最後のワンピース
壬生之弥様からはまだお返事はもらえてないけど、
ウメさん、トクさん、沢村さん、そして姫路社長とこれでメンバーは5人揃った。ミニ小判きんつばの味は6つ。あとひとり必要だ。
私はすでに目星は付けてある。
上条雅之さんだ。
「なぜ私が?」
私の目の前で、上条専務は憮然とした面持ちで腕組みをしている。新製品の製造ラインが決まり、糸川さんの顔を立てて上条製菓とのミーティングの場を設けてもらった。私は、個人的なご相談があるのでと、糸川さんとの打合せの30分前には来てもらえるよう内緒でLINEを送っていた。
「ミニ小判きんつばの発売は一宮神社の縁日にぶつけたいと思っています」
「それは良いと思います」
「一宮神社は弊社ともゆかりが深いですし、よいきざしを感じます」
「ええ。でも、それと私がその男性ダンスユニットに入るのは話が違うと思いますが」
「それはーー、今後親会社になる可能性がある上条製菓様にも、一緒に
泥水をすすってもらいたいと思ってのことです。きっと栄芳堂は立ち直りますよ」
「そうなればこちらにとっても嬉しいですが、その泥水というのは?」
「そうなった時に、我々栄芳堂の力だけで再生という事になれば、御社の立場がなくなります」
「は?」
「ですからマー君にもやってもらいたいんです!」
「OJISA-ISMという男性ダンスユニットで一緒に恥をかけと?」
「恥ではありません。でも、泥水をそそるだけの決意は必要だと思います!」
「私は、全くの素人ですよ」
「はい。でも大丈夫です」
「いや何が大丈夫なのか?」
「他のメンバーもみんなど素人です!」
「いや、そうならむしろ心配になってきました」
「ノープロブレム」
「けいこさん、あなた、今、むちゃくちゃなことを言ってますよ」
「はい。むちゃくちゃを言っています。でも宣伝にかけるお金はないんです。なら話題性で行くしかない!」
「だから泥水をすすれと? 私に恥をかけと」
「恥てはありません。きっとその奥深いカッコよさを理解してくれる方たちもいらっしゃるはずです」
「いや……しかし、そんな……」
「マー君の骨は私が拾います」
「そのプロジェクトで拾える骨が残っていれば良いですが」
「お願いします! 私はあなたと同じ視線で何か新しいものを作ってみたいんです」
「それがOJISA-ISM?」
「OJISA-ISMが宣伝するミニ小判きんつば(仮)です」
「何か他の方法だってありそうな気がしますが……」
「いえ、これしかありません! マー君は私が知っている中で一番カッコいいオジサマです! ダンスユニットにビジュ担当は必須です」
「はあ」
「もうすぐ曲も出来てきます」
「え? そうなんですか?」
「リードボーカルの姫路典昌さんが今作ってくれています」
「姫路社長が?」
私はメモ書きした言葉をつたえる。
「バックの皆さんはスタイリスティクスのように踊って欲しいとの要望です」
「スタイリスティクス?」
「またはミラクルズのように、と」
「ミラクルズ?」
「知ってますか?」
「うっすらと、懐かしのディスコナンバーですね」
「そうなんですか?」
「けいこさん、あなたは知らないんですか?」
「はい。私は出来れば最近のオーディション番組のような男性ダンスユニットを考えていたのですが、それはハナから無理だろうと姫路社長がおっしゃいまして、それで簡単なステップのナンバーにしたそうです」
「いや、簡単と言いますが、これはこれで雰囲気を出すのは大変ですよ」
「かもしれません。けれどOJISA-ISMのビジュ担当になって下さい! 壬生さんと共にツートップになって欲しいんです」
「え? まさか壬生もやるんですか?」
「はい!」
まだちゃんとした返事も貰ってないのにはっきりと答えてしまった。




