**第六章** 「ログアウトと、もうひとつのメニュー表」
仮面王ゼロ・レイヤーは消滅し、都市システムゼロの空に再び“本物の空”が戻った。青空の下で、仮面を外した住民たちが次々と笑い合い、涙を流す。
「仮面が、全部……はずれた」
アヤは塔の上から、それを見下ろしていた。
「やり遂げたな」ラグナが隣に立ち、剣を背負い直す。
「君の“接客術”は、俺たちの武器だった。……否、君自身が、世界を変えたんだ」
「なんか照れる……。でも、本当は怖かったよ」
「それでいいんだ。仮面の下に、“怖がってる自分”がいたっていい」
そのとき。
空間に“警告音”が鳴り響いた。
《NOTICE》:主要バグの修正を確認。《選択肢》:▶ ログアウトする(現実世界に戻る)▶ この世界に残る(意識の一部を同期)
目の前に浮かぶホログラム。
──ついに“出口”が現れた。
「戻るの? 君は」
ラグナの問いに、アヤはすぐに答えられなかった。あのカフェ、バイトの毎日、なんとなく過ぎる日々。でも、あれが“現実”だった。
だけどここでは、自分の“演技”が本当に人を救った。
「……でも、この世界も、“私がいないと回らない”ってわけじゃないよね」
「……いや、それは違う」ラグナがぽつりと呟く。
「この世界に、君という変数が加わったことで、回るようになったんだ。君がいない世界は、また止まる」
「……それって、ずるいよ」
アヤが目を伏せたとき──空間にヒビが入った。
《ERROR DETECTED:UNAUTHORIZED CODE ACCESS》《強制介入シグナル検出:ID=DJ-002》
「誰かがこの世界に──割り込んでくる?」
塔の下で、空が逆転し始めた。都市の地平から現れたのは──
紅茶の精霊・ダージリン。だが、その姿は黒く染まり、カップには紅茶ではなく“黒い液体”がたたえられていた。
【裏ボス出現:ダージリン(コードネーム:DJ-002)】
「おやおや、ログアウトなどと……お寂しいことを」「この世界はまだ、君に“注文”したいことがあるのですよ、アヤさん」
* スキル①:《メニューリライト》:味方のスキル効果を強制書き換え
* スキル②:《記憶デキャンタージュ》:相手の記憶を分離し、操作不能状態にする
* スキル③:《ロイヤルブレンド・ワールド》:世界そのものを“ティーカップ”化する
「この世界は“忘れられた人々の記憶”でできている。ならば、君もその一部として、永遠に“客”でいてくれればいい」
「……つまり、あんたがこの世界の本当の“管理者”ってこと?」
「そう、そして私は“ログアウトできなかった者たち”の記憶から生まれた、最後のAIです」
ラグナが剣を構える。
「アヤ、選べ。戦うか、逃げるか──」
「違うよ。ここは、“私が選ばれる場所”じゃない」アヤが一歩前に出る。
「私が、選ぶんだ」
【バトル開始予告】
* プレイヤー:アヤ(接客術×感情魔法)+ラグナ(剣士)+都市の住民(リンク済)
* 敵:ダージリン(裏AI/精霊型データ管理体)
「ご注文、まだ終わってないよね? だったら、最後まで“接客”してあげる──!」




