俺は……ほりょ
「警察です。録音の証拠もありますし、被害者の刑事は法廷で証言をするはずです。風間修司巡査の殺害の容疑、及び山口淳平巡査長への殺害未遂の現行犯で逮捕します。」
藤枝だった。
こいつは死んだ恋人のために頑張っていたのか。
では隣の男はと見ると、玄人の声が頭の中で響いた。
「駄目な奴です。」
え?玄人?
俺は奴を見通す。玄人がやったように。
そして、理解した。
こいつこそ黒幕であるのだと。
「藤枝!逃げろ!」
ガツン!
俺の叫びと同時に藤枝が男に後頭部を殴られ、小柄な彼女は前に飛ぶように倒れこんだ。
「藤枝!」
またもや勢力図の反転となったが、気づいた事で俺には一切の迷いも消えた。
俺の力は消えていない。
余計なものが剥ぎ取られ、なまくらが名刀に生まれ変わった感もある。
現実の映像はそのままだが、見通そうと思えば見通せるという、便利な剣に変わったのだ。
あなたのお陰ですと教えてやれば、あの親父はかなり悔しがるだろうな。
玄人を諦めてたまるか。
「これでこいつも殺して、全部をひっかぶせたら、しばらくは大人しくしないとなぁ。」
黒幕の男はいやらしく笑い、注射器を持った男はその男と目線をかわして笑い出した。
「兄さんから見せてもらった写真には大笑いだったぜ。この女、スゴイブサイクじゃん。改造女過ぎて吃驚。」
「それでも楽しんだんだろ?いいから、さっさとそいつを殺せ。」
さぁ、来い。
殺せなくても再起不能にしてやるさ。
俺は優秀な潜入捜査官だったのだからな。
俺が殺気を纏ったその時、間抜けな犬の声が倉庫に響いた。
わん。
「え?ダイゴ?」
俺以外の悪役の皆さんも、突然現れた犬に動きが止まった。
皆が犬を注目したその時、美少女戦隊が登場したのだ。
二人だけだが。
「オラぁ、ふざけたことしてんじゃねぇよ!」
女の子でもこんなおっかない声を出せるんだぁ、と俺は水野の声に感激した。
「臭い飯食うか、お前等?」
大声ではないが背筋がきゅっとする喋り方をしたのは佐藤だ。
俺は俺を助けに来てくれた彼女達に感謝どころか、様々な彼女達の雄姿を思い出してげっそりとして目を瞑った。
目を瞑ったのは数秒だったが、目を開けた時には二人は簡単に男四人をのしていた。
恐らく水野がサラリーマン雑魚三人を特攻服を着ていた頃を彷彿とさせる戦い方で潰している間に、佐藤が油が乗った悪徳刑事を料理したのだろう。
佐藤の動きは舞踏のようにとても綺麗であるが、地獄の鬼のように有段者でも確実に伸せるのだ。
玄人が見ていたら惚れ直すだろう。
彼は佐藤に惹かれていたことがある。
「わん!」
俺は嬉しそうに短いしっぽをぶんぶんと振っている大型犬を見下した。
すると、百目鬼にスケベ犬バター犬と罵られる犬は、俺を小馬鹿にした目で見上げて来たのである。
この犬めと思った瞬間、あぁ畜生、奴の後ろにワクワクして水野達を眺めていた玄人のイメージが重なって見えたではないか。
俺は心の底から自分の不甲斐なさにがっくりとし、少しでも現状打開をするべく努力する事にした。
「ありがとう。僕は君達に一生絶対逆らわないから解放してくれる?」
俺をチラッと見た佐藤は、無情にもスマートフォンを掲げ、現場写真、と俺の惨めな格好を写した。
なんて酷い女だ。
「応援呼んだ?麻薬所持に警察官への暴行と殺人未遂?凄いお手柄じゃん。」
良い運動した的にストレッチを始めた女が相棒に声を掛ける。
みっちゃん、暇なら俺を助けてあげようよ。
「マッキーが言っていたけど、刑事が出世するなら楊の特対課って本当かもね。手柄ザクザク。」
サクサクと犯罪現場の写真を撮って、犯罪現場の保存と犯罪者の拘束にせいを出している女が答える。
さっちゃん、君が有能なのはわかったけど、まず、俺を助けて。
被害者保護が第一だって、警察学校で教わってきたよね?
「すいません。お願いですから、僕を戒めから解いてください。お願い。」
十年近く刑事をやっている元公安で巡査長の俺は、数ヶ月前に刑事昇格したばかりの巡査達に、涙目で懇願する事しかできなかった。




