後味が悪い話
今回の嫌な話は、「後味がよくない」と思ったものです。
その話のきっかけは、私のところに不動産評価を出してとよく相談に来られる弁護士のAさんでした。
Aさんから相談を受けたものは、私のところの査定部に在籍する鑑定士が評価を出すのですが、同時に、「私に買わせてくれるなら、なんぼよ」という紙も一緒に出しています。すると、Aさんから「早急に現金化する必要があるので、貴社買取でお願いね」と言ってくれるケースが多く、ありがたや! と買わせていただくのです。
その話も、上記と同じパターンでした。
具体的な地名や駅名を出すと、場所ばれして謄本あげればわかっちゃうので、地名や駅などは書きません。会話も当時のままではないですが、お話的に問題はありません。
では、書きます。
今から2年ほど前、そのAさんから連絡が入りました。
「ぽん太さん、ちょっと急ぎで金額を出してほしいんです」
「いいですよ! いつもありがとうございます! 資料を送ってもらえますか?」
「送ります……で、ちょっと事情がありまして、先にお話をしておきます」
「……なんです?」
Aさんが、話してくれた事情はこうです。
売買金額の査定対象は、築二年の戸建てです。ペアローンを組んで購入したその戸建を、弁護士先生からの相談で金額を出すということは、予想通り離婚でございました。で、離婚するにあたり、残債の返済をしたり、財産を分けるために、持ち家を売却するというわけです。
査定の責任者に「お願い、赤い彗星のスピードで査定して」とお願いし、翌日に金額が出ました。いつものように、査定書と、当社買取であれば目線はなんぼですという紙も出しました。
翌日、Aさんから連絡が入ります。
「もうちょっと、高くならない?」
「え? ちなみにおいくら買い上がり希望でしょうか?」
「プラス一千万」
いっせんまんえん?!
私は尋ねました。いや、確認をしました。
「残債、それくらい残っているんですね?」
「……個人情報に関わるので……」
脳内で素早く計算します。
プラス一千万円は、場所はいいけど、すぐに現況売りで転売しても購入時の税金やら登記費用など考えて利益がとれないし、売却金額あげたら売れ残りがこわいな……だったら、賃貸でまわして、しばらくして売るか、利回り商品のバルクにいれて売っちゃうか…場所がいいから種地にもなるか。買っておさえておこうかな、などなど。
「いいですよ。一千万プラスします。買付は稟議の後で」
場所がいいし、駅にも五分ほどの35坪だったので、ま、入居はつくだろうしいけるだろ。
こう思っていたのです。
ところが……なんと、離婚を協議していた夫婦の男性が、その家で……自〇しました。
もちろん、当初の金額なんて出せるはずもなく……また色々と捜査機関のお仕事もありますもんで、売れるものも売れません。さらにいえば、相続が発生したことで、じゃ男性がもっていた中古戸建の持分二分の一は、誰が相続しまするの? という問題も発生します。
女性側についていたのが、Aさんでした。
私は、改めて査定額を出しましたが、それは当初の六〇%くらいです。解体更地にして売るしかないなぁというのと、事故物件ですよと伝えないといけないし……しかたないんす。
高く売りたいなら、仲介に出して最高額つくまで待つしかないでしょというところですね。なので、当然、この案件は買えないということで終わりだなと思っていたのです。
半年ほど経過したある日、受付の子から、私にメッセージが入ります。
『〇〇区〇〇にお住まいの、B様というお客様からぽん太さん宛にご来社です。お約束はないそうなのですが、ご自宅の売却で査定をしていただいた件でと仰っております』
誰だ?
「ま、社内にいるからいいですよ、応接室を予約いれてもらえます?」
『承知しました』
誰だっけ? あ……思い出した。きっと、Aさんの依頼者だ。
あんなことがあったので、住所に覚えがあったのですね。
Bさんが待つ応接室に入ると、バシっときめた女性が待っていました。
名刺を出して名乗りますと、「A先生のご紹介で、半年前に査定をしていただいたBです。〇〇区〇〇二丁目の」と名乗られました。
とにかくお悔やみ申し上げ……る前に、こう言われました。
「あの家、当時の査定で買ってもらえないんでしょうか⁉」
「いえ、あの……」
「他のところに相談しても、金額が全然ひくくて!」
「はぁ……しかしですね? あの……ですね」
「あのバカが自殺したから、金額が低くなるんですか⁉」
強烈な!
「まぁ、そうですね……」
「どうしても、無理なんでしょうか? 返済も滞っていて、競売の話が……」
「ええ……金融機関としては、抵当つけてますしね。A先生にご相談されては?」
「相談していますが、買っていただくとすると不動産屋だと思い……」
「私どもも、A先生からのご依頼を受けて査定いたしましたので、A先生を通してご相談頂きたいのがまず一点と、金額に関しては当時のご説明のとおりです」
「なんとかならないでしょうか?」
「申し訳ございませんが、お力にはなれません」
ここで、Bさんが机をバン! と両手で叩きました。
ん? と思っていると、彼女はうなるように言い始めます。
「もう本当に、最後までわたしの足をひっぱりやがって」
「ガキ相手に浮気してクビになりやがったバカが……」
「売れてから死ねよ、クズが……」
「どうしてあのバカのせいでわたしが……」
こわいよ……ビーグル犬はもうここにいたくないよ。
「B様……あの、他の約束が(嘘)ありますので、今日はここまでということで」
「ああああ!」
バン! とBさんは机をたたき、さっさと応接室を出ていきましたとさ。
その後、Aさんに一応、報告をいれました。
競売で売れても、その金額が借入の残額よりも少なくなりそうなので、大変なのだと思いますが……しがない不動産屋には何もできず。団信や生保、おりないんですかね? 内容を読んでないので私にはわかりません。
後味わるいお話です。
その後のことは、まったく知りません。
Bさんが、無事に清算できていることを祈っています。Aさんとは相変わらずお付き合いありますが、この件に関しては全く聞きませんし、向こうからも話は出さないです。
みなさん、ペアローンにはお気をつけください。
金融機関にはとってもお世話になっていますが……住宅ローンは背伸びをしないで申込することを強くお勧めします。いい新築戸建てをみて、舞い上がったままローン申込でOKでたから買った後、環境の変化、夫婦関係の変化などなどで、困っているので相談というものをよく受けますもんで。
あと、保険の細かい字をよくよく読みましょう。団信や生保への加入の時は、万が一の時に、ちゃんと払ってもらえるものにしましょう。
いや、払ってもらえるはずなんでしょうけど……払ってくれるはずなんでしょうけどね。
はずなんですけどね?
ね?
あれ?




