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退職代行

 不動産に関わる仕事をしていなくても、関係するかもしれません。


 退職代行を使って、退職した社員の話です。


 二〇二四年〇月〇日金曜日の17時50分頃。


 私は、翌週の月曜日の午前中に控えた売買契約書類の出来上がりを待っていました。


 当社が売主、得意先が買主です。


 その月は月末が月曜日の月で、なんとか月内に買いたいという買主の都合を優先したのでした。


 契約書と重説のFIXもその日の午前中には終わっていたので、製本したかったのです。


 そしてハンコを押して、月曜日の午前中にバタバタしないでおきたかったのです。


 さらに、もう18時前で、早く帰りたかったのです。


 書類、早くこい……帰りたいのだ。


 イライラが募ります。


 あおー! あおーお! と叫びたくなるほどに。


 電話します。


「Aさん、お疲れ様です。月曜日の契約書類、まだです?」

「Bに任せていまして、まだ帰社していないんですよ……けど、できているからいなくてもいいか。印刷しましょう」

「お願いします!」


 今回の売買に関して、契約の流れなどを経験してもらおうと入社半年ほどのBさんに、書類作成から相互ドラフトチェック、法務チェックをはじめとする各種申請ごとなどを担当してもらっていて、当然ながら先輩のAさんがフォローしていました。


 私はハンコ係なので、製本されたものにポンポンポーンとハンコを押すのが仕事です。


 Bさんは買主とやり取りをしていたい内容は、Aさんも共有していたので、契約書類はAさんも印刷できます。


 二人で製本し、ハンコも押しておくかとポンポンポーンです。


 印紙……詐欺かよ! たけぇんだよ! ぼったくりが! クソ!


 電子契約にさせてくれたらよかったのに……。


 仕事を終えて、帰宅します。


 Bさんは結局、営業先から直帰したのでしょう。オフィスには帰って来なかったのです。


 そして、月曜日を迎えます。


 月曜日の朝、会議に出席した後、コーヒーとバームクーヘンを買ってこっそり食べていると、総務の責任者からメッセージが入りました。


『退職代行からで、Bさんが退社します』


 ……は?


 返信します。


『理由は言ってた?』

『いえ、手続きのみですので』


 記念すべき、当社第一号退職代行利用者です!


 ……いやぁな気持ちになりますね。


 Bさんにも、「やってられねぇよ」という気持ちがあったんだろうなぁとか、「もう少しフォローしてあげておけばよかったのかなぁ」などという気持ちよりも、いやぁな気持ちが強いです。


 されてみて、初めてわかることもある。


 それからしばらく後、Aさんと雑談していた時です。


「そういえば、ぽん太さん。退職代行で辞めたBさん、覚えていますよね?」

「覚えてます」

「Bさん、サイベリアン不動産(仮名)に応募しているみたいです」

「……超得意先」

「サイベリアン不動産のC部長から、御社ではどうでした? こっそり教えて! 半年で何があったんです? て連絡きたんですよ」


 言っちまえ! 何が理由なのかわかんねぇって言っちまえ! 退職代行で辞めたって言っちまえ! という本音をゴクリと飲み込みました。


「言ったらダメだからね」

「わかってますよ。C部長には、本人にご確認いただけますでしょうか? 個人の事情をお話できません、と丁寧に答えましたよ」


 なるほど……その丁寧さと定型文で、君は答えないけど答えたのですな? Aさんも私と同じく性格悪いのぅ!


 ということで、サイベリアン不動産のC部長は「ビーグル不動産(当社のこと。仮名)のAさんの話し方からして、やめておいたほうがいいな」と察してしまう可能性がありますです。


「残念でしたよ! 頑張ってくれてたんですけどね! 辞めた事情とかは話せないんです。すみません」


 とか、


「残ってほしいってお願いをしたんですけどね! 事情は本人から聞いてください」


 とか、


「事情は話せないんですよ、すみません。御社に決まったら、ぜひ一緒にご来社くださいね」


 などであれば、


 いい人だったみたいだけど、辞めざるをえなかったんだな。悪い上司がいたのかなぁ(ドキ!)、みたいな想像を、C部長がしたでしょうから。


 ということで、退職代行で辞めた会社の超得意先に応募するのは避けたほうがいいかもしれません。


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― 新着の感想 ―
私が昔勤めていた会社(ブラック)で、同様の問合せに対して 「ボロクソ言っといてやったぜ」(by社長) 昭和な話です。
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