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精霊使い  作者: 黎奈
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第十九話 フィオネの異変

今までフィオネは体が小さいけれどたくさんの精魔を相手にしていた。

当然傷を多少ながらも負ってはいるようだった。


だが、今までの様子を遥かに超えた違和感と迫力をかもし出している。


「ワオォーン」


フィオネが突然雄たけびをする。


すると、徐々にフィオネの体が大きくなっていった。

やがて小さかった幼い狼の姿から立派な成獣の狼の姿となった。


もう幼いなんて呼べない立派な姿となったフィオネは再び雄たけびをした。


「ワオォーン」


フィオネの雄たけびとともに雲行きが怪しくなり、


ゴロゴロゴロ、ゴロゴロゴロ、・・・ダーンダーンダーンダーン・・・


と、音を立てて、精魔全てに雷が直撃した!


精魔は一瞬で全て消し去られてしまったのだった。フィオネによって。


フィオネは全ての精魔を消し去って尚雄たけびを続けた。


雷がゴロゴロと鳴り響き地面にいくつも到雷する。


「フィ、フィオネっ。もう終わったからっ。もう、やめてっ」


私は叫んだ。


それでもフィオネは雄たけびをし続け雷を起こしている。


「・・・暴走してる・・?」


私は呟いた。


大きな力を持つものは時に制御しきれなくなるとその力に飲み込まれ暴走するだろう。

力を扱う器が小さいほどその力はきっかけがいかなる場合でも暴走するであろう。


お父さんが昔言っていた。


大きな力は正しいほうに使えば幸せを呼ぶが

もし、扱い方を間違えたら、制御しきれなくなったら、その力は災いを呼ぶだろう。


と。


「ウィーミア、癒しの旋律を奏でてっ。」


私は言った。


少しでもフィオネに自我が残っているのなら暴走を止めることができる。


ウィーミアは私の言葉に従い風を操って癒しの旋律を奏でた。


その旋律が奏で出すとフィオネの雄たけびがやんだ。


フィオネはその旋律を聞き入っているようだった。


そしてフィオネは元の幼い狼の姿に戻った。

フィオネは戻った後、すぐに地面に横たわるような形で眠ってしまった。


私は右足をかばいながらフィオネに駆け寄りそっとフィオネを抱いた。


「フロンさんのところへ戻ろう。」


「あぁ。」


私の言葉にシンジが頷く。


戻ろうと歩き出したとき、


「みなさーん、無事ですかぁ?って傷だらけじゃないですかぁ?早く治療しないとっ。

急いで家に行きますよっ」


と、フロンが走って近寄ってきた。


フロンは私からフィオネを預かるといって、フロンはフィオネを抱いた。


そして私たちはそれぞれ自分に負った傷をいたわりながらフロンの家に向かった。



フロンの家に上がった私たちはまずフィオネを優先してもらった。


力が暴走したフィオネには体にかかった負担が大きいだろうと思ったゆえの判断だった。


フロンがフィオネに治療をし始めたと同時に私は


「シンジ、腕の傷、見せて。手当てするから。」


と、シンジに向かっていった。


私の言葉にシンジは素直に聞いてはくれなかった。

代わりに私の足の傷をじっと見てくる。


「私は大丈夫だって・・だから見せてよッ。」


私はそういいながらシンジの腕を強引に引っ張る。


「・・・っ・・」


シンジが少し顔をゆがめた。


「シンジが素直に聞かないからだよッ。・・・ごめんね・・」


私は最後にすごく小さい声で謝った。


聞こえたかどうかは知らないけど。


私はシンジの傷口を診る。


傷口はぱっくり開いて血が止まらない。


「少し・・痛いかもしれないけど、呪文かけるね・・」


私はそういって治療呪文を唱え始めた。


「っ!」


シンジが小さくうめく。


シンジの負った傷はだんだん良くなる。

だが、私が思ったより治りが遅い。


どうしてこんなに・・治りが・・・遅いの・・?


