何も言わないから私が仕方なく答えた。


「そう。すごかったでしょう?」


「・・・・」


シンジはマリアがシンジの方を向いていっているのに

何も言わない。


私もここは黙ってみてみた。


「・・・・」


「・・・・」


二人に沈黙が訪れた。


「・・・・」


「・・・。」


シンジが何も言わないからなのかマリアは

しゅんとしてしまった。


しおれた花のような表情でマリアは私に助けを求めた。


そんな顔で見つめられると・・こまるなぁ~


「ん~と、マリアは言いたいのはそれだけだったの?」


私はそう聞くと


「いいえ。それだけじゃないわ。

近くに面白い(やかた)があるのですわ。

今日の夜にどうかと思いましたの。」


「・・どうかってなにが?」


私は背中にどうも嫌な予感がしてそれを抑えながら聞いた。


「決まってますわ。肝試しですのよ。肝試し。

それにそこにはうわさがありますの夜にはゴースト属性の精霊が出るって話を。

ですから今日にどうかって・・・ルミル?どうしたんですの?」


マリアが私に聞いてみた。



私はついに体の震えが抑えられなくなってガタガタ震えていた。

それと顔も真っ青だと思う。


「う、うん。平気だよ。シンジは誘い受ける?」


私はシンジに聞いた。


シンジは私を見て眉をひそめたが


「?・・あぁ」


と頷いた。


ほんとは断ってほしかったけどそれは叶わないだろう。

なんたって世にも珍しいゴースト属性なんだからね。


私は


「・・だってさ?サトルもいくの?マリア。」


と聞いた。


「えぇ。もちろんですわ。では今日の夜、八時にホールの出入り口で会いましょうね。」


マリアはそう言って去って行った。


聞くんじゃなかった・・


私はあとになって後悔した。


私・・幽霊とかお化けとか火の玉とかにがてなんだよぉ~~っ

怖くて・・恐くて・・・・・たまんないのよぉぉ~~っ


「~~じゃあ・・もどろうぅ」


私はシンジの返事を待たずに震える体を腕で押さえて部屋に戻ろうとした。


戻る途中に、


「怖いのか?」


と、いきなり後ろから聞かれた。


頷いちゃだめっ


「別に・・」


と、応える。


「・・・」


シンジはその後黙ってしまったが私も何も言わなかった。


私はすたすた部屋まで歩いて戻った。



忙しくなるので更新は遅くなるかもしれません。

ご了承ください。

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