キミとの出会い
それから何か月かが過ぎたある日。
それは突然のことだった。
キミと出会ったのは。
久しぶりに外に出てみれば何かが変わるかもしれないと思い、家のドアを開けた。
その拍子にドアの前に立っていたキミとぶつかりそうになった。
その日は冬真っ只中だったせいか、キミの耳が茜色に染まっているのを見て、それなりに長い時間待っていたことが容易に想像できた。
幸い家の中の死体(ごみ)は片付けていたため、仕方なく家に上げることにした。
それでも家の中にはまだ少し異臭は残っていたのだが、キミはなにもなかったかのようにスルーして、のんびりくつろいでいた。
適当に温かいお茶とお菓子を出して、時間をつぶした。
少し時間が経過して、キミは口を開いた。
「なんで学校来なくなったの?ただの仮病ってわけでもないんでしょ?私が全部聞いてあげるからさ。
聞かせて?」
その包み込むようなやさしい口調に、自然と僕の目には涙が溢れていた。
「あれ?なんでだろう。涙が、止まらない。人前で泣いたのなんていつぶりだろうな。おかしいなぁ。」
涙をぬぐった後で、これまでの両親からの虐待の件やたくさんの人を殺してきたことを話した。
「僕の親は、二人とも高学歴だったんだ。それだからか、幼い頃から英才教育を受けてきた。
幼いときは、何も考えずに親の言うことに従っているだけだった。
でも、小学生になってからは全国の模試を受けさせられて、その結果次第では、長時間勉強をやらされたり、時々怒声を浴びせられたり手をあげられたりもした。
それから、少しずつ勉強に嫌気がさし始めた。
その虐待は、中学生になってからはもっと酷くなっていった。
時には、骨折をしたり、徹夜で勉強をやらされたりもした。
それでも、僕の将来のために教育としてやっていると思うことで、頑張って耐えることができた。
でも、高校生になってしばらくしてから、今までの暴力などは仕事のストレス発散のためにやっていたのだと知り、絶望した。
それから僕は両親にその報いを受けさせるために、殺すことを計画して、実行した。
その時にはもう精神が死んでいたから、人を殺すことに何の抵抗もなくなっていたんだ。
そして一人、また一人と罪のない人をたくさん殺してしまったんだ・・・」
キミは残っていたお茶を飲み干して、
「ふぅ」
そう一息ついてから、
「今までずっと耐えて、耐えて、耐え続けていたきたんだね。辛かったよね。
その心の痛みを簡単にわかるなんて言わない。
過去のことも慰めることはできても、消すことはできない。
けど、隣でこれからの未来をこれまで犯してきた罪をともに背負って生きていくことはできる。
もしそれを望んでくれるなら、私はあなたに、嘴加護(はしかご)くんに、すべてを尽くすからさ。」
そう励ますように、だけど少し優しい声色で言った。
「だけど僕は、取り返しのつかないことをたくさんしてしまったんだ!
今更また人生をやり直してもいいわけないんだ!もう、疲れたんだよ。
もういっそのこと死んで、何もかもから解放されたいんだ!それが自分勝手なことだってわかってる。
だけど、それしか、それをすることでしか罪を償うことはできないんだよ‼」
その拍子に僕は柔らかく、人のぬくもりを感じる何かに包まれた気がした。
途端に、今まで感じたことのないような感覚に襲われた。
「だから私が一緒に背負って生きていくから!地獄の果てまでも嘴加護くんについていくから!
だから、もうそんなに自分を責めなくていいんだよ。」
再び目からは大粒の涙が溢れてきた。
キミは泣き崩れる僕をさっきよりしっかりと抱きしめて、子供に子守歌を歌うように
「もう、大丈夫だよ。私がいるよ。」
そう繰り返し耳元でささやき続けてくれていた・・・




