第十話 ジュンたちの思い出
ルミルは今、医術師と依頼屋にある宿屋の一室にいる。
シンジたちには別室で待っていてもらっている。
医術師の名はレイラ。
精霊の街で暮らし人々を救う有名な人らしい。
「あなた、お名前は?」
「ルミルです。え~と、バトルでちょっと木に背中を打ってしまって・・」
「そう。大変だったわね。じゃぁ、その背中、診てもいいかしら?
怪我のぐあいを診ないことにはどうにもならないから。じゃぁ、背中を向けて。」
「はい。」
私は言われたとおり背中を見せる。
「!?」
「このことは他言しないでください。旅の連れは知らないんです。」
「え、ええ。」
私の背中にある文様を見たレイラは驚きのあまりに言葉を失いかけている。
驚いて当たり前。
だって、世にも珍しい翼の文様だもの。
「ところで、打撲のほうはどうですか?」
「だ、打撲のほうはたいしたことはないわ。今、治療するから少し待っていて。」
レイラはそういって治療魔法を私の背中にかける。
背中からの痛みが薄くなりつつある。
「・・・治りが遅いわね。この文様にも影響が出てるかもしれないわ。」
「私もそう思うのですが。多少は歩くことはできそうですか?」
「え、えぇ。でも安静にしてね。無理すれば痛みがひどくなるから。薬を一応渡すわね。」
「これが塗り薬よ。」
「ありがとうございます。」
私は医術師のレイラから薬を受け取った。
レイラはいまだに驚いた顔をしてる。
チャンスはこの後。
医術師が部屋を出て行った瞬間にやれば・・
「じゃ、じゃぁ、私はこれで。くれぐれも安静してるのよ。お大事に。」
「はい。ありがとうございました。」
医術師が出て行ったのを見計らって私もすぐに部屋を出る。
そして私の少し前に背中を向けた医術師にめがけて魔法を放った。
医術師は一瞬ぴくっと止まったがすぐ普通に歩いていった。
私がほっとしたとき、
「おい。」
と、私の真後ろから急に声をかけられた。
私はビクッとしてとっさに後ろを振り向いた。
声からしてシンジかもと思ったが、どうやら当たってしまったようだった。
「シ、シンジっ!」
「何驚いているんだ?」
「え!い、いや別に。ただ、真後ろから急に声かけられたら誰でも驚くと思うけど。
・・・あ、そうそう。もう終わったよ。別にたいしたことないって。一応塗り薬もらったけど・・。」
「・・・。」
シンジが疑い深い視線を向けてきた。
ゴク。
つばを思わず飲み込んでしまった。
「な、何?」
「・・・・・あいつら待ってるぞ。」
「う、うん。」
私の問いには答えず、さっさと歩いてジュンたちがいるところにいってしまった。
私もゆっくり後を追って、ジュンたちのところに言った。
そしてジュンたちの部屋に入った。
「お、終わったか。どうだった?明日バトルやれるか?」
「背中のぐあい大丈夫か?ジュンがやりたがって仕方がないみたいで・・・」
「はい。たいしたことないそうです。明日やりましょう、バトル。」
ジュンとサトルの問いに私は笑って答える。
「・・・。」
シンジはなぜか黙って私たちの会話を聞いている。
「そうかっ。やったぜ!!明日は最高の日になりそうだぜッ。」
「ふぅ。大事に至らないでよかった。良かったな?ジュン。」
「あぁ。もう、最高だぜっ!」
「・・・。」
ジュンは私の答えに大喜び。
サトルは私の無事に安堵している。
シンジは・・・。
シンジの意味ありげな視線は私を妙に不安がらせる。
こうして、明日にジュンとバトルすることになった。
この後、寝るまでずっとジュンたちの話を聞いていた。
シンジもその場にいたが何もしゃべらずじまいだった。
特に印象に残ったことは、大きく分けて二つある。
一つ目はそれぞれ各地にいる精霊使いマスターが開いているジムを回ってバッチをゲットしてること。
ちなみに、今、ジュンたちは、ジムバッチ 7個 持っているらしい。
二つ目はシンジ、サトル、ジュンの出会い。
ジュンがそのことを話している姿と言葉の表現がすごくて笑いが止まらなかった。
「あのな。俺がはじめてシンジにバトルしようぜっていったらこいつこんなこといったんだぞ。
『お前、バトルの相手は誰でもいいんだろ?だったら、あいつとやればいい。』
っていったんだぞ。ひどくないか!ひどすぎるだろ!!あれは罰金ものだったぜ。」
「結局どうなったの?」
「あぁ、結局シンジはバトルしてくれなかったんだ。
でな、ここからがさっきよりももっとひどかったんだぞっ!!
俺がサトルとのバトルをシンジが見てたらしくてこのときシンジがなんていったんだと思う!?
『お前、あんな奴に負けるようじゃ、まだまだだな。』
だぞ!?ひどくないか!?これ以上にない言葉だったんだぞッ。
くぅー~今思い出しただけで腹が立つぜッ。」
特にこのときの会話をしているジュンの物言いが一番迫力があった。
このときの会話が一番心に残ってる。
ジュンがシンジのまねをしてるときなんかがすごく。
それでそのとき渡しとてもいいたかったことがあったんだ。
あの~シンジ、ここにいるよ?本人の前でいっていいの!?
っていいたかったんだけど、私はすごく、すごく、これでもかっ!てぐらい抑えたの。
まぁ、そんなこんなで、夜、延々と続いたんだ。
私はみんなにお休みって言って、自分の部屋に入った。
そしてベットに横になって考えながら寝たんだ。
明日のバトル勝ちたいなって。