私は自然治癒でも何とかなるかなってところで呪文を唱えるのをやめた。


私は傷口にガーゼを貼って包帯を丁寧に巻きつける。


「呪文を・・唱えても・・治りが遅く・・感じたから・・少し完治には時間がかかるかも・・」


最後に包帯の紐をぎゅっと縛った。


「これで・・もう・・だい・・じょう・・ぶ・・」


私はシンジに言った。


さっきからめまいがして視界がぼやける。

それにつれ声もかすれていく。

意識が・・朦朧と・・してくる。


私はたまらず横になるような形で倒れた。


「おいっ。」


シンジの声が聞こえた。


気を失ったわけじゃない。

でも、意識があんまりはっきりしていない。


歪んだ視界の中、シンジの姿が見える。


シンジの声を聞いてかフロンが駆けつけてきた。


「ル、ルミルさんッ。大丈夫ですか?すぐに、仰向けになれますか?」


「は、はい・・ごめんなさい・・体が・・思うように・・いか・・な・・・く・・て・・」


フロンの声に何とか答え仰向けになって少し上半身を起こす。


「そんなことは気にしてませんよ。

今手当てするんで、少し痛いかもしれないですからちょっと我慢して下さいね。」


フロンはそういってなにやら呪文を唱えだした。


チラッとフィオネのほうを見ると寝ていることが分かった。


「それって・・治癒・・活性化・・の・・」


私が声を振り絞って言う。


「はい。治癒活性化の呪文です。よくご存知ですね。

シンジさんの傷を手当てしたのもルミルさんですよね?

見るだけでも分かりますよ。慣れているんですね。」


「・・小さいころから・・医術を・・・身内に・・叩き込まれて・・・それでですかね・・」


「あはは。そうですか。

私はこの術と丸暗記で使える治療魔法しか知りませんのでたいした手当てができないのですが。」


「・・それだけでも・・・十分です。・・・それに・・・」


私の声をさえぎって


「もう、話すな。黙っておとなしくしてろ。無理するな。」


と、シンジが叱咤する。


「そうですよ。無理をなさらないで下さい。顔色が悪いですし、寝られたほうがいいですよ。」


フロンも言う。


シンジの馬鹿っ。

自分は私が言ってもすぐに見せなかったくせに。


「無理なんかしてないです・・・・・・・うぅ」


なんか鈍い痛みが襲ってきた。


シンジが私をにらみつけるような視線で見つめる。


「やっぱり少しこの術は痛いですよね。」


フロンはそういって私の傷口に冷たいタオルで拭いた。


し、しみるっ!


顔をゆがめて上半身を起こしていた手に力をを入れると、

すっと手と背中にシンジの手が触れて、無理やり寝かされた。


「っ・・・・・・なっ!」


私は驚きのまなざしでシンジを見上げる。


「・・・。」


シンジは何も言わずに私を見つめる。


何も言わずに見つめられるだけってのはさすがに反論しがたいんだけど・・・。


「・・・。」


「・・・。」


無言の状態が私とシンジの間に続く。


それを破ったのは、


「治るのが遅いと思ったらぬれているからなんですね。泉の水をかぶりましたか?」


というフロンの声。


コクッとシンジと私が頷く。


「やっぱりですか。あなた方、髪までぬれて・・

泉の水は精魔の邪気が染み渡ってしまいましたから、水にぬれれば治りが遅いのは仕方ないですね。」


と、フロンが悲しそうに言う。


するとフロンが


「はい。これで手当て完了です。今日はゆっくり休んでくださいね。」


といって、あたしの足に巻かれた包帯の紐を結び終える。


「ありがとうございます。」


私はフロンに言った。




私はその夜、用意された布団で眠った。

少し離れた隣にはシンジがいたけど。


疲れていたせいか、私はすぐに寝てしまった。




































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