キミの思い
しばらくしてから、りくはキッチンで料理をやりだした。
僕はというと、「どうせ家事はほとんどできないでしょ?私が全部やるから待ってていいよ。」
そう言われたので、おとなしくこたつに入ってぼーっとテレビを見ていた。
「そういえば、今、何作ってるの?僕的には、こういう時はカレーじゃないかと思うんだよね。」
「ざーんねん、肉じゃがでした~。」
(おふくろの味ってやつで、嘴加護くんの胃袋と一緒にハートも掴んじゃおっと!)
「・・・・・」
「がっかりした?って、あれ?もしかして肉じゃが嫌だった?」
「いや、違うんだ・・・少し嫌な記憶が蘇っただけなんだ。」
「昔、俺の母親だった人がよく作った料理だったんだ。幼い頃は家族団欒で、すごい楽しい食事だったんだよな・・・それも長くは続かなかった。虐待とまでは行かなかったが、父が何度か怒りで皿をひっくり返して、僕はそれを目の前で見ていたし、僕に皿ごと投げることもあったんだ。その後も・・・」
「もう、何も言わなくていい。そんなことはもう忘れてよ。今は私がいるでしょ?嘴加護くん、いや、
憐くん。忘れたくても忘れられないのは知ってる。だからこれから私との思い出で塗り替えればいいんだよ。
この肉じゃがだって、作ったのは私なんだよ?憐くんのお母さんじゃない。ね?そうでしょ?」
そういって、りくは僕を小動物を抱くように包み込んだ。
僕は泣きながら、「うん、うん、ありがとう。あの時に何度も死のうと思ったんだ・・・でも、死ななくて、よかったんだ。僕は、生きていていいんだ。」
「今はいくらでも泣いていいよ。私が全部受け止めてあげる。」
それからしばらくして、僕たちは食卓をともにした。
「さっきは、悪かったね。おかげで気持ちが楽になった。これからも、あんなことがあるかもしれないけど、その時もお願いしてもいい、かな?」
「いいよ。そんなの、いいに決まってるよ・・・」
「それより、この肉じゃがどう?口に合うといいんだけど・・・」
「最高としか言いようがない。比べ物にならないほどおいしい!!毎日でも食べたいくらいだよ。」
「そ、そんなこと、あんまり面と向かって言わないでよ・・・」
「それより、毎日食べたいって、本気で言ってるの?冗談なら一週間に一回しか来てあげないからね!」
「そんなの本気に決まってるじゃん。冗談でこんなこと言えない。鷺宮さんさえよければ、一緒に暮らしたいよ。」
「そ、そーなんだー。ふーん。もし憐くんがどうしてもって言うなら、考えなくもないよ。」
「一生のお願いです。僕は鷺宮さんさえ居てくれるなら、ほかには何もいらない。」
「えー、もうしょうがないな~。明日準備してお昼ぐらいに行くよ。まあ、初めからそれを提案しようと思って今日は来たんだけどね。」
「じゃあ、初めに言ってくれればよかったのに。いじわるだな。」
「だって、憐くんの胃袋もハートもまだつかめてなっかたんだもん。どうせなら、完全に私のことしか考えられないようにしてからがよかったの!」
「・・・・・」
「なんで黙るのよ!何か言ってよ。女に告白させといて、憐くんは何にもしないの?そんなの、絶対に許されないんだからね//」
「・・・・・」
「だからなんで黙って・・・」
「・・・」
「・・・・・」
「これで、良かった?いや、違う。僕がしたくてしたんだ。僕もキミが、りくが、好きだ。いや、愛してる、世界で誰よりも・・・」
「憐・・・ずっと、そう言ってくれるの、待ってたよ・・・」




