第十三話 襲撃
翌朝、私とシンジは森の中を進むため歩き出した。
私は今朝のことを思い出していた。
「ねぇ、シンジ。昨日、夢、見た?」
「・・・みていない。」
私は夢のことが気がかりでついシンジに聞いてしまったのだった。
シンジは、見るわけないだろ? と、言いたげな顔をしていたから、
「ううん。なんでもない、なんでもない。」
と、あわてて取り消した。
この会話をしたことをいまさらになって後悔し始めたのだ。
まぁ、そんなことはおいといて、
今日、その夢が正夢になるかもしれないのだから、私はいつも以上に周囲の気配を探っていた。
私が周囲の気配に何か異様なものを感じたとき、不意にシンジが足を止めた。
私は後、数センチ前に言っていたら危うくシンジにぶつかるところだった。
夢では私、シンジにぶつかったんだけど・・。
私がシンジに言おうとしたとき、
ガサ、ガサガサ、バサ、バサバサバサッ
と、森が揺れ、突然大勢のものが私たちの目の前に現れた。
大勢来た奴らは黒い衣を身にまとい私たちに殺気を向けていた。
「二手に分かれる。・・にげろっ!」
シンジが夢と同じ台詞をはく。
私はシンジと真逆のほうへ走る。
少し走って私は後ろを振り向いた。
案の定、私には誰もついてこない。
狙いはシンジなんだ。
私はシンジのいるほうへ走った。
そして私は見た、シンジが相手に捕らえられているところを。
夢と同じ。夢の私はこの後どうしてた?
答えは簡単。助けるのよ、シンジを。
シンジは相手から逃れようと抵抗している。
私には相手もシンジも気づいていない。
シンジはそいつに何か嗅がされたみたいで、抵抗力を失ったようだ。
私は強く念じた。
天寿の力よ!私に力を貸して!!
心の中で唱えた。
私の体は天寿の力により変わった。
私はすばやい動きで相手との間合いをなくし、
相手にとび蹴りをしてシンジを相手からもぎとった。
私は背中に翼を生やし、翼を大きく広げ、シンジを抱えて飛んだ。
シンジはうっすら目を開けたようだった。
そして私の姿を見て目の色が豹変する。
驚くのは当たり前。
私の姿は人の姿をかたどってはいても
背中にある翼や瞳の色、腕に刻まれている数々の文様が、人ではないものをあらわしているのだから。
シンジはすっと目を閉じた。
おそらく意識を失ったんだろう。
何を嗅がされたのかは知らないけど、動きを封じるためのものだと判断がつく。
グサッ!
突然、鈍い痛みが翼から感じた。
私は片方の翼を見た。
見ると、翼には一条の矢が突き刺さっていた。
油断していた。
相手はこのシンジを襲う襲撃者。
甘く見すぎていた。
次々と私めがけて矢が飛んでくる。
私は片方のつバサをいたわって、矢から逃れた。
シンジをかばいながらのせいか、体のあちこちに小さい傷がついてしまった。
だが、どれも致命傷ではない。どれも、切り傷程度のものだった。
そして、私は気を失ったシンジを抱えて森の中にある洞窟の中に逃げ込んだ。
私はシンジをその場で寝かせ、背中にある翼から矢を抜いた。
私は周囲の気配を探った。
私のいるところから遠いところに大勢の殺気があった。
距離的にはもう心配はないと判断し、私は元の姿に戻った。
戻ったとたんに、今まで感じなかった疲労と傷の痛みが全身に広がる。
だが、翼だけはしまうことができなかった。
その原因は自分でも分かっていた。
翼に傷を負ってしまったからだ。
翼に負った傷は致命傷になりうるものだったが、
自然治癒でもどうにかなりそうなものだった。 (時間はかかるが。)
私はシンジのリュックがないことに今気づいた。
だから私はリュクを呼び、探して持ってくるように頼んだ。
リュクなら、たとえ相手に見つかったとしても幻覚で相手を撒くことができるからだ。
私は自分の寝袋を出しそれにシンジを寝かせた。
シンジの呼吸は意外にも浅く早いものだった。
熱が出るかも・・。
私はそう思った。
思わず、シンジの額に手を伸ばす。
シンジの額に私の手が触れる。
まだ熱くない。
でも、油断はできない。
私は時間をかけて重い体を引きずってタオルを水で湿らせた。
私はそのタオルをシンジの額に当てた。
ちょうどそのとき、リュクが戻ってきた。
「奴らには気づかれなかったぜ。これだろ?シンジのリュックは。」
「よかった・・ありがとう・・リュク。」
「俺はあんまりシンジは好かないけどな。
でも、あんたがシンジのための何かしたいって思うのなら力を貸すぜ。」
「ありがとう・・そのときにまた呼ぶね。」
「あぁ。でも、やっぱり天寿の力を解放したんだな。使ったんだろ?顔色悪いぜ?」
「うん・・使わないとあの時どうなっていたか分からなかったし・・」
「そうだな。ところでその翼、どうすんだ?」
「あ、あぁ、これね。傷が癒えるまでこのままにするつもり。」
「シンジにばれるぞ?」
「もうばれてると思うよ・・さっき助けた時点でね。」
「そんときシンジはそんなに意識ははっきりしてなかっただろ?
今ならごまかせるんじゃないのか?」
「シンジは簡単にごまかせれる相手じゃないよ・・・それに正直はなすつもりだよ。」
「何で?」
「いつばれるかと思って・・シンジといるのには疲れるし・・
・・もう疑われるような行為をしてるところはいくつか見られたし・・」
「それだけじゃないだろ?」
「うん。シンジに隠し事したくない。それが一番の理由かな・・」
「そうか。あ、俺もう戻るぞ。あんたの顔色がどんどん悪くなってるし。ちゃんと休めよ。」
「・・・ありがとう・・リュク・・」
私はそういってリュクをリングに戻した。
天寿の力、お母さんにもらった、天にも悪にもなりうる強大な力。
それを知ったシンジはどういう反応をするだろうか?
シンジのするだろう反応を恐れて私は迷った。
この力を明かすか否か。
迷いながらも私はシンジの隣でうつぶせになって眠りについたのであった。




