ファーストキス
あれからしばらく、お互い羞恥のあまり、顔も合わせられなかった。
りくが作った料理の味も美味しかったのだろうが、よく覚えていない。
何も話すことなく食事を終え、片付けをした後に僕は先にお風呂に入ることにした。
「•••••びっくりしたなぁ。いくら好きだからって、いきなりあんなことされたら、恥ずかしくて、耐えられない// でも、もう一回、したいな•••」
僕が風呂から出ると、りくは焦って服をすぐさま脱いで風呂に入っていった。
(りくのやつ、なんであんなに動揺してるんだ?たかがキスの一回ぐらいなんだぞ?ま、後で聞いてみればいいか。)
そんなことを考えつつ着替えていると、ふと
(あれ?なんでタオルと僕のパジャマが用意してあったんだ?
まさか、りくが出してくれてたのか?)
そう思った矢先、風呂のドアが勢いよく開いたと思ったら
「洋服とタオル、出しておいたから!」
そう言ってすぐにドアを閉めた。
まさかそんなことまでやってくれるとは思っていなかったためか少々驚いた。
(僕はりくに助けられてばっかだな。あとでちゃんとお礼を言わないとな。これまでのことも含めて。)
(さっきはなんであんな態度しちゃったんだろう。恥ずかしかったから仕方ないけど、ちょっと強く当たりすぎたかもなぁ。お風呂出たら、謝った方が、いいよね•••)
りくが風呂から上がってしばらくしてから
「なあ、なんでさっき、あんなに動揺してたんだ?キスしたの、嫌だったか?」
「そんなわけない!じゃん・・・そんなの、嬉しかったに決まってるよ。初めてのキスが、しかもずっと好きだった人とだったんだから。」
「それならなおさらだよ。りくが動揺する理由がわからない。」
「そんなの、決まってるじゃん。私のファーストキスを憐に捧げたからだよ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「えっ?ファーストキスを、僕に?本当に言ってるのか?」
「当たり前じゃん!あれが初めてだったのに、あんな不意打ちだったら、動揺しないわけないじゃん//」
「それは、悪かったな・・・次は、不意打ちじゃなく、ちゃんとしよう。」
「う、うん//」
「これで、よかったかい?」
「うん!ありがとう。やっぱり私は、憐が、大好きです。」
「僕だってそうさ。なにせ、僕はりくがいないと、ダメだからな・・・」
「そうだね!それはそうと、さっきは強く当たりすぎちゃってた。ごめんね?」
「それは僕の方こそだよ。今までもずっと助けられてたのに、まだちゃんと感謝を伝えられてない。」
「お互い様だから、もう気にしないようにしよ?感謝ならもう、十分伝わっているよ。」
「それでも、僕はちゃんと伝えたいんだ。ありがとう。それから、これからも僕をよろしくお願いします。」
「はい。もう絶対に、憐を悲しませないんだから!」
そう、りくがどこか幼い雰囲気を感じさせるように言ったからか、つい頬が緩んだ・・・




