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精霊使い  作者: 黎奈
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第十七話 精獣の泉

私たちは精獣の泉に到着した。


精獣の泉というのだろうからすごくきれいな泉かなぁと思ったのだけど・・・

その予想は悲しくも外れてしまった。


泉がぽつんとあって離れているところに泉を囲むように林がある。

泉の水はきれいだがなんか普通じゃない気がした。


私はシンジに本当にここかと聞こうとしたとき、


「あなた方が依頼を受けてくださった方たちですか?」


と、遠くのほうで声がした。


私たちは声がしたほうに振り返った。


そこにいたのは人の姿をした獣の精霊と

私たちに怯えているかのようにその精霊の背中に隠れている幼い精霊がいた。


「はい。そうですけど・・・。」


私は言った。


シンジが答えそうもなかったし。


「そうですか。とりあえず私の家まで来て下さいませんか?

事情を説明したいのです。こちらについてきてください。」


人の姿を精霊は早口で私たちに言って

すたすた歩いていってしまうから私たちも急いで後を追った。


その精霊の隣を歩く幼い精霊が時たま私たちのいる後ろを振り向く。

でも、それは一瞬のことですぐ前を向いてしまう。


泉から少し離れたところにある家が私たちに声をかけた精霊の住処いえだと分かった。


家につき、私たちを家の中に通してくれた。


そして四人(人じゃないけど精霊も)がテーブルに座る。

お茶を出してはくれたがそれには、私もシンジも一切手をつけていない。


「自己紹介が遅れました。依頼主のフロンと申します。」


「私はルミルって言います。」


「俺は、シンジといいます。」


フロンさんに続き、私とシンジが言う。


やっぱりシンジが敬語を使うの慣れないな。


「あぁ、こっちの子はフィオネといって、僕はそのフィオネの保護者なんです。

フィオネは人見知りでなおかつ人の言葉がしゃべれないからちょっと大変なんですけど。

え~と、じゃぁ、本題に入りますね。

依頼のことなんですけど、依頼届けを出してから、あなた方が受けるまで相当時間が過ぎてしまって

ちょっと精魔の群れに異変が起きてしまったんです。」


「異変?」


フロンの言葉に私は首をかしげた。


「はい。行動パターンって言うんですかね。ちょっと変わってしまって、今や僕もなかなか予測できなくて、ただ、精魔たちが昼に泉に来ることだけは分かってはいるんですが。」


「昼に?」


またもや私は問う。

シンジも眉をぴくっと動かした。


「はい。そこが不思議なんですよ。毎日毎日泉に来ては水浴びや、もぐっているんです。

そのせいで泉は汚れてしまいました。あなた方も見たでしょう?

精魔が来る前の頃は光が当たるとそれはもうきれいに輝いて

清く美しかったのですが、今は精魔の邪気で汚れてしまって・・」


「そうなんですか。」


「あ、ほら。今、精魔たちが来ているでしょう?窓からご覧下さい。」


フロンがそういって窓のカーテンを開けた。


私たちはそっと窓からのぞいた。


すると、ぞろぞろ大勢の精魔たちが泉に入り、水浴びやもぐってはいる。


なんとも嫌な景色だった。


精魔ってのは階級と種類によって姿かたち、強さが違うんだけど、

今泉にいる奴らは小さい子供ぐらいの背丈をしている。


背丈はまだかわいらしいが、精魔の顔なんか見ると吐き気がしてくるほど気持ち悪い顔をしてた。


鬼のような角が生えて、口元には吸血鬼のような牙が2本。

体は黒に染まっていて、ごつごつとしたよろいのような肌。


もう見ただけで気持ちが悪い。


今見ているのはそんな奴ら。


「どうする?シンジ。」


私は聞いた。


今出て行くのか様子を探るか。


その判断が私にはできない。


「まだ様子を見る。今日は策を練って明日にあいつらをる。」


「分かった。」


シンジの言葉に私は頷いた。


「でしたら、今日は私の家にお泊まりください。フィオネも喜びますし。」


フロンが言った。


フィオネは・・・喜んでいない気がする。


どうにも怯えているようにしか私には見えない。


「シンジ、どうする?」


私の言葉など無視し、シンジは


「お言葉に甘えます。」


とフロンに向かって言った。


フロンに言う前に私になんか言ってよぉ~。シンジのばかっ。


私は心の中で言った。


「フィオネも、その、精魔退治に参加させてはもらえないでしょうか?

難易度はBと書きましたが、それ以上な気がいたしますし。

少しは役に立つと思います。ほらっ、フィオネっ。」


フロンさんがフィオネをせかした。


え??たしかフィオネってしゃべれないんじゃぁ・・・?


フィオネはフロンに押され私たちの前まで来て急に頭をペコット下げた。

そして・・


(よろしく・・お願いします・・)


と、頭の中に聞こえた。


「え?」


と、思わず聞き返しちゃった。


シンジも驚きを隠せないでいる。


「言い忘れていました。フィオネは実際にこうやって声に出せないけど、

多少ならこうやってテレパシーができるんですよ。」


フロンが思い出したように言う。


テ、テレパシー~~!!?


私は心の中で叫んだ。




























